油圧ディスクブレーキとロードバイクフレームの進化と問題
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最近じわじわと増えてきている油圧ディスクブレーキです。
油圧ブレーキの普及とともに、ケーブルはフル内装のモデルも増えてきました。
ケーブルを内装することですっきりとし、空力的にも有利になります。

しかし問題はないわけではありません。

重いとか、鳴くとかは有名なお話ですのでそういったことではなくて、すこし視点を変えてみて、お店的なメカ的なお話です。

最初に書いておきますが、今回はネガティブめな記事ですが、新しい技術を否定するわけでけではありません。シマノの技術は素晴らしいです。
ロード用のシングルテンションのシャドーRDやトグル機構のFD等もそうです。
新しい技術を保守的に否定ばかりしてしまうと、新たな技術の進化が阻まれてしまう場合もあるからです。

ということで今回は油圧ディスクブレーキとロードバイクフレームの進化と問題、そんなお話です。、

※だいぶ個人的な見解や希望が折り混ざっております。



▶ケーブルの内装化の弊害とは
油圧ブレーキの普及とともにケーブルの内装化が更に進んでいきます。
というのには理由があります。
リムブレーキと比べて、コントロールレバーから、ブレーキ本体(キャリパー)までの距離が長くなります。
びよ~んと長い本体までのホースをどうするか、従来はフォークに止めてたり、ダウンチューブに沿わせていましたが、最近はフォークやフレームの内部に入れるようにしました。
エアロ効果もバッチリです。
というのが少し前のお話、最近ではハンドルの内部も通り、更にはヘッドチューブを通してしまえば完全に内装ができ更にスッキリ(ACRシステム等)します。
そして昨今の研究がどんどん進んできている空力的も有利になります。走ることにだけであればデメリットはほぼ有りません。

油圧ディスクブレーキはケーブル引きではなく、油圧になったのでラインが多少ひん曲がっても摺動抵抗は構造的に無く、引きが重くなったり、ブレーキ性能への影響が少ないです。
油圧ディスクブレーキのラインをフルに内装する、これは理にかなっていることです。

また変速面では、いわゆる触覚と呼ばれるハンドルバーに沿うことのないケーブルルーティングが主流でしたが、今ではかなり下位グレードのコンポーネントまでハンドルバーをに沿うようなケーブルのルーティングに変わりました。触覚がなくなるということでかなりスッキリしますし、空力的にも有利になります。しかしもちろん弊害もあります。

そしてフレームもそうです。
以前はケーブルは外装式が一般的でしたが、最近では内装式が一般的になってきております。
フレームのケーブル内装方法は各メーカー構造から組み方まで多種多様で、アウターごと入れたり、ケーブルガイドがなかったりします。

フレームにケーブルが内装されるようになった際は、整備性の低下、ということも有りましたが、今となっては各メーカー内装式でも整備性を確保したモデルをみることができます。

そして前述の、油圧ディスクをフルに生かし、ヘッド周りの内装をした、いわゆる完全内装仕様です。
これも従来ではまったくなかったわけでは有りません。
しかし内装化は進めば進むほど、失うものも多くなってきます。



▶メカ的にみる油圧ブレーキシステム
ということ少しおいておき、油圧ブレーキの話です。。
油圧ブレーキは制動力コントロール性能はリムブレーキを凌ぐ、安定性を持っていると言われています。(※ローター径160mm以上等)実際に乗ってみればわかりますが、少ない力でもよく効きます。

しかし現状の油圧ブレーキシステム、もちろん多くは問題ありませんが、問題が出てしまうこともあります。
最近じわじわと問題が増え始めてきました。
というのもおそらく油圧ブレーキは爆発的に増え始めた2年ぐらい前に組まれた、自転車が使用されていくうちに不具合が出てきた、また低グレードで安価な油圧ブレーキの不具合、というものも目立ってきているように感じます。

全部を公開するのはあれですので、油圧システムの不具合のほんの一例です。
コントロールレバーを固定するブラケット内のボルトの締め付けが、ブレーキレバーの動きを阻害する場合があります。これは最初は不具合がなくても使っているうちに動きが悪くなる場合もあるようです。 ものすごく単純なことですが、少々問題です。

油圧システムに関しては基本的に、内部は公開されておりません。また販売店向けの資料、一般公開のされていない”秘伝の書を”見ても、かなりざっくりとしか書いてありませんので不明な部分が多いです。
また油圧のシステムに関してはほぼいじれる箇所はなく、基本的に不具合が出ても、内部的な修理はほぼできませんので、不具合が出たらシマノに送って確認をしてもらう、というのが基本です。
キャプチャst
https://si.shimano.com/api/publish/storage/pdf/ja/ev/ST-R9170/EV-ST-R9170-4079A.pdfより
※レバー部も含めてリペアパーツのラインナップがほぼ有りません。
ということは落車で折れやすいレバー部も、ブラケット体もどちらかでも折れたら終わりです。

またシマノ送りから、万が一保証等で交換してくれるならOK、、、一概にそういうことではないところが、現在の油圧のシステムです。

問題が出たとすると、取って付けて、、、それだけではなく、対処がかなり大変になる場合が多いです。

例えば何か動きが悪い場合、一つずつパーツの確認をして、何が悪さをしているのか、確認することで原因を特定し対処をする、確実にどこが悪いのか判明することが多く明確です。。

しかし油圧だとこれはできません。
パーツを分解して、各々で動かすことで基本的にできません。

油圧の場合、例えばなにか具合が悪い場合、キャリパーが怪しい、となったときにキャリパー単体を外せば油がダダ漏れになります。レバーもそうです。単体で動かして動きを確認するということができません。新しいキャリパーを取り付けて動かして見る場合、油圧システムとして組み上げないと動きの確認ができません。

例えばですが、なにか不具合が出て新しいキャリパーに交換してみます。新品のキャリパーを組み付ける場合です。
外した油圧ラインのオリーブやインサートは原則として使い切りですので、新品を用意する必要があります。ということでキャリパーを外したら、オリーブ&インサートの部分をカットし、新しいものを使用します。
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※潰れることで密閉されるオリーブの再利用は原則できません。

ということは、、、油圧のラインは一度外すと最低でも大体1.5mm程度はカットする必要があります。要は油圧システムはラインは外すたびにどんどん短くなります。

ラインの長さは外装式で余裕があればよいですが、フル内装、おそらくメーカーが7部組の状態で納品する場合、ピッタリの長さで組まれている事が多いです。
たとえ1.5mm程度のカットでも、できない場合もあります。(正確には切れないわけではなく、繋げない)長さに余裕が無いわけです。
となると、ラインも交換になります。

さぁ、ライン交換です。
フロントであれば、フォーク、ヘッドパーツ、ステム、ハンドル内を通ります。ヘッドパーツもバラす必要が出てくる場合がほとんどかと思います。
リアの場合は、フレーム内部でラインの長さは余裕がある場合が多いと思われます。それでもおそらくフル内装式でラインを2回切れるものを少ないと思います。
リアの場合は物によってはBBも外します(もちろんクランクも)。ヘッドをバラします。ハンドルを通ります。もう少々手間のかかる分解です。

と、こういったこととなりますので、油圧ブレーキ車はリム車よりも時間も手間もかかります。

話はそれますが、フレーム内にトンネル、いわゆるラインの通り道があるフレームがあります。これがあるとラインを通すのは簡単です。
しかしです。現在の油圧システムではあまりないと思います。
というのもトンネルがあると通すのは楽ですが、”ゆとり”が作れないからです。

ゆとりはフレーム内で作らなければ、ハンドルが切れないことにもなりかねますので、フル内装式ではかなり厳しいと思います。
トンネルがある場合は、ヘッド周りでは露出する場合が多いと思います。

内装式の場合、ハンドルのキレ角が極端に少ないモデルも普通にあります。
輪行をする場合は注意が必要です。



▶現在のハイエンドモデルはまさにレーシングスペック
最近流行りのあんなバイクやこんなバイクを触ってみてよくわかることがあります。改めて、フル内装、油圧式のバイクはいわばスーパーカーでありレーシングマシンということです。

プロが使うハイスペックマシンはメンテ、カスタマイズは基本的に専属のメカニックが行い、パーツになにかあれば基本的にはほぼまるっと交換、至って普通のことです。

その代わり、40km/hで100km走れば40秒位前に出れる、最後のスプリントでライバルよりも1cm、1mm前に出れるマシン、プロ仕様のハイスペック、つまるところそれが勝つためのレーシングマシンということです。

従来のシステムに比べて少なくとも倍以上、手間も時間もかかります。ということはもちろん工賃も高くなりますが、問題はありません。専属のメカニックがいますし、勝てればいいわけです。

これがハイエンドマシンであれば良いと思います。
しかしです。
例えばミドルグレードのバイクまでこのようになってしてしまうは、、、
手軽に輪行したり、洗車したり、、、メンテナンスに時間がかかるようになったり、費用が高すぎることでお店に持って行きづらくなるのでは、せっかくの優秀なブレーキシステムも本末転倒になってしまう気がしてしまいます、

レーシングカーでイオンに買い物に言ったり、フルメンテナンスを自分でする人はいないと思いますが、現在のフル内装システムの油圧ディスク車は、まさにそのようなマシンになりつつあるということです。



昨今の業界の流れだと、リムはもう終わった、、、ぐらいの取り扱われ方を感じないこともありません。リム車のラインナップが消えているメーカーも多く見れらます。現在のリム車に比べて、本当にディスクブレーキ車のほうが遥かに優秀なものなのか、ワタクシ自身もまだまだ疑問に思うところもあります。

現在開催中のツールを見ても、リム車なんてもうすでに過去の遺物なのかというと、そんな事は無いと感じます。
こちらの記事、


冒頭の画像、4賞ジャージの4選手ですがリムが3台、ディスクが1台です。

つまりプロ選手が自転車ではありえないようなスピードで走るレースで、リムブレーキで走っていますし、リムブレーキ車でも勝っています。
なぜか?ということを考えると、リムブレーキの未来は真っ暗闇ではないのではないかと思います。


昨今の世界的な情勢もあり不景気のおり、そんな余裕のあるメーカーは少ないということもわからなくもありませんが、また来年以降、リム車をだしてくるメーカーが出てくれると嬉しいと思います。
選択の自由はあるといいと思います。

ディスクブレーキの時代です。さぁこんなときこそ最新技術を導入した、エアロでオールラウンドのリムブレーキモデル、他社がリム車を出していないこの状況ですので、一強になれる可能性が。。。

ということで、今回は油圧ディスクブレーキとロードバイクフレームの進化と問題、そんなお話でした。

※油圧ブレーキのロードバイクが嫌いなわけでも、否定しているわけでは有りません。良いことを書いてある記事は良く見るので、逆であまり見ないようなメカ目線的なお話にしてみました。要はリムブレーキと油圧ブレーキは全く別のもので、同じもののように考えること自体ナンセンスなことなのだと思います。そして昨今の最新式の究極の性能のマシンは購入時だけではなく維持、メンテナンスも普通のマシンよりもかかる、ということです。
そうそう、スルーのリム車なんかも悪くないと思います。



余談ですが、”剛性”と聞くとどうも高ければ高いほどよい、という印象がある場合もあるようですがすべて、そのようなことだけではありません。というお話はまたの機会に。。。

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