とある落車のお話


本日は物語調で綴っていきます。
文才がなくて申し訳ないのですが、ひどい落車をするとこうなります。というのが
わかりやすく伝えるためにちょっといつもとは違う感じで書いてみました。
皆様くれぐれも落車にはお気をつけ下さい。

リアルな描写が一部含まれます。痛いのが苦手な方はご注意下さい。
落車のお話です。
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シーズン始めのとある日のライド、いつものサイクリングロード、いつもの海岸通りの道、冬の重いまとわりつくような空気の重さを感じることもない、変わることといえば日差しがいつもよりも強かったことぐらいだった。

 

そう、いつもと何も変わらないはずだった。

 

サイクリングロードを抜け海岸線を走る、気温も上がり心地が良い。

歩行者のいる海岸線はいつもどおり安全運転を心がける。

そして湾岸線の端、折り返し地点からは車道を走る。歩行者目線の安全運転から車目線の走りに切り替える。

走行車線は右側の白線上、白線からは1mm足りともタイヤを落とさない。

そんな走りができるようになったのも冬場の3本ローラーの走りこみのおかけだ。

 

土曜日ということもあって車道上でもロードバイクと何台も遭遇する。

後方確認をしてすみやかにパスする。そんなことを繰り返しながら折り返し地点に到着する。

 

もう何度この道を走っただろう。走り慣れたいつもの道、いわばホームコースだ。

定期的に続く信号は逸る気持ちをいらだたせる要因でもあるが、そこはスプリントの練習と気持ちをおさえる。

 

信号は代わり、小刻みにシフトアップしていく

30km/h、、、37km/h、、、40km/h、、、

 

いつもと変わらない、何も変わらないライド、、、のはずだった。

 



 



 




 

何かがおかしい、、、

 

 

「、、、か?、、、ですか?大丈夫ですか?大丈夫ですか?」

 

「今救急車着ますからね!」

・・・はい。」

 

意識はある、、、はず。

 

問いかけにも答えられる。

いや「答えている」のではない、「答えられている」だけだ。
 

 

なのに何かがおかしい、

 

 

黒い、、、目の前が暗い、、、

 

そのとき耳についたのは救急車のけたたましいサイレンの音だ。

 

「だいじょ、、、 、、」

 

首を固定される冷たい革張りのような無機質な器具の感触が妙に気になる

 

「血がすごいなぁ。」

「止血しながら運んじゃいましょう」

 

そんな会話がかすかに聞こえる。

 

「意識はありますか?」

「お名前は言えますか?」

「ご家族は?」

 

すごい質問攻めだ。

答えたか答えていないかは分からない。、

 

けたたましい音がやんだと思ったら病院の救急患者用の入口からストレッチャーに載せられて運ばれる。

「病院か、、、、」

 

そのままCT室へと運ばれる。

 

CTといえばあまりいい印象はない。

狭いところに固定されて入れられて、「ガッチャン、ガッチャン」やかましい音がなるからだ。

 

なにも気にならない、むしろ眠い、

ようやくここまできて意識が戻り始めたようだ、

 

レーサーパンツの締め付けが気になる、、、

メガネが無いのでぼやけた視界で、処置室のベットで横になっている。

 

痛みはそこまでないようだ、

むしろ目が開けにくい、、、なんだこれは、、、

 

「ご家族の方どうそ、」

という声が聞こえて妻と子供が入ってきた、、、

 

「心配したよ、、、」と妻が言った

まだ小さかった子どもは状況が理解できすに固まっていた。

 

何で固まっているのかが男にはわからなかった。

「大丈夫だよ。」少しでも安心させるための精一杯の作り笑いをする。

 

これから処置が始まる。

 

痛みはあまりない、、、はずはなかった。

が、この後一気に意識がはっきりとする。

 

ガーゼに消毒薬を付けたものをゴリゴリ押し付けてくる。

「ちょっと我慢して下さいねー。」

できるわけがない。

歯を食い縛るが、痛いものは痛い。ひたすら痛い。

膝、尻、肩、そして顔だ。

 

一番出血量が多かったのも顔、

顔中血まみれになるほどの擦過傷、更に打ち付けた時についたであろう裂傷、いわゆる衝撃で裂けた傷だ。そこに入りこんだジャリをガーゼで掻き出すのだ。

 

さらに割れたメガネの破片が裂傷の傷口に入り込んでいるとの話だ。

破片を傷口を開きながら1個ずつ取り出していく。

 

そしてジャリの掻き出しと破片を取り終わると次は縫合だ、

「うーん、麻酔しようか、、、」

「(最初から使ってくれよ、、、)」

 

顔に麻酔の注射が入る、

これが痛い、先ほどのガーゼ処置なんか気にならないほど痛い。

我慢できずに

「ちょっ、ちょっと待って下さい、、、」

「ふーっ、ふーっ、ふーっ、」

「お願いします、」

「んっっっっ・・・」

 

顔に注射を打つという行為はとてつもなく辛かった。

 

麻酔さえ聞いてしまえばこっちのもんだ。

しかし局所麻酔を経験したことがあればお分かりかとは思うが麻酔が効いた後、痛みはなくなる。

麻酔は効いているはずなのに痛みの記憶には麻酔は効かないようだ。

今している処置は痛くないのに、記憶の痛みがズキズキ残る、、、

それでも「記憶の中の痛み」しか感じなくなれば後は、糸を引かれた時の引きつる感じだけだ。

 

何針塗ったのであろうか、結び目がどんどん増えていくのが気がかりだ。

縫合が終わり軟膏をヘラで塗りたくりガーゼを当てて処置を終えた。

今が何時なのかもわからない、、、

 

この辺りから記憶が鮮明になってくる。

あれだけ痛い処置をしたのだ、脳震盪気味でもやがかった頭のなかも、まるですっかり晴れているようだ。

 

そして次はなぜか歯科に連れて行かれた。

鏡を渡される、、、、

 

前歯4本、半分ぐらいの長さになっていた、

状態は【露髄】いわゆる歯の内側に存在する神経が露出している状態だ。

このままでは細菌感染も考えられ、痛みも激しくなる可能性があるので早速処置をする。

 

口を開けようにも顔の半分以上は麻痺している、

そして目は開かないほど腫れている、どうやって開けたらいいのか、、、

 

そんなことを考えているうちに処置は終わっていた、
歯科の歯科衛生士さんが妙に明るかったのを覚えている。
しかしこんなに血まみれの患者は普通歯科にあんまりこないだろう、、、
ともあれ歯科はいつの間にか終わっていた。 

 

車いすで別の診察室に通される。

CTの結果が出ていたのだ。

結果は異常なし。

ほっと胸をなでおろす。

無事に帰宅許可が降りたというわけだ。

 

 

この時、実は警察の方が自転車を病院まで運んできてくれていたのだ。

「高そうな自転車だから放置はできないと思って、、、」なんと素晴らしい対応。

現場に駆けつけてくれた警察官の咄嗟の配慮には頭が上がらない。

 
車椅子から降りて駐車場へ向かう
 

自転車の傷を確認しながらクイックを外して自転車をばらし車に積み込む。

「ホイールはダメだ、リアディレイラーは傷、ハンガーはおそらくダメだろう、、、」

そんなことを呟いていた。

 

そしてこの時男は改めて鏡を見た

しかし顔はガーゼだらけで傷の程度はわからない。

歯がなくなっていることを除いて、だ。

 

この辺りで【落車】をしたことを理解し始める。

しかし記憶が全くないのだ。

まるで記憶を誰かにごっそりと持って行かれたように。

一時的な記憶喪失、このことをいうのかもしれない。

状況証拠の積み重ねで今の自分の置かれている状況を理解しようとする。

 

なんでも警察の話で通りがかった車のドライバーの方が自転車とともに倒れている男を見つけて通報してくれたというのだ。

自転車を確認しても車に当てられたような痕跡はなかった、ということだ。

 

単独事故ということで処理が進む。

 

納得できていなかった。

あんなに通い慣れて、何度も何度も、路面のシミまで覚えるほどに通った道。

単独事故をする可能性があるのだろうか、、、

なぜだ?

なぜだ、

なぜだ、

 

はっきりとし始めた意識の中で頭のなかをぐるぐる回る。

ひょっとしたらひき逃げ、、、

目撃者はいなかった、、、

 

そんなことを考えていても男の頭の中の不快感は消えることがなかった。

 

家につくころには完全に意識ははっきりしてきていた。

冗談を言えるほどになっていた。

 

しかし男の口からは

「何が合ったんだ、、、」

と何度となくおなじ質問がこぼれていた。

 

血まみれで歯も4本折れている、

その日の食事は離乳食を子供と二人でわけあった。

 

そして一言二言会話をした後、できる限りの笑顔で床に伏せた。

 

「心配かけてゴメン、」










「、、、生きてた」 


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日終了

 

2日目はコチラから

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