前回のお話はこちらからどうぞ↓↓↓


前回はボルトの頭側のお話で、工具をかけて怪しいと感じたら、
・下手に頑張りすぎたり、いじらない
・もしも外れたら絶対に再利用しない
・早めにプロに見せる、お店に持っていく
ということお話でした。

と、今回はボルトの頭ではなく、ネジ山側のお話です。
ボルトの頭は元気いっぱいでも時として、ネジ山側(ボルトのかみ合わせ)がだめになってしまう場合があります。
では何が原因でねじ山がだめになってしまうのか、そしてネジ山がだめになったらどうすればよいのか、というのが今回のお話、ロードバイクの整備でねじ山を壊さないための話です。

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▶なぜネジ山がダメになるのか?
これはボルトの頭よりももっと単純なお話です。
というのも主な原因は、ボルトとナットのネジ山が正しく噛み合っていないまま(曲がったりしたまま)無理にボルトをねじ込んでしまうことによりおきます。この状態でひどくなると(主に)受け側・ナット側のネジ山が正常ではなくなってしまい、ボルトが途中までしか入らない、抜く時に異常に硬い等のことが起きます。

しかしです。
実際に曲がったまま無理やりねじ込む?そんなことできるの?とあまり想像しづらいと思います。
なんで曲がったまま無理やりねじ込んでしまうのか?ということは、実際にねじが壊れた例を上げてみるとわかりやすいです。


▶ネジがダメになった例
①リアディレイラーのアジャストボルト
これは実際にはかなり多いです。
リアディレイラーのアジャストボルトですが、基本的に微調整に使うものです。
しかしこれは形は少々特殊ですが、構造的にはボルトのようなもので、限界を超えるぐらい沢山回すと普通に外れてしまいます。

そう外れるのです。
しかしです。
リアディレイラーの場合はケーブルがつながっています。ケーブルは少なからず張られテンションがかかっている状態ですので、ボルトが抜け落ちることはなく、ネジ部が外れていること気が付かない場合があります。
またその状態でまっすぐ入れるのは難しいですし、ケーブルテンションの影響でネジ山が噛み合っている感覚は分かりづらく、結果的にグリグリと下手に回すことで斜めってしまうことが非常に多いです。

これらのこともあり、ワタクシ自身もいわゆるアジャストボルトが外れてしまっている状態の場合は、ケーブルを外してネジ山が壊れていないかどうかの確認をします。
それだけ可能性としてネジ山がおかしなことになっている可能性が高いからです。
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②スルーアクスル
最近チラホラと見るようになってきたスルーアクスル事案です。
フロントのスルーアクスルは通常抵抗なくまっすぐ取り付けられるのでトラブルは少ないですが、リアはフレーム形状によっては少々クセがあるフレームもあります。
というのはクイックリリースのバイクでも少なからずあったことで、リアのホイールがはめづらいフレームというものです。これはスルーアクスルのフレームになった今でも実際にあります。
リアがハマりづらい状態、しっかりとハマっていない状態でスルーをぐるぐるとねじ込むので失敗してしまう場合があります。
ちょっと硬いけど、無理にねじ込んでしまう状態です。

スルーのリアエンドがディレイラーハンガー等交換可能な部分にネジが切ってあれば最悪、ネジがだめになってしまっても交換が可能ですので親切設計です。しかし交換できない部分、エンド内側にネジが切ってある場合、特に貫通しないタイプのステルススルーなんかは特に要注意です。
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③BB
ねじ切り式のBB部がおかしいこともありました。
下の画像が取り外したBBです。
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左側は普通ですが、右側が明らかに金属の摩耗粉のようなものが付着しています。
案の状ネジ山はアウトでした。
これはおそらく組み上げの際に変にねじ込んでしまった例です。

と言うのも普通では壊れることが殆どない部分が破損していたのもBBの取り付けに問題があった可能性が高いと思われた事例でした。


▶壊しやすい例
実際にネジ山が駄目になるのは、ネジが噛み合っていない状態、しっかり入っていない状態で回してしまうことで壊れてしまいます。
ネジ山が壊しやすい状況を解説致します。

①ボルトに負荷がかかっている状態
ボルトが一本。ナットが一個と言う状態では極めて壊しにくいです。
しかしロードバイクをいじる場合はというと、多くの場合はナット側は固定されている場合がほとんどです。
固定された場所にネジをねじ込むわけですが、場合によってはボルト側がフリーの状態ではない場合があります。

例えばですが、リアディレイラーのアジャストスクリューのようにケーブルが取り付けられている(張られている)状態ではボルトはフリーの状態ではありません。
そのような状況は真っ直ぐ入れる、ネジ山に正常にかませることが難しい場合もあります。

②見えずらい部分
手探りで行わないとだめな場合、見えづらい場所はやはり斜めにはいっていることに気が付きづらい場合があります。

③まっすぐにアクセスしにくい場合
まっすぐにアクセスしにくい場合も注意が必要です。
まっすぐであれば曲がっいるのはわかりやすいですが、斜め方向からのアクセスになりがちな部分、注意が必要です。
特に最初から工具を使わないといけないような場所は、曲がってはいってることに気が付かないことがあります。

④ゆるみ止めが塗布してある場合
最近のシマノのコンポーネント、は緩み止めが多く使用されています。(BB、ブレーキ等)
この緩み止めが使用されている場合の特徴として、緩みづらいだけではありません。
ねじ込んでいく際に、なにも使用されていないいわゆる素の状態のボルトよりも硬いのです。
この硬さというのも微妙なところで、最初の方はネジ山にうまくかんでない硬さと似ている場合もあります。(使用されている緩み止め剤の種類にもよります)

ですので確実にねじ山を噛み合ったことをしっかりと確認の上、締め込む必要があります。


▶ネジ山を壊さないために
まず第一に、作業をし易い状況にする、ということです。
これはネジ山だけではなくすべての作業で重要なことだとは思いますが、暗かったら明るくする見やすくする、届きづらい場合はどかせるものはどかして届きやすくする、力がかかりにくいのであれば力がかかりやすく作業しやすい状態にする、ということです。

その上でねじ込む瞬間の感覚はとても大切です。
まず最初はネジ山が確実に噛み合っていることを確認してから、ねじ込んでいくということです。
最初の数回は工具をつかなくても回せるところは工具を使わないで手で回すのも良いと思います。

またその際にネジ山が少しでも噛み合いがおかしい場合、締めていく段階で通常よりも硬い場合が多いです。
これが緩み止めがあると分かりづらいのですが、分かりづらい場合は何度か入れ直してみるのも良いと思います。その場合はくれぐれも無理にねじ込まずに、優しく行う必要があります。

ボルトの頭のナメと違ってねじやまがバカになっているのは見ても分かりづらいというのも、難しいところです。
しかしネジにダメージを与えてしまった場合、ボルト側に何らかの変化が起こることが多いです。
上の画像を再度見てみます。
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右側のBBのネジ山には金属の摩耗粉が付着しています。
このように外した部分を見ることでもダメージを推測することが出来ます。


そして最後はなめやすい場所では注意をするということです。
あまり多いところではないと思いますが、緩み止めがしっかりと使用されているBB、緩み止め+斜めに入ってしまいガチなダイレクトマウントブレーキ台座、同じくフロントのディスクブレーキ台座等、は特に注意が必要です。
緩み止めが使用されているボルトです。
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すべて緩み止めが使用されているボルトです。

あとは焦らない、ということです。
時間がない中、焦って作業をしても良いことは大概ありません。焦らずしっかりと確認をしながら行うことは結果的に最大の時間短縮になることも少なくはありません。

▶要注意例
例えばです。
最近あったものですが、なかなか注意が必要だと思った物がありました。
こちらです。
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ボルトが斜めに入るタイプの某ステムです。
これを取り付ける時、です。
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これの精度がまた微妙で、、、(笑)※悪いというわけではありません。
上の画像のように前面のフェースプレートが少しでも浮いている状態だとボルトがまっすぐ受け側に入らないのです。
※赤が受け側の位置で、フェースプレートが少しでも浮いているとボルトは緑の位置にきます。
この微妙なズレがあるのでボルトがまっすぐ入りづらい状況に加えて、緩み止めの影響でボルトは固いのです
ではフェースプレートをしっかりと押し付けて保持した上でボルトを入れれば?ということなのですがそれしか無いのです。しかしです。。。そのハンドルとの相性が絶妙なのでした(笑)

こんな構造の場合はご注意ください。

▶まとめ
ボルトをねじ込んだ際にねじ山が壊れてしまうのは主に受け側です。そして悲しいかな受け側は基本的に交換ができない場合が多いのです。
ですのでやはりこの場合も怪しいと思ったら、下手に弄らずに早めにお店に持っていくこと、プロに見てもらうことをおすすめ致します。
症状が軽ければ軽いほど、ネジ山へのダメージも少ないです。
そしてあまりにもひどい場合は絶対ではありませんが、これもボルトのナメと一緒で、ひどくないほうが修正がしやすいです。
基本的にボルトとの違いは、交換することが出来ない場合が多く、基本的に崩れてしまっておかしくなっているネジ山を切り直すということです。修正とはいってもとってつけるということではなく要はほじくり直すということです。
ということはです。すべて元通り、ということではないということです。

一番だめなのはいけると思ってしまい、少しぐらい固くても無理やりネジこんでしまうパターンです。
基本的にうまく噛み合っていない状態では回せば回すだけ、どんどん状況は悪くなっていく一方で直るはない、ということです。くれぐれもご注意ください。

ということで今回はロードバイクの整備でねじ山を壊さないために、そんなお話でした。
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