こちらです。


世界で戦うプロのレースでチェーン落ちが頻繁に起きてしまっている、という問題です。プロの世界でもチェーン落ちがないわけではありませんが、最近のレースではチェーン落ちの頻度が上がってしまっているということです。

上記リンクの記事内でもメカニックがチェーン落ちについての原因について、主に1つの背景と2つの原因が推測できる、ということが書かれています。
背景:パーツ不足のため11速と12速の混合で使われていることが多い。
(完全なセットで使用しているのはFDJのみ)

原因①:12速用チェーンの幅が狭い
(12速用が悪いわけではなく、前述の11速と12速混合による不具合)
原因②:チェーンアライメントが悪い
一言でチェーンアライメントと言っても難しいです。

また11速コンポに12速チェーンを使用することに関しては世界ではもうすでに試している例が多くあり、確かに細かな音鳴りの防止にはなるということですが、フロントの変速性能低下やチェーン落ちの増加という問題があるということです。構造的に考えても納得せざるを得ません。

ということで今回は、このプロレースで現在、増加しているチェーン落ちについて、これをもうすこし詳しく考えてみるというのが今回のお話です。

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まずアライメントの話に入る前に、新型R9200、R8100シリーズの12速化に伴い物理的に変わったこと、変わらないことです。
①チェーンが細く(薄く)なった
11速チェーンよりも12速チェーンの方が幅が狭いです。
ワタクシ自身が実測したわけではありませんが、先人たちの記録によるとおおよそ0.4mmぐらい薄くなっているということです。
(12速チェーンは11速チェーンからの変更で、アウター→インナーへの変速、チェーンの保持力を上げるための再設計がされたという話も。)

②フロントチェーンリング歯間距離
フロントのチェーンリング、アウター~インナーの歯間距離は変更なしということです。(9000→R9100 世代では変更がありました。)

③チェーンラインの変更
チェーンラインが43.5mmから44.5mmへと変更になりました。(Qファクターは146mm→148mmへ変更)
結果的に12速は11速よりもチェーンリングの位置が外側に位置するようになった、ということです。

※チェーンライン:シートチューブセンター~フロントギアの中心の距離、フロントディレイラー動作の基準となります。

④フリーボディ幅は変更なし

フリーボディの幅は変更はありませんが、12枚のギアへと増えギア間の距離も狭まっていると考えられます。この影響もありチェーンは11速よりも、薄くする必要があったとも考えられます。

これらを踏まえての今回のプロのレースでのチェーン落ちに関してですが、新型の12速コンポーネントに旧型の11速クランク(チェーンリング)を使うことがよくないのではないか?ということになっているようです。



問題のチェーン落ちのシーンを見てみます

3:11~
※現在は動画は削除され確認ができなくなっております。

落ちる瞬間や落ちた後の状態が映ってはいませんのであくまでも推測でしかないということを前提としたお話です。
おそらくこのチェーン落ちはコッペンベルグ上りを終えた時のことです。
変速をしていないかもしれませんが、可能性が高いのはフロント変速の瞬間に発生したものです。
荒れた路面を走るだけで走行不能になるほどのチェーン落ちは起こりずらいものです。
また復旧の遅さから考えて、インナー側へ落ちたものと考えられます。


仮に変速をしていなかった状態、チェーンのあばれ等によるチェーン落ちだったとします。
そうすること考えられる要因は、やはり11速用フロントチェーンリング+12速チェーンが要因と考えられます。
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チェーンの内幅と、チェーンリングの歯厚の関係です。
11速チェーンよりも12速用チェーンの方が①も②も狭くなったということです。
この幅の縮小の影響が大きいと考えられます。
11速用の厚みや構造をもった歯に12速用の狭いチェーンを使うことで、チェーンの保持力が落ちたため、と考えると考えやすいです。



もう一つの状況はフロント変速時です。
のぼりを終えた直後、ということであればこの可能性も低くはないと考えられます。

このフロントをインナーからアウターに上げる際のチェーン落ちに関しては、2つのパターンがあります。
①インナー側に落ちる
フロント変速でインナーからアウターに上げる際には、フロントディレイラーのガイドがチェーンをアウターのチェーリング内側に強くチェーンを押し付けます。この押し付ける力が強い方が一発でチェーンをアウターへと押し上げられることになります。特に負荷がかかっている状態では差が顕著にあらわれます。
この時のチェーンやフロントチェーンリングの変速ポイント等の仕組みがシマノの技術のすごいところで、芸術的な変速の仕組みでもあります。。

ですが、チェーンが一発で上がりきらなかった場合、非常に具合が悪いです。
上がりきらない原因は刃先や変速ポイントの形状や構造、チェーンの幅の狭さ等様々な要因が考えられます。
例えばですが、歯の厚みは不明ですが単純に、チェーンが薄くなれば薄くなるほど繊細になり微妙な違いではありますが、歯のかかりが悪くなるということも考えられます。

上がりきらなかったチェーンは上がりかけたアウターからインナーめがけて落ちてきます。これが結構な勢いであったり、大きく暴れる原因になります。
この時に通常の12速の歯であれば、たとえチェーン幅の狭いインナープレート間であっても、インナーを飛び越えることなく、ぎりぎり内側に落ちずにとまるような設計になっている可能性は高いです。(アウター→インナーへの変速を煮詰めるという意味でも)
しかしこれが11速用の歯の形状に12速の細いチェーンの場合、チェーンのインナープレート間の狭い間隔ではインナーの歯にかかりにくく、インナーを飛び越えて落ちてしまう可能性があります。これは正しい11速通しの組み合わせでも起こることですので、12速用でチェーンが細くなると考えるとさらにリスクは上がるとも考えることができます。
これが内側にチェーンが落ちた場合の可能性です。

この際、チェーンが落ちた後に踏み込んでしまった場合はフレームにチェーンが食い込む可能性や、ひどく挟まる可能性があり、チェーン落ちからの復帰に時間がかかる場合が多くなります。

②アウター外側に落ちる
あまり多いことではありません。
実際にはチェーンラインが旧型の方が狭いです。ということは前述のように11速のクランクの方がチェーンリングが内側にきます。
しかしこれはフロントディレイラーを12速用クランクで調整して、そのまま11速用クランクを使えば外側に落ちやすくなりますが、11速クランクで使用する用にフロントディレイラーを内側に調整をしてしまえばよいだけなので、問題はないかと思われます。(調整内に収まるのであれば)

構造的に考えてもチェーンは外側へは落ちずらいですし、外側へは落ちても復旧が基本的にかなり早いです。
場合によっては乗りながらでもチェーン落ちを直せるぐらいの場合もあります。
これでレースがダメになるというのも考えずらいので、可能性で気には低いと思われます。

これ以外の可能性ではフレームの設計的にフロントディレイラー(だけではなくリアもですが)かなりDi2の調整幅のギリギリを使わざるを得ない場合もあります。
そういった場合、新型フロントディレイラーとの相性的なことも考えらなくはありません。


▶まとめ
ともあれこういった不具合は、様々な要因が絡み合い複合的に起こる場合が多いです。
シマノ公式では11速と12速のコンポーネントは原則互換性はないということです。
(※正確にはリムブレーキ本体のみ互換性があります。)
互換性がないということは、正しく動くかどうかはわからない、また何が起こるかわからない、ということで互換性外の使用はやはりリスクを伴うということです。
もしも仮に動いたとしても予期せぬ不具合が起きる可能性もあります。というのはよく見ていることです。

この問題も背景にはやはりパーツ不足、ということがあるようです。
十分に12速用のクランクが供給されることで解消されてくる問題かとは思います。というかそう願っております。

ですが、まだまだ実際には製品の安定供給にはしばらく時間がかかりそうです。当店の入荷もまだもう少しかかりそうです。
ということで今回は、プロの世界でチェーン落ち増加!? 構造から原因を考察する、そんなお話でした。

フロント変速の記事はこちらからどうぞ


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