良くも悪くも徹底的にダイレクトマウントブレーキ!

ロードバイクのブレーキシステム、最近ではディスクブレーキが有名になってきました。
しかしそれとは別に意外と搭載モデルが増えてきたのがダイレクトマウントブレーキです。
通常のキャリパーブレーキと同じ様にリムを挟んで止める、いわゆるリムブレーキ方式です。
リムブレーキ方式の利点とすると、、、ホイールがそのまま使えるということです。
フレームはもちろん専用設計となりますがホイールは流用可能、また整備は通常のキャリパーとそこまでいいきく変わらない(良し悪しはありますが、、、(笑))ディスクブレーキよりも間口が広くなっているような印象です。

ダイレクトマウントブレーキ従来のキャリパーブレーキのように1本でフレームに止めるブレーキではなくて、2本でフレームへ留めるある意味Vブレーキのような構造のブレーキです。

デュアルピボットキャリパーブレーキと言う名称どおりに、2つの回転軸を持つブレーキ、つまり左右に軸を持つブレーキということです。
これが通常のブレーキだと、固定ボルトとは全く関係のないところに”2軸”がありますが、ダイレクトマウントだと回転軸の部分を直接台座(フレーム)に固定する方式です。

ダイレクトに、、、ダイレクトマウント、、、なんでしょうか??
前置きはこの辺にしておいて本題へ行きましょう。



▶ダイレクトマウントブレーキの種類

ダイレクトマウントブレーキには3種類がラインナップとしてあります。
これを現行のULTEGRA R8000シリーズを例に見てみましょう。

①フロント用ダイレクトマウントブレーキ
IBRR8010F82
通常のフロントフォーク取付用のダイレクトマウントブレーキです。
型番はと言うと、BR-R8010-Fとなります。

②リア用ダイレクトマウントブレーキ
IBRR8010RS82
型番で言うとBR-R8010-RS、RSはリアシートステーかと。
通常のブレーキのようにシートステーに取り付けるタイプとなります。
こちらはフロント用と何ら変哲がないように思えますが全然が言うものです。
シューやスプリングの強さなんかが違います。

③リア用ダイレクトマウントブレーキ
IBRR8010R82
ダイレクトマウントということこの方式が有名ドコロかと思います。
型番はBR-R8010‐Rとなります。
よくも悪くも取り付けポイントはBB後方の車体裏側となります。。。

これらすべてダイレクトマウントブレーキです。
フロントは1種類ですが、リアはフレームに合わせて2種類のラインナップがあります。
シートステーに取り付けるかBB後方に取り付けるかはフレーム次第です。。



▶ダイレクトマウントブレーキの構造

まず構造を考えるとわかりやすいです。
新品のダイレクトマウントは治具のようなものがついており治具ごと取付台座に仮固定後に治具を抜き取り本締めという取り付け方法です。
というのもダイレクトマウントブレーキは左右が独立してる構造になっているので、この治具がないとばらばらになってしまいます。左右をつなげているのは本体裏のバネです。

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※取り付けボルトにある、金属の棒のようなものと、穴の空いた樹脂製の部分が取り付け治具です。

やってみるとわかるのですが、意外とこの治具がついていても取り付けづらいことが多々あります。もう少し開いていれば、、、的な(笑)

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また向かって左側のボルト、、、「締めれないじゃんっ!?」と(笑)
こんなことはよくあることです。
ともあれこの治具がないと見事に崩れ落ちます。。。

ということで2点軸を抑えるまさにデュアルピボットのダイレクトマウント方式のブレーキです。
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この構造はすごいですネ。

この辺はまたの機会に詳細を記事にしようと思います。



▶ダイレクトマウントブレーキのメリット・デメリット

今回のメインです。
ダイレクトマウントブレーキにはもちろんメリット・デメリットがあります。

①ブレーキ剛性に関して
これは非常に難しいところなんですが、2軸で固定することにより普通に考えればブレーキの剛性は上がるはずです。
だがしかしです。。。
そう簡単には行かないんですネ。(;´д`)トホホ…

第1に構造を考えます。
image4517

ブレーキを掛けたときの動きです。
ケーブルを引く力によって強力にシューがリムに押し付けられます。

これが通常のブレーキとの違いはと言うと、、、
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単純に考えて2本で止めるダイレクトマウントは圧倒的に有利なように思えますが、一概にそうとは言い切れないところもあります。
というのが取り付け台座の剛性です。

本体の安定感という意味では1本よりも2本で止まっていたほうが遥かに安定感は生まれますが、それもすべては土台次第です。

土台が弱ければ2本で止めているダイレクトマウントは圧倒的に不利です。
というのも単純にブレーキの力の入力の”副作用”を考えてみると、ピボット部で止め、さらに左右が別体式のようなこの構造ならではの”土台に負担がかかる”ということがあります。
シューを強烈な力でリムへ押し付けると弱いところからシナリや歪みが発生します。

1本止めの通常のキャリパーブレーキは強い力がかかったとしてもブレーキキャリパー本体のシナリや、ヒズミはでますが、構造的に左右が完全に結合されている通常のキャリパーブレーキは取り付け台座への影響が出にくいということです。

しかしダイレクトマウントの場合はどうかというと、支点になるべくピボット部へはかなり強い力がかかることになります。具体的に言うとブレーキを掛けると”作用点”のシューの部分は内側方向に力がかかり、取付部である”支点”ピボット部には外側に力がかかることになります。
つまり台座(シートステー)が広がってしまうということです。
この力のかかり方というのが左右が独立しているダイレクトマウント構造ならではの力のかかり方です。

これによりRSタイプ(シートステー)取り付けタイプのダイレクトマウントブレーキの多くは剛性感というかかっちり感イマイチなものが多いです。(当然フレーム等にもよりますが。。)
というのはシートステーはブレーキの剛性にまさるほどのブレーキ動作に対しての剛性がない場合が多いということです。

ダイレクトマウントブレーキが出始めの頃はフロントフォークの剛性が低いままにダイレクトマウントブレーキを採用したモデルもあったとか、、、
構造的に考えれば2軸止めのダイレクトマウントの実際の効きは良くなるはずなんですが、何かがおかしいと、、、それが台座の剛性だったということなのかもしれません。

構造的にブレーキの剛性が構造的に台座の剛性を上回ってしまうことでダイレクトマウントブレーキの本来の剛性感で本来の効きを引き出すことができないことにもなり得るということです。
つまりダイレクトマウント方式のブレーキを使うためにはやはりダイレクトマウントブレーキに適しただけの剛性をフロントフォークなり、RSであればチェーンステーには必要、、、という単純なお話ではありません。

少々お話はそれますが、ヘッド周りの剛性もそうです。
フロントフォークを強くしてダイレクトマウントブレーキの本来の性能をフルに発揮ができるようになると今度はヘッド周りの剛性が足りなくなります。
超高速域からのブレーキング時にはヘッド周りの剛性がものすごく重要になるのは有名なお話ですが、キャリパーブレーキよりも強烈なストッピングパワーを扱えるようなヘッド周りの剛性が必要になります。
ブレーキが良くてもヘッド周りがだめならば曲がりませんし、危険な乗り物になってしまいます。
そんなこんなで1つが変わってくると全ての調整が必要になってくることがあります。

有名所で言うとディスクブレーキもそうですネ。
フォークの片側に強烈にストッピングパワーがかかるものをくっつけるとフォークの剛性だけではなく左右差、バランスなんかも考えなければいけませんし、当然それにともないヘッド周りの剛性のバランスも考え直さないといけません。
単純に固く作ればストッピングパワーには負けなく作るのは簡単なことだと思いますが、それだけではありませんネ。硬けりゃいいってわけではないということです。
この辺のバランスというかそういったものは非常に難しいところだと思います。

お話をもとに戻しましょう。

ダイレクトマウントブレーキには台座の剛性も必要ということを考えると、圧倒的に有利なのがBB後方、チェーンステー裏側のダイレクトマウントデス。
これはもうリアシートステーに比べて圧倒的に高剛性です。
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シートステーに比べて台座部分の剛性の高さは一目瞭然です。
おそらくフレームの中で一番硬い部分であると考えられます。(何をもって硬いというのかとか深く考えればいろいろありますが、パっと、、、デス。)

これはものすごく構造的には剛性が出しやすいです。

比べてシートステーは乗り心地に関わりますし、空力的に考えてもBB周りの様にガッツリと太くすることはあまりありません。
がっちがちに作りづらいということです。
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となるどうなるかと言うと、、、台座の剛性が完全に負けます。

上の画像はG7 Proですが、有名所で言うとSKさんなんかもそうですネ。

具体的にどうなるのかと言うと、、、タッチにかっちり感がなく”グニュッグニュ”になります。
まるでケーブルがゴムのようなものを使っているような感触になります。

握り込んでいってカチッと行かないんですネ。
ブレーキを握り込んでいきパワーを掛けると、シートステーが広がることでカチッと感が出なくグニュグニュします。

どうにもならないのかと言うとそんなことはありません。
シートステーの広がりを防止すればいいだけなので、こんなパーツを使います。
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ブレーキのブースターのようなです。
Vブレーキなんかでは馬蹄のような形のものが有名ですが、ダイレクトマウントではこんなものを使うようです。
これをかませて上げることでブレーキング時にシートステー(フレーム)が広がることに対しての抵抗となりかっちり感が出ます。。

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少々見づらいですが、こうなります。

こんな薄っぺらい鉄板一枚で全然変わります。
もうこれはRSタイプのダイレクトマウントには標準装備なってもいいぐらいの効果があります。(それもフレーム次第ですネ。)
RSタイプでリアのタッチが悪い方はぜひとも試して見てください。かっちり感はダンチデス。
ワタクシが触った感じではSKとかかなり良くなりそうですヨ。

逆にやわらかタッチが好きであればあえて取り付けないというのも手かと思います。
完全に好みの問題ですネ。

ちなみにG7 PROはフレームに標準装備です。素晴らしいです。


②切ってもきれいない整備性


整備性はなんと言ってもかなりのネックです。

剛性を確保しやすいBB後方のダイレクトマウントブレーキは、整備性が悪いなんて言うのはよく聞くお話ですが、実際に悪いのかと言うと、、、悪いです(; ̄▽ ̄)ハハハ...
では具体的にどんな問題があるかというところから。

・クイックレリーズはついてないタイプ”R”

タイヤを外すときにペチッと開けてタイヤを外すアレですが、”R”のタイプはついていないです。
となるとタイヤを外せなくなってしまいますので別途でシマノからアジャスターの様にかませるものがあります。(SM-CB90)こちらをハンドル周りに取り付ける必要があるのですが、こいつがまた結構厄介です。
ただでさえ最近のフレームは空力的な問題なんかで鬼畜少々厳しいルーティングなものが多いのでなかなかいい位置が見つかりにくいわけです。
最近はFD本体にもついにアジャスターがつきシンプル化が進むなか、余計なものがつくのはちょっと。。。。

またではブレーキを広めに調整しておけば、、、ということなんですが、RSタイプやノーマルタイプよりも調整幅が狭めです。SM-CB90は必須かと思います。


・ガサつきやすいのは?
BB後方は右側はチェーンやチェーンリングなんかもありますので整備は、、、しにくいです。
整備がしにくいだけならまだしも、BB付近の最大の難点はというと、、、汚れです。
あっちゅう間にばっちくなります。
可動部がある構造のものに汚れが付けば、、、ご察しのとおり動きが悪くなりやすいです。

BB後方まで持ってくるのでケーブルルーティングもうまくやらないとガサつきがちで、もちろんフレームや設計にもよりますがどうしても通常の後方のものに勝つのはなかなか難しいです。

時々ものすごいものを触ることがありますヨ(; ̄▽ ̄)ハハハ...
ブレーキ離しても戻らない、これブレーキかよみたいな、、、っていうぐらい、、、


③空力的なお話

ダイレクトマウントブレーキの利点では効きだけではなくて空力的なお話もあります。
だがしかしです。。。
リヤブレーキをチェーンステー側に装備しなかった理由は、プロチームのメカニックからの要望によるメンテナンス性の向上もありますが、空気抵抗の面でもアドバンテージがあります。例えばチェーンステー下にリヤブレーキを装備したトレックのマドンシリーズは、一見すると空気抵抗が小さいように思えますが、実際に風洞施設で計測すると4.7W分のロスがあるのです。ちなみにノーマルタイプ(シートステーに装備)のキャリパーは2.7W分です。バイクを前から見ると、エアロードCF SLXのリヤブレーキは存在を確認することができません。しかしながらマドンはブレーキアーチが見えます。
キャニオンの開発者、選手にインタビュー。エアロードCF SLXとは vol.2https://www.cyclesports.jp/articles/detail/29186より

ちょっと古い情報ではありますが、こんな意見もあります。

こればかりはワタクシ個人では風洞実験などもできるわけもありませんので確かなことは不明ですが、それでもBB下がぶっちぎりに有利ということに待った!がかかったということかもしれません。



▶各社のダイレクトマウント事情

各社やはりエアロ系のロードバイクではダイレクトマウントを採用しているモデルが多いです。
2018年の各社の動向を見てみましょう。
メーカー名 モデル フロント リアR リアRS
BH G7 PRO  
LAPIERRE エアコード  
Bianchi XR4  
TREK MADONE  
CANYON CF SLX 9.0  
MERIDA  React  
BMC TMR01  
COLNAGO CONCEPT  
DE ROSA SK Pininfarnina  
FUJI TRANSONIC  
GIANT PROPEL  
NEILPRIDE NAZARE SL  
※三角は専用ブレーキ

各社RSタイプ(シートステー)が多くなっているように思えます。
整備性を考えればプロチームのメカニックから多少物言い(笑)が出たのかもしれません。

とは言っても上記の表にない超一流メーカーありますネ。
どことはいいませんがR社とかP社とか(・・・誰でもわかりますネ。(笑))
エアロフレームでありながらもノーマルタイプのキャリパーブレーキを採用しています。
一概にダイレクトマウントが絶対!ということではないことの証明のようなイメージもあります。
が、、、ディスクを売るための~~~の可能性も、、、(笑)


▶まとめ

実際のところ、じゃあどれがいいの?っていうことですが、どれも一長一短でありメリット・デメリットは少なからずあります。
まったくもっても個人的な意見ではありますが、
フロントはもうダイレクトマウントブレーキに対する十分な剛性やバランスも素晴らしいレベルにあると思います。というのもノーマルのキャリパーよりも高い剛性感を感じ、また効き、コントロール性に置いても素晴らしいものだと思うからです。
十分な剛性のある台座、フロントフォーク、ヘッド周りなんかを考えてもフロントのダイレクトマウントの弱点はゼロではありませんが、少ないように思えます。

リアに関しては剛性などを考えればBB後方が有利かとは思いますが、整備性の問題なんかを考えてもRSタイプがやはりいいかと思います。
しかしRSタイプであればブースターで弱点の台座の剛性を補強して上げたほうがいいと思います。
となるとむしろリアに関してはフロントのようにガンガン効かせてと言うよりかは構造的にも100%制動のためというよりかは、車体のコントロール目的で使う場合が多いかと思いますのでノーマルタイプでもいいのではないかなぁと思います。やはり2輪のブレーキはフロント命ですから。。。
リアに感してはノーマルタイプとダイレクトマウントでどんぐらいの空気抵抗に差が生まれるのかは不明ですが、ノーマルでも十分なような気もします。

ということでゼリウスの設計、
フロント:ダイレクトマウント
リア:ノーマル
これはかなりいい組み合わせだったと思いました。

実際のところG7 Proになってブレーキは新型のULTEGRAのR8000にしましたが、、、
ここからはまたの機会にさせていただこうと思います。

ということで今回は良くも悪くも徹底的にダイレクトマウントブレーキ!そんなお話でした。

何が絶対にいいのか?という答えは各社の動向を見ればわかると思います。
バラバラってことは、、、答えはでていないということなんでしょう。
大人の事情は考慮してはいけないところでしょうか・・・(笑)



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