油圧ディスクブレーキってどんなシステム?ものすごく簡単に説明してみる
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最近よく聞くようになってきた油圧ブレーキです。
何やらブレーキの効きが良いらしいぞ、というだけではちょっと。。。

ということで今後増えていくであろう、油圧ブレーキに関しての基礎的なお話を例のごとく、ものすごく簡単にしてみようと思います。今回は油圧ディスクブレーキってどんなシステム?ものすごく簡単に説明してみる、そんなお話です。

※まだまだワタクシ自身も勉強中の部分もありますので、もしも怪しい部分、誤り等がございましたらコメントいただければ確実な情報発信のためにきちんと確認の上、修正をさせていただきます。よろしくお願い致します。



▶基本的な構造
油圧システムの基本的な構造としては、読んで字の如しですが、パスカルの原理というものを用いて油の圧力を利用したものです。

詳細は動画がわかりやすいので、下記の動画を見てみてください。


パスカルの原理ですが、力の入力はすべての部分に等しくすべての方向に力がかかる、と言うことです。

これをものすごく簡単な図にしてみます。(だいぶざっくりですが)
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油圧ブレーキのシステム内部は基本的に油で満たされています。
それをレバー側から油を押してあげます。
するとピストンが油の力で押し出されるというものです。

ここでパスカルの原理が使用されますので、レバーの入力(握る力)に対して、ピストンが押されて出る力、実際にはパッドを押し出す力をものすごく強くできるというのものです。

でここでどうでもいい話で少々難しくなりますが、前述のようにパスカルの原理はすべての部分に等しく力がかかる、というものです。
ということはレバーを握れば押し出そうとするピストン以外の場所にも、力がかかっていることになります。もちろん油圧のホースにも等しく力がかかります。厳密にはレバーを握るとピストンだけではなくホースにも力が加わり多少なりとも膨らみます。ですので油圧のホースは長ければ長いほど、タッチが甘くなる(ホースの膨らむ)傾向にありますので、ホースが短いフロントと、ホースの長いリアでは厳密にはタッチが変わると言う現象が起きます。

昭和のレーシング系のオートバイではこのホースの膨らみによるタッチの甘さを嫌って、ホースを金属のワイヤーメッシュのものに変えるとカチッと感が出るということで、ブレーキ系のチューンとしては見かけることが多かったです。貧乏チューンとしては通常のホースにタイラップをしこたま巻きまくるというちょっとあれな方法もありました。
というのは余談で。。。(かなり古い知識なので今では( д) ゚ ゚アボーンかもしれません。)

お話を戻します。
油圧ブレーキのシステムをものすごく簡単に書くと、油を押し出すことでピストンを押し出される、その力でディスクローターを挟んで止めるので、油圧ディスクブレーキということです。

つまり従来のケーブルで引っ張る構造のブレーキは、アウターケーブルとインナーケーブルの摩擦抵抗次第で引きが重くなったり、軽くなったりがあります。これがケーブル引きの最大の弱点でした。
しかし油圧で用いられる油は流動体ですので、ホースのカーブがきつくなっても摩擦等は関係なく、引きが重たくなったりしづらいので、軽いタッチでよく効くと言われております。
とは言ってもはっきり言ってケーブル引きでもきちんと組んであれば、油圧とレバーの引きの重さが極端に違うことはありません。


▶エアとは
では油圧ディスクお話で切っても切れないのが、”エア噛み”という現象があります。
油圧のライン内、正確には油があるべきところにエア(空気)が存在してしまうことです。
何が悪いのかと言うと、最悪ブレーキが効かなくなってしまうことになります。
少量のエアであればブレーキタッチがグニュグニュする・甘くなります。というのもオイルは高圧でも体積変化が少ないですが、空気は高圧時の体積変化が大きいです。ですので圧力をかけオイルを押そうとしても混入した空気も一緒に圧縮されるため、(空気が潰れてることで)握りが甘くなってしまうというものです。

もっとひどい状態であれば、油を押そうとしても押すことすらできずにレバーがスカスカしてしまいます。

しかし現行のシマノの油圧ディスクの構造は基本的に密閉してあります。
逆さまにしたって外から空気が入りこんでしまう隙間があるわけではありません。
逆さまにして空気が入る隙間があれば、逆さまにしたらオイルが出てしまうかもしれません。またそんな隙間があればレバーを握って高圧になったら、オイルが吹き出しますかもしれません。
ですのでエア抜きが完了している状態であれば逆さまでも、振っても問題は無いはずです。
しかしなぜ輪行等でエアを噛んでしまうことがあるのかと言うと、、、ライン内の各所、影響がなかった(少なかった)部分に入っていた細かなエアが集まったり、内部に残っていたエアがよくない部分に移動したりすることで、悪影響を及ぼしてしまう、ということが言われています。
ですので、理屈的にはただ単に逆さまにして静止しておくよりも、輪行や車載で振動がある方が原理的には泡が移動したり集まりやすい、と言うことです。

ですのでもしも逆さまにした場合は、正立させて走り出す前に、ブレーキが確実に効くかどうかを確認してから走り出すということを安全のためにもおすすめ致します。


▶ディスクブレーキとリムブレーキ
回転を止めるのにはリムブレーキの用に回転の外側を抑えて止めるのは効率が良いです。
逆に油圧のディスクの用に回転体の内側を抑えて回転を止めるのはお世辞にも効率が良いとはいい難いです。しかし、前述のパスカルの原理があり、要は倍力装置のようなものです。それがあるので、本当は効率が悪いのですが、超強力な力で挟み込むことができるので強い制動力を得られるということです。

また回転の中心部にあるということのメリットは、例えばMTBやシクロクロスであればリムにドロなどがついてしまうことが多々ありますが、ディスクブレーキ、回転体の内側であればリム部よりもドロなどの付着が少ないです。コレもMTBなどでは特にメリットとしてあります。
またリムのフレや変形に対しての影響もすくないです。地面に極めて近いリムが変形する可能性よりも回転体の中心にあるディスクが変形する可能性のほうが低いからとも考えられます。


▶リムブレーキとの圧倒的な違い。
リムブレーキはブレーキシューが減ってくるとブレーキの遊び(握り代)が増えてきます。
シューが減ってきてシューとリムのクリアランス(隙間)が増えるからです。
ですのでリムブレーキのシステムにはシューが減った時用にアジャスターが必ず付いています。
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パッドが減ったときに調整ができないとなると、握り代が増えすぎてブレーキが効かなくなってしまうことを防ぐためです。

ではディスクブレーキはと言うと、、、このアジャスターは必要がありません。
というのも、構造がまったくリムブレーキと違うからです。

リムブレーキは握ったレバーを離す(解除する)とリムブレーキ本体に組み込まれたバネの力でブレーキが開きます。
ではこれがディスクブレーキだとどのような仕組みになっているかと言うと、、、バネが入っているわけではありません。
ピストンリング(ピストンシール)というものが入っています。
簡単に言うと、、、太い輪ゴムのようなもので、イメージ的にはキャットアイとかのゴムバンド的な、あのようなイメージです。
図で見てみます。
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レバーを握って油の圧力で押し出されたピストンがパッドを押しブレーキが掛かります。(上の図の右側)
その際にピストンリングがグニュッとヨレます(撓る)。(右の図の赤丸)
レバーを解除するとピストンリングのヨレが戻る力でピストンが戻ります

これが油圧ブレーキのパッドが開く(ピストンが戻る)時の簡単な仕組みです。
リムブレーキの様にバネの力でアーチが戻るのとは違ってブレーキ(レバー操作)を解除したときには、ピストンリングのヨレが戻る力だけで戻っているということです。
この構造が故、リムブレーキのバネの様に思いっきり戻ることができませんので、リムブレーキよりもローターとディスクのクリアランスが狭くなっています。


▶パッド・ローターの摩耗に対して
ではなぜ油圧ディスクにはパッドが減った時用のアジャスターがないかというお話です。
コレも図で見てみます。

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上の絵の右側のパッドが摩耗したとします。
この場合は明らかに片側の偏摩耗ですが、あまり気にしないでください。

レバーを握るとピストンが押し出されます。
ズバッと答えからですが、
摩耗が進んでくると、ピストンがどんどん飛び出していく。ということです。
ちょっとかっこよくいうと、パッドクリアランスはパッドやローターが減りに対して、ピストンが押し出されてくるためとしても常に一定に保たれる。からです。

ピストンリングの変形量の限界を超えた場合、ピストンはピストンリング上を滑り突出してきます
例えば油圧ディスクでホイールを外してブレーキをニギニギすると何が良くないのかと言うと、ピストンがどんどん出てきてしまうからです。ピストンが出てきてしまうため、パッドがピタリとしまってしまいホイール(ローター)が入らなくなってしまいます。
つまりピストンはレバー操作で飛び出してきて、レバー解除でピストンリングの変形量分戻る、ということです。
という図です。
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ローターがある状態で握った状態(普通の状態)が左上です。
離すとピストンリングの変形量分ピストンが戻ります。これが規定の戻り幅です。(左下)
では右上、ローターがない状態で握ると、、、ピストンが押し出されます。
注)一回握っただけではピストンはできることは少ないです。何度か握ると完全に閉じます。
このパッドが閉じた(ピストンが出た)状態でレバーを離してみると、規定の戻り幅しか戻りません。
ということでローターは入る隙間がなくなってしまうと言うことです。
(しかしもしにぎってしまってピストンが出てしまってもピストンをまっすぐ戻せばよいです。)

このピストンが滑り出てくるという構造ですので、たとえパッドやローターが摩耗しても引き代が一定に保たれるというものです。

ココで疑問です。
油圧システムの内部は100%オイルで満たされています。
いわば空気も入っていない状態です。

ということはピストンが出ていってしまうと、、、どんどん引き代が増えていってしまうので、どこかがの容量がかわりに減っこんでくれないと釣合が取れません。
最初の図に戻ります。
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ピンクはオイルで満たされている部分です。
ピストンが物理的に出ていってしまうとなると、、、キャリパー内のオイルの量はピストンの出代に対して増えてきます。ということはレバー(と書かれた部分)が物理的にどんどん奥に入っていってしまいます。
これではレバーの握り代がどんどん増えていってしまいます。

コレを解消するための構造がリザーバータンク部のダイヤフラムというものがあります。
ゴムの膜のようなイメージで、オイルが押し出された分凹んで整合性を保つというものです。

というのは難しいので特にそこまで突っ込むところではありませんが、要はピストンの出代に合わせてキャリパーにオイルが移動した分、レバー側で補う構造がある、と言うことです。
コレはパッドが減ったときもそうですし、ローターが減ったときも同じことです。
パッドが減っても、ローターが減っても、逆に多少パッドは厚くなった(笑)としてもピストンの限界幅以上の厚みで無い限りは、パッドクリアランスは一定に保たれる、と言うシステムです。

しかこの規定の戻り幅分、戻らないことがあります。
それは後ほどのお話になります。

▶ディスクローターの干渉(擦れ)
ではよくあるディスクローターの干渉、ローターに擦ってしまうと言う問題です。
原因はパッドクリアランスが狭いため、ということですが例を上げてみます。
ローターの干渉は大きく分けて3つがあります。
①ダンシングなどで擦る
②激しいブレーキング後に擦る
③その他


※ディスクローターは新品の状態でも完全に真っ平らではありません。
どちらかというと平らに見えても微細な振れがある(曲がっている事)がほとんどです。

ダンシングでシャリシャリなってしまう、要はパワーがごりごりかかった際に、干渉してしまう場合です。前述のようにパッドクリアランスが狭いということもありますし、ディスクローターとブレーキキャリパーの固定位置の問題もあります。
実際の動きは不明ですが、推測できる原因があります。
構造的なお話では、干渉の原因はフォークとホイール(にくっついているローター)の位置関係がずれるから干渉するというものです。
ものすごく簡単に書くと、キャリパー本体は動かないのにローターの場所が何らかの原因で動き位置関係がずれるからです。というのもダンシングでパワーを掛けた際に、キャリパーが動くというのは考えづらいからです。(ブレーキングでキャリパーがずれる可能性はゼロではありません。)

これはホイール剛性が、、、と言うお話がありますが、正確にはハブなのではないかと思います。

ハブの剛性だけではなく、エンド部とブレーキキャリパー台座、もしくはハブとエンドの接点の剛性等、いずれかの影響です。
これらのどこかが原因となりキャリパーとローターの位置関係が変わることで瞬間的な干渉が起きていると考えられます。

これはサスペンション機構のないフロントフォークで乗り心地等を考えればフォークをしなやかに動くようにすることが必要になりますが、この様にフォークを柔らかく、もといしなやかに作ることで干渉が起きてしまう事が考えられます。
ジレンマです。

しかしコレはシマノも大変なところだと思います。
最低限のクリアランスを確保したとしても、実際にフレームやホイールの硬さ等の設計次第では干渉が起きてしまうことがあると考えられます。コレばかりはシマノに干渉が、、、ということを聞いてもそれはフレームが、ホイールが、、、となってしまうかもしれません。

強いブレーキングの後に擦るというのは、コレはディスクローターが原因です。
ものすごく簡単に書くと、激しいブレーキングで熱せられたディスクローターが熱の影響で反る、ということです。
温度が冷えればもとに戻るそうですが、場合によっては戻らないこともあるとか。。。
コレはシマノさんになんとかしてもらうしか無いことです。

まだまだあります原因は。
コレが先程のお話ですが、前述のピストンの戻り方を思い出してください。
ピストンリングの変形で戻る、ということですが、例えば汚れが付着したり、ピストンリングが劣化したり擦ることでピストンリングの動きが悪くなる場合があります。
その際に通常の戻り幅よりも、戻りが少なく干渉してしまうことがあります。

何度かグリグリブレーキングを繰り返すことで戻ったり、戻らなかったり、、、こんな症状が出た場合は、メンテナンスが必要な場合もあります。

ともあれとにかくディスクブレーキはパッドクリアランスが狭いので、ちょっと角度が変わったり、しめ方が変わったり擦るだけでもいとも簡単に擦るようになることもあります。


▶ディスクブレーキと音(鳴き)
ディスクブレーキの音の問題もあります。
日本人はかなり音に敏感で音を極力出したくないということですが、海外の選手などでは音が出てるからよく効くとか、レーシングブレーキの音は出るものとか結構寛容な意見や、鳴きをあまり気にしない選手も多いとも聞きます。

シマノのブレーキはカーボンリム用のシューも含め、ディスクブレーキのパッドでも鳴きは基本的に出にくいと思います。
しかしレジンパッドなどは特に、一度油が染み込んでしまった場合、角笛のような音が出ます。
そして一度染み込んでしまうと、もう復活にかける労力を考えると、新品に変えてしまったほうが早い場合もあります。
ディスクのパッドは油の影響が音となって現れることが非常に多く感じます。
雨等で一時的な鳴きであってその後に収まればよいのですが、収まらない場合は、、、これも次第に解消されていくと良いと思うのですが、シマノさんに期待デス。


▶車やオートバイと自転車の違い

車やオートバイは逆さまにしないとか、使い方的な違いはありますが今回はそう言っことではありません。
車やオートバイの油圧ディスクブレーキ、エンジンを切ったり音が静かな状態だとわかりますが、結構多くの場合、擦っています(笑)そう普通に干渉していることが非常に多いです。

では自転車ではどうかというと、基本エンジンの音もなく非常に静かな乗り物なので、擦っているのに気が付きやすいというところもあります。また人力で絶対的なパワーが圧倒的に低い自転車では多少の干渉の影響はと言うと、、、もちろん干渉の程度にもよりますが、コレはそこまで大きくないのではないかと思われます。
一番最初の方に書きましたが、もしも干渉してしまった場合、回転体の内側と外側では影響が違います。ですので回転体外側のリムブレーキが干渉してしまう場合と、回転体の中心よりのディスクブレーキが干渉してしまう場合を比較すると、やはりディスクのほうが影響が少ないとも考えられます。

しかしです。
その干渉が原因で0.001Wでも抵抗になるとすれば、プロユースでは嫌らわれる場合もあると思います。

ちなみにスポンサードの問題から殆どのごにょごにょ、プロだけではありませんがごにょごにょ。。。これ以上はごめんなさいm(_ _)m



▶まとめ
まだまだロードバイクのディスクブレーキはフレームも含めて進化する余地があると思います。
シマノも残すところ一ヶ月ぐらいで発表するのではないかと思われる、新型DURA-ACEはどのような進化をしてくるのか、また各種フレームメーカーもそうです。

また基本的にディスクブレーキモデルはホイールやコンポ等も含めて、一部の上位グレードを除き、ミドルグレード以下のモデルはかなり重たくなる傾向にあります。
これらの問題もまだまだ良くなっていくと思いますので、焦らずに気長に今後の流れを見ているのも良いと思います。もっともっと良くなることを期待しております。

また今は世界的にアレですが、少し情勢が落ち着いてきたころに、本当にロードもディスク一択になるのか否か。。。コレもまだまだ不透明であると思います。
某S社とか某C社が突然ハイエンドで「やっぱりリムモデル出します!」と突然言い出したら、ころっと変わることもあるかもしれません(笑)

ということで今回は油圧ディスクブレーキってどんなシステム?ものすごく簡単に説明してみる。そんなお話でした。




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