現在、ロードバイク用の「チューブレスタイヤ」といえば、その多くはチューブレスレディ(TLR)のことを指します。
TLRは、ピュアチューブレスのようにタイヤ単体で高い気密性を持たせる構造ではなく、シーラントを入れることで空気圧を保持するシステムです。
つまり、現在のロードバイクにおいて、TLRを使う上でシーラントは欠かせない存在です。
空気を保持し、小さなパンクを塞ぐこと。その両方を担っているのがシーラントです。
一方で、シーラントはどれも同じではありません。
空気圧の保持に優れるものもあれば、パンク修復力に強いものもあります。
乾きにくさ、掃除のしやすさ、注入や運用のしやすさまで含めると、それぞれかなり性格が異なります。
ワタクシもチューブレス黎明期から長く使ってきましたが、気がつけばTLRが当たり前になり、様々なタイヤやシーラントを実際に試してきました。
その中で感じているのは、良いシーラントとは単に「穴が塞がるもの」ではないということです。
今回は、実際の使用経験も踏まえながら、チューブレスレディ用シーラントは何で選ぶべきか、ロードバイクで重視したい5つの性能という形で見ていきます。

▶チューブレス用シーラントに重視する5つの性能
①空気の保持力
チューブレスレディ(TLR)は、タイヤ単体で高い気密性を持たせる構造ではありません。
そのため、実際に使用するうえでは、シーラントによってどれだけ空気を保持できるかが非常に重要になります。
近年のTLRタイヤは、以前に比べてタイヤ自体の気密性がかなり向上してきました。
とはいえ、現在のロード用TLRシステムでは、基本的にシーラントは必須です。
ロード用TLRタイヤで、もっとも厚いトレッド面から空気が漏れることは、基本的には多くありません。
むしろ、トレッド面から明らかにエア漏れが出ている場合は、不具合品の可能性も考えたほうがよいケースがあります。
一方で、タイヤそのものからのエア漏れは、通常はタイヤの中でも薄いサイドウォールから起こります。
シーラントには、このサイドウォールからの微細なエア漏れをどれだけ抑えられるかが求められます。
さらに重要なのは、単に漏れを止めるだけではありません。
タイヤ内部に素早く行き渡り、早い段階でエア漏れを抑えられること。
そして、ホイールが回転していない状態でも、どれだけ空気圧を保てるかという点も重要です。
また、気密が必要なのはタイヤ本体だけではありません。
バルブ周辺やリムとの接触部、そういった微細な隙間からのエア漏れも、実際の運用では無視できない部分です。
シーラントには、そうした部分も含めて全体の空気保持を支える役割があります。
ただし、ここは少し難しいところでもあります。
エア漏れの原因は、必ずしもシーラントだけとは限らないからです。
実際、過去にはタイヤ側の問題でエア漏れが止まらず、製品回収に至った例もありました。
この場合は、シーラントの性能とは関係なく、タイヤそのものに原因があったことになります。
つまり、空気が抜けるからといって、すぐに「このシーラントはダメだ」と決めつけるのは早い場合があるということです。
また、タイヤメーカーが自社製シーラントを用意している場合、開発段階では基本的にその組み合わせでテストされていることが多いと思われます。
シーラントには種類があり、タイヤとの相性もあります。
そのため、タイヤからのエア漏れに困った場合は、まず同じメーカーのシーラントを、適正量で正しい方法で使ってみることには意味があります。
なお、シーラントが早く乾く場合も、必ずしもシーラント単体に問題があるとは限りません。
TLRシステム全体としての気密性が低いと、シーラントは早く乾きやすくなる傾向があります。
たとえば、タイヤ自体の気密性、リムとの嵌合、バルブの取り付け状態、リムテープの貼り方。
こうしたどこかに問題があると、シーラントは本来よりも早く消耗してしまうことがあります。
ですので、「思ったより早く乾いた」という結果だけを見て、シーラントだけが悪いと判断するのは危険です。
空気保持というのは、シーラント単体ではなく、タイヤ・リム・バルブ・リムテープを含めたシステム全体で決まる部分でもあります。

※タイヤからのエア漏れ例です。
②パンクの修復能力
シーラントに求められる大きな役割のひとつが、パンク時の修復能力です。
つまり、パンクによって起きる減圧をどれだけ抑えられるか、どれだけ早くエア漏れを止められるかという性能です。
せっかくシーラントを入れていても、肝心のパンク穴を塞げなければ、その意味は大きく薄れてしまいます。
空気の保持力と並んで、ここはシーラントの価値を左右する非常に重要な部分です。
そもそも、シーラントをわざわざ入れている理由は、前述のような微細なエア漏れを止めるためだけではありません。
実際には、ちょっとしたパンクであれば気にせずそのまま走れること、これも大きな理由です。
特にレースでは、この意味は非常に大きくなります。
できることならパンク自体を避けたいところですが、もし小さな異物を踏んだとしても、その程度で止まりたくはありません。
クリンチャーであれば小さな傷でも一気に走行不能になることがありますが、TLRでは走行中に気付かないまま済んでいるようなケースすらあります。
このあたりは、チューブレスレディの明確な強みです。
また、パンクを塞ぐ性能というのは、単に「完全にパンクが止まるかどうか」だけではありません。
ここは非常に重要なところですが、たとえシーラントだけでは塞ぎきれない大きな傷だったとしても、すぐにゼロになるのではなく、どれだけ減圧を遅らせられるかには大きな意味があります。
つまり、完全に修復できなかったとしても、
どれだけ安全な場所まで走れるか
どれだけ止まるまでの時間を稼げるか
これもシーラントの性能として非常に重要です。
久しぶりに一発ご臨終のバックリカット!😱
— Teppei.Y 目指せ走れるメカニック!! (@ff_cycle) July 15, 2022
こんだけの傷でも安全なとこまで500mぐらい走れたのが救い👍 pic.twitter.com/Hk5ayXw1wZ
まず、高速時のパンクでも、完全に空気が抜け切るまでに減速する時間を稼げること。これこそがチューブレスの最大のメリットのひとつだと思っています。
また、路肩の危険な位置で止まるのか、安全な場所まで移動してから対処できるのかでも大きな差があります。
このように、シーラントの修復能力は「穴を完全に塞げるか」だけで語れるものではありません。
小さなパンクをそのまま無かったことにできること。
そして大きな傷でも、完全停止までの時間を稼げること。
この両方が、TLRの大きなメリットだと考えています。
③耐久性(どれだけ鮮度を保てるか)
毎度書いていることではありますが、シーラントは生モノです。
つまり、シーラントは鮮度が命です。
当然ながら、時間の経過とともに劣化しますし、乾いてしまえば本来の性能は発揮できません。
空気を保持する力も、パンクを塞ぐ力も、鮮度が落ちれば落ちるほど弱くなっていきます。
そのため、実際にタイヤの中で1か月程度で乾いてしまうような製品は、少なくともロード用としては、お世辞にも実用的とは言いにくいと思います。
タイヤ内部でどれだけ鮮度を保てるのか。
乾いたり劣化したりせず、どれだけ性能を維持できるのか。
ここもシーラント選びでは非常に重要です。
しかも、ロード用チューブレスレディの環境は、シーラントにとって決して楽ではありません。
昨今、低圧運用が主流になってきているとはいえ、基本的にロードは高圧運用で、入れるシーラントの量もMTBなどに比べてかなり少なめです。
つまり、少ないシーラントで高い空気圧を支えることになり、シーラントにとってはかなり過酷な条件になりやすいということです。
このため、ロードではMTBよりもシーラントの寿命が短く感じられることが少なくありません。
また、メンテナンス頻度はシーラントの量によってもかなり変わります。
面倒だからできるだけ長持ちさせたい、という場合は、適正範囲の中でシーラント量をやや多めにしておくことで、メンテナンス間隔を延ばせます。
逆に、ギリギリの少ない量で運用すると、当然ながら乾きやすく、点検や補充の頻度は上がりやすくなります。
つまり、シーラントの耐久性というのは、単に「何か月持つか」という話だけではありません。
ロード用TLRという厳しい条件の中で、どれだけ鮮度を保ち、必要な性能を維持し続けられるか。
そこまで含めて見ておくべき性能だと思います。

※2~3ヶ月は普通に持ってほしいものです。
④メンテナンス性
メンテナンス性も、シーラントを選ぶうえで非常に重要なポイントです。
シーラントは入れっぱなしで永久に使えるものではなく、ある程度の期間が経ったら交換や補充が必要になります。
そして特に大切なのは、乾き切る前に手を入れることです。
ここはかなり重要です。
理想を言えば、シーラントがまだしっかり機能しているうちにタイヤを外し、状態を確認したうえで入れ替えるのが良いと思います。
一方で、そこまでしっかりやるのが面倒であれば、いわゆる追いシーラントという形で追加していく方法でも、何もしないよりはずっと良いです。
また、タイヤを外した際には、再び組み付ける前にビード部やタイヤ内部、リム側にこびり付いたシーラントカスを落とし、できるだけきれいにしておいたほうが、やはりトラブルは少なくなります。
実際には、多少シーラントカスが残っていたり、少し異物を噛んでいたりしても問題なく使えてしまうこともあります。
ただ、きれいにできるのであれば、できるだけきれいにしてから組み直したほうが安心です。
このとき、できるだけ簡単に落とせることは大きなメリットです。
逆に、シーラントカスが頑固に固まりすぎていて、まったく落ちずに苦労するようなものは、お世辞にもメンテナンス性が良いとは言いにくいです。
特にビード部にガビガビに固まってしまうタイプは、再組み付け時の嵌合にも影響しやすいように思います。
このあたりは、実際に作業する側にとってはかなり重要です。
シーラントは「止まるかどうか」だけで見られがちですが、入れ替えや掃除のしやすさも、長く使ううえではかなり大きな差になります。

このようにきれいに剥がせるシーラントのタイヤの組み合わせ、最高です。
またメンテナンスの際にはこの様になる場合もあります。
一方、乾きかけのシーラントでタイヤ同士がべったりと張り付いて絶望するのはちょっと・・・
— Teppei.Y 目指せ走れるメカニック!! (@ff_cycle) February 12, 2025
シーラントってメンテ性も大切! pic.twitter.com/wSwBwyHnGy
乾きかけたシーラントが糊のように働いてしまうタイプです。
タイヤ内部でべったりと張り付き、タイヤ同士が貼り付いて剥がれなくなるような状態になることがあります。
こうなると作業性はかなり悪く、正直なところ、絶望を感じる場面もあります。
こうした意味でも、シーラントは単に性能だけではなく、乾いたあとにどうなるかまで含めて見ておきたいところです。
掃除しやすいこと。
再組み付けしやすいこと。
乾きかけても厄介な固着を起こしにくいこと。
このあたりも、実用性を考えるうえではかなり大切です。
また、シーラントの清掃が必要なのは、タイヤやホイールの中だけではありません。
実際にパンクすると、フレームや、場合によってはウェア類までシーラントまみれになることがあります。
ラテックス系のシーラントは比較的落としやすいことが多いのですが、非ラテックス系の中にはかなり落としづらいものもあります。
付いてすぐであればまだ何とかなっても、これが数日、まして1週間も経つと、削り取らないと落ちないぐらいガチガチに固まるものもあります。
こうなると、単にタイヤ内部の掃除が面倒という話では済みません。
フレームやパーツ、場合によってはウェアまで含めて後始末が大変になります。
ですので、シーラントが付着した場所は、ライド後できるだけ早めにきれいにしておくことをおすすめします。
⑤性質
最後は性質です。
性質というと少し曖昧ですが、要するに実際に触ったときの感触や、扱ったときの印象のことです。
このあたりは数値化しにくい部分ではありますが、実際の使いやすさには意外と大きく関わってきます。
シーラントには、かなりドロドロしたものもあれば、サラサラしたものもあります。
粘度にはかなり差があり、触った感じや流れ方にもそれぞれ違いがあります。
最近は、比較的粘度の低い、いわゆるサラサラ系のシーラントが増えてきたように感じます。
粘度が高いシーラントは、どうしてもホイールバランスへの影響や、バルブまわりへの悪影響など、気になる点が出やすいからだと思われます。
様々な種類のシーラントの中でも、個人的にあまり好ましくないと感じているのが、油っぽさの強いシーラントです。
付着したときに拭き取っても油分が残るような感触があり、ヌルヌルした感じがなかなか抜けないタイプです。
こうした油っぽいシーラントは、乾きにくく、鮮度を保ちやすいという意味では長所にもなり得ます。
ただし、その反面で気になる点もあります。
ひとつは、パンク時にシーラントを吹いた際の付着先です。
たとえばリムブレーキであればリム、ディスクブレーキであればローターやパッドに付着した場合を考えると、あまり好ましい性質とは言いにくいように思います。
もちろん構造上、簡単に付く場所ではありませんし、実際に大きな問題になる場面は多くないかもしれません。
それでも、リスクがゼロとは言えません。
もうひとつは、パンクがシーラントで止まらず、最終的にチューブを入れて帰るような場面です。
このとき、油っぽいシーラントはタイヤの内側が滑りやすくなり、作業性がかなり落ちることがあります。
拭いてもヌルヌル感が抜けにくく、チューブを入れたりタイヤをはめたりする際に、滑ってしまいどうにも作業しづらいのです。
これは地味ですが、実際にはかなり嫌なポイントです。
このように、シーラントの性質というのは、単に止まるか止まらないかだけでは語れません。
粘度、質感、付着したときの感触、そしてトラブル時の扱いやすさ。
こうした部分も、実用性を左右する大切な要素だと思います。

▶まとめ
昨今のロードバイク用チューブレスシステムは、かなり良い方向に進化してきています。
一昔前のTLRシステムと比べても、驚くほど扱いやすくなりました。
それはタイヤだけの話ではありません。
シーラントも確実に進化しており、その進歩はチューブレスの欠点を減らすことにもつながっていると感じています。
一方で、チューブレスを苦手と感じている方が少なくないのも事実です。
そこには製品側の問題もありますし、使い方や組み方、メンテナンスに関する情報や技術が、まだ十分に伝わっていない部分もあるように思います。
もちろん、チューブレスとクリンチャーのどちらかが絶対に正解ということではありません。
それぞれにメリットとデメリットがあります。
その違いをしっかり理解したうえで、自分の使い方に合ったものを選ぶことが大切です。
今回書いてきたように、TLR用シーラントに求めたいのは、単なるパンク修復力だけではありません。
空気をしっかり保持できること。
パンク時に減圧を抑えられること。
鮮度を保ちやすいこと。
メンテナンスしやすいこと。
そして実際に扱いやすい性質であること。
こうした要素が揃って、はじめて使いやすいシーラントだと感じます。
シーラントも、タイヤも、今後さらに進化していくはずです。
そう考えると、TLRは今後さらに使いやすくなっていく可能性を持っている。そんなふうに感じています。
Vittoriaのユニバーサルシーラントは、非常に優秀な性能を持ったシーラントです。
一方で、完全に乾き切ってしまうと、そう簡単には落とせなくなります。
シーラントが付着した場合は、完全に固まる前にきれいにしておくことをおすすめします。
なお、冒頭やサムネイル画像で使用しているTANNUSシーラントは、このユニバーサルシーラントをさらに強化したような印象のあるシーラントです。
弊店では国内展開に先駆けて使用を開始しておりますが、これまで使ってきた中でもトップクラスに強い性能を感じています。
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また整備内容によっては、車体メーカー、モデル名、ホイール、コンポーネントなども合わせてご連絡をお願い致します。
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コメント
コメント一覧 (1)
確かにシーラントの扱い運用には慣れが必要だと思いますが、慣れてしまえば運用も楽なのです。
慣れる前に面倒だと辞めてしまう人が多い印象でとても残念です。