リアディレイラーのSSとGSの違い キャパシティの話
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※最新モデルを加えて大幅更新致しました。
キャパシティ (capacity) は、保持、受け入れ、または取り込む能力を言う。 体積の概念に類似する。 人の能力的な許容範囲を示す場合など、日本語でさまざまな場面で使用されるが、ここでは、特に使われることの多いスポーツ用語としてのキャパシティを取り上げる。
Wikiより引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/キャパシティ

なんや気にしたことのない方は全く聞いたことのない言葉だと思いますが、リアの歯数を変える(丁数の違うカセットスプロケット交換)の際には重要な事もあります。

文字で表しても少々わかりづらいので図にしてみるとわかりやすいです。

ということで今回はリアディレイラーのSSとGSの違い キャパシティの話です。

▶リアディレイラーのSS・GSとは?

ロード用のリアディレイラーには主に2種類ずつある場合が多いです。(※105はカラーが黒と銀がありますので4種類)
SSはショートケージ(Short cage)と呼ばれ、GSはロングケージ(Long cage)と呼ばれることがあります。

まずSSとGSの違いですが、
SS:クロス気味のギアを使う場合
GS:ワイドギアを使いたい場合
というものです。

もっと簡単に書くと、
SS:めちゃくちゃ軽いギアはあまりいらない場合
GS:超軽いギアも使いたい場合(激坂対策等)
このような使い分けです。
つまりリアディレイラーのSSとGSは使いたいギアの歯数によって選択をする、というものです。

見た目的な特徴では、上下のプーリーを保持するプレート(アーム≒プーリーケージ)の長さが全然違います。
image834
 上下プーリー間の距離が違います。

パーツ単体で見るとわかりやすいです。
IMAG0752
R8000シリーズのプーリーケージで左側がSS(ショートケージ)右側GS(ロングケージ)です。
SSとGSの違いは、このプレートの長さが違うだけではありませんが、見た目の違いはここが一番わかり易いです。

実際にはスラント角が違い、またケーブルの引き方も違うモデルもあったりと細かい技術の違いが組み込まれております。



▶最重要なカタログ値

リアディレイラーの選択ですが、フロントの歯数とも密接な関係があります。
ULTEGRAのR80000シリーズを例にカタログを見ていきます。
sss
■対応”トップ”スプロケット(最小/最大)
RD-R8000-GS:11/12T
RD-R8000-SS: 11/14T

■対応”ロー”スプロケット (最小/最大)
RD-R8000-GS:28/34T
RD-R8000-SS: 25/30T

ここはわかりやすいと思います。
最大と最小がもう決まっているので、CS-R8000(CS-HG800)のラインナップでは
image1612
このような選択になります。
完全にカタログ通りです。


■最大フロントギア歯数差

ここで突然フロントのお話しがでてきます。
最大フロントギア歯数差とは、もう言葉通りですが、
=最大ギア(アウターの歯数)ー最小ギア(インナーの歯数)
 こういうことです。

FC-R8000のラインナップは
・46×36T=歯数差:10
・50×34T=歯数差:16
・52×36T=歯数差:16
・53×39T =歯数差:14
ということですので、リアディレイラー的なお話しでは、SSもGSもどの歯数でも OKということです。

これがあまりないとは思いますが、例えばむりに53Tのアウターギアに34Tのインナーギアを付けてしまうと歯数差は19TとなってしまうのでSS、GSどちらも適応外ということです。
(フロントの端数差が大きすぎてしまうと、リアディレイラーでチェーンを引ききれなくなってしまう可能性がある、ということです。詳細は後述)

■トータルキャパシティ
※原則現行型を使っていれば理解はそこまで重要ではありません。
というのもキャパをいちいち計算しなくても、前述の項目を見るだけで選択ができるからです。(むしろキャパだけでは駄目な場合も。)
現行品(2020年12月現在)の11速の場合では、原則ローギアを見て25~30TはSS、28~34はGS、ただし特例として、ULTEGRAに限りトップが14Tのジュニアスプロケットの場合のみロー側が28TですがSSのみ。ということです。

下位グレード、8速のClarisを見てみます。
ダブルの場合は、11速同様にリアのロー側の大きさで判断すれば良いです。
しかしフロントトリプル(3速:50×39×30)は最大歯数差が20Tとなり、注意が必要です。
ssas
ですのでリアディレイラーのカタログの数値は、最大フロントギア歯数差20TはGSのみです。ということはフロントトリプルの場合はリアの歯数に関わらずGSのみとなる、というになります。
SSだとその歯数差は引ききれない、ということです。
フロントトリプルの場合はGSしか使えませんが、リアディレイラーの対応スプロケットを見てみると、対応しきれないものもあります。
cracs
それはローギアが25T、26Tの場合です。
GSは28T以上というのがリアディレイラーカタログの記載です。
ですので、フロントをトリプルで使う場合、リアは小さなクロスギアは使えないということになります。

これらを踏まえても、原則リアディレイラーのカタログ値通りに選ぶとして、トータルキャパシティという項目はあまり必要ではありません。



ということ踏まえた上で、知識という意味でのトータルキャパシティです。
フロントディレイラーのキャパシティとリアディレイラーのキャパシティを足したものです。
「右手にRDキャパ、左手にFDキャパ、ウンッ!トータルキャパシティ」ってやつですwww

原則トータールキャパシティを超えない様に使用するということです。

おさらいですが、キャパシティは大きい(最大)ギアから小さい(最小)ギアを引いたものです。
リアだと漕いで軽い方が最大ギア、フロント漕いで重いほうが最大ギアですネ。

RDキャパシティ=ローギア数-トップギア数
FDキャパシティ=アウターギア数-インナーギア数

例えば、、、

リア11×28T:フロント50×34T(コンパクトクランク)
リアのキャパシティ:17
フロントのキャパシティ:16
17+16=33←これがトータルキャパシティです。
これによりこの組み合わせの歯数を使いたい場合は”SS”を選択するということです。

同じコンパクトフロントでリアが11-25T=キャパ14の場合はトータルキャパシティが30となりますので”SS”ということになります。

ではリアで歯数差の大きなギアを使うとどうなるのでしょうか。
リア11×32T フロント50×34T
リアのキャパシティ:21
フロントのキャパシティ:16
21+16=トータルキャパシティ:37
ということはRDの選択は”GS”になります。

このような計算となりますが、実際にはSSとGSの境界線付近の30Tで考えても、現行ではフロントダブルの場合で、最大歯数差が16Tで、SSでキャパをオーバーすることはありません。
ということで現行品であればフロントトリプル意外の場合は特に気にする必要はない、ということになります。


▶図で理解する
これらのことを理解するための図解です。
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最大ギア(緑:アウターロー)と最小ギア(赤:インナートップ)にするとこれだけチェーンの長さが変わってしまいます。明らかに赤の方が短いです。

ということでこのままでは最大ギア同士で適切に合わせたチェーンの長さのまま変速をすれば、どうにもこうにも最小ギア同士ではチェーンがたるみ、ビロンビロンになってしまいます。
このままでは困ってしまいす。

そこでリアディレイラーの登場です。
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赤丸:ガイドプーリー 緑丸:テンションプーリー
上:アウターロー(前後ともに最大ギア)
下:インナートップ(前後とも最小ギア)
※Di2の場合インナーローでトップから3枚目までしか入りません。

実際のリアディレイラーの複雑な構造がまだまだありますが、リアディレイラーは変速でギアの位置を横方向に動かすだけでありません。ものすごく簡単に言うとプーリーケージが(ギア位置の変更による)チェーンの長さに合わせて、前後に固定部を軸として振れる様にできています。
この動きで小さいギアにかかったときにチェーンがたるまないように引っ張ること、つまりチェーンテンションを適切にたもつ機能がリアディレイラーには備わっています。

と、ココまではディレイラーの動きのお話しです。

でお話しを戻すと、リアディレイラーにはSSとGSがあるというお話しでした。
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対応ロースプロケットを見ると大きな歯に対応しているのはGSタイプということがわかります。

▶キャパオーバー等による影響
チェーンの長さを走行中に変えることはできません。
ということはチェーンの長さは、変速をすることを考慮して、前後で1番大きな歯での組み合わせにも対応できるように長さを決めなければいけません。
これはチェーン長を決める上で絶対に必要なことです。しかしキャパをオーバーしているような場合はというと、チェーンを大きいギアに入るギリギリの長さに合わせても逆に小さいギアの方に変速するとリアディレイラーではチェーンのたるみを引ききる事ができずに、チェーンがだるだるに余った状態になってしまいます。

逆に短いところでぎりぎりたるまないように合わせると、どうなるかと言うと、、、大きいギアに入らずにチェーンが挟まってニッチもサッチもいかなくなります、

またギアの大きさを変える際のお話しです。
フロントが同じ歯数でも、リアの歯数が大きくなる場合(キャパシティが大きい・ワイドなギア)大きな歯のことを考えてとチェーンの長さも合わせて長くしなければ、チェーンの長さが足りなくなってしまいます。元のチェーンの長さによっても差が出ます。(通常キャパ内で適切なチェーンの長さにすれば1番小さなギア同士でもたるむことはないようにRDが働きます。・・・はずなんですが、最近の傾向でシングルテンションのRDの場合はどうしてもたるみが取れない場合もあります。フレームの設計等の問題の場合も。)

わかりやすいように図で見てみます。
例えばです。
フロント50T&リア23T
フロント50T&リア32T
(大-大ギア、アウターローにかけた場合)当然リア32Tの方がチェーンが長くないと足りなくなってしまいます。
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最大スプロケットが大きければ大きいほどチェーンは長くないといけないということです。

当然チェーンが長くなれば長くなるほど、逆に小さいギアにかけたときにチェーンがたるまないようにはリアディレイラーで、多くの量を引っ張ってあげないとチェーンが弛んでしまいます。(そこで振れ幅の大きなGSがでてきます。MTB用とか一部を除いてワイドギアに対応するためにキャパがロード用よりも広いです。SGSとか・・・)

ということから最大ギアと最小ギアの歯数の差(キャパシティ)が大きければ大きいほどチェーンがたるまないように動くリアディレイラーの動きも大きくなってくるということです。



▶RD-R9100 
旧型リアディレイラーRD9000と現行型のRD-R9100の違いはというと、、、
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現行型のRD-R9100はSSは、従来までのSSとGSの丁度中間のような設計のリアディレイラーです。

image4134

というのもキャパシティを見てみると、、
トータルキャパシティは35Tと、従来RD9000のSSのキャパシティの33Tよりも大きくなっています。
それにともない最大スプロケットが30Tまで対応になっています。
従来のRD9000は最大で28Tまでです。(9000世代もSSのみ)それが新型になって30Tまで対応になったということです。これはまさに時代に合わせての乗り方の変化や、プロからの要望等があったからではないかと思います。

現行型のR9100シリーズで見てみます。
フロントチェーンリングの歯数の組み合わせです。
50×34T:16
52×36T:16
53×39T:14
54×42T:12
55×42T:13
FD-R9100はのキャパが16TですのですべてOK。

カセットスプロケットはと言うと
11-25T:14
11-28T:17
11-30T:19
12-25T:13
12-28T:16
というラインナップです。

ということで1番キャパシティが大きくなるのが、
11-30T:”19”とフロントが”16”ということで、トータルキャパシティ”35T” となりますので、R9100シリーズ内では、リアもフロントもどの歯数を選んでも、すべて使える、というものです。

DURA-ACEのリアディレイラーは1種類、SSのみで、同一モデル内であれば全てクリアできるように設計されています。使えない組み合わせはありません。
そもそもプロ仕様のDURA-ACEですので、31T以上は使わない、ほぼ使う機会が無いということなのかもしれません。(プロでも激坂区間がある場合、32Tを入れたり、R8000のGSを使っているものも見たことがあります。)

ではどういうときに注意が必要かというと、、、

例えば9100シリーズを使用していて「どうしても激坂が上がれない。。。」
「そうだR8000のカセットスプロケットならば11-34があるぞ!11速ならいけんじゃね?」
カタログをきちんと見れば書いてありますが、RD-R9100の対応ロースプロケットが30Tまでとなっておりますので、RD-R9100では同じ11速でも使えないということです。
つまり他グレードの製品や、新旧世代をミックスしてを使う場合、イレギュラーが発生する可能性があり、注意が必要ということにあります。

またトータルキャパシティだけをみて計算しては駄目な場合もあります。
というのも、前述の11-34Tの場合リアのキャパは”23”です。
ではトータルキャパシティクリアのために、フロントの歯数差を小さくしてみます。例えば54×42Tで歯数差12T、これであればトータルキャパシティは35となります。
トータールキャパシティだけで見れば、SSの数値内に収まりましたが、カタログ記載の対応ロースプロケットの数値を逸脱しています。ですので、使うことはできません。



▶まとめ
キャパを計算をするよりも、きちんとカタログなりで公式の見解を確認する。
ということです。

実際にキャパオーバーのときにどういった現象が起きるかというと、
ギアの組み合わせによっては使えないギアが出てくる。等など、、、
と、「別に1個とか2個ぐらいぐらいギア使えなくてもいいじゃん!」 ということではありません。
何が起こるかわからないということです。
ディレイラーが壊れたり、チェーンづまりを起こしたり、、これら非常に危険なことです。
逆に実際にはキャパをオーバーさせても不具合の起きない場合もあります。たまたま動かせてしまったということですが、それと安全に運用できる、ということは全く別のお話です。
しかし公式の見解を無視するということは何があっても自己責任ということになってしまいますし、想定外の事態も起こりえる、とても危険ということです。

以上のことからも、おそらくお店で交換をお願いしても公式の見解以上のことは何が起こるかわからない、そして危険も伴うということで、お断りされる場合が多いと思います。
公式の見解は必ず守ることを強くおすすめ致します。

ということで今回はリアディレイラーのSSとGSの違い キャパシティのお話しでした。

※今回はリアディレイラーの構造をものすごく単純に、簡単に説明しましたがもちろんこれだけではなくもっと複雑な構造です。


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