今となってはピュアなチューブレスタイヤを製造しているメーカーはかなり少ないです。
IRCとHutchinsonぐらいでしょうか??
では現在”チューブレス”といえば、ですがほとんどが”チューブレスレディ(TLR)”のことです。
TLRはピュアなチューブレスと違い、タイヤ単体では空気を気密する能力が低く、シーラントを入れることで空気を保持することができるシステムです。
このシーラントありきのシステムは長所も短所もあります。これがいいのか悪いのか、ということは今回の本題ではありませんので、またの機会にm(_ _)m

このTLRにはもう欠かせない存在となっているのがシーラントです。
ではこのシーラント、多くのメーカーから出ておりますがどういった製品が使いやすく良いのか?というような総合的なお話です。
もう気がつけばチューブレスから始まりTLRになり早5年位かと思われます。様々なタイヤ、シーラントを自分自身でテストしてまいりました。その経験的な話を織り交ぜた、TLR(チューブレスレディ)の最重要アイテム シーラントに求める5つの性能とは!?そんな話です。※更新版です。

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▶チューブレス用シーラントに求めること5つの性能
①空気の保持力

空気を保持する能力が低いチューブレスレディのタイヤで使うので、シーラントを用いることでどれだけ気密ができるか?と言うことが重要です。(ここ最近のTLRタイヤは空気の保持する力が上がってきているとは言え、TLRシステムは必ずシーラントが必須です)
基本的にはTLRタイヤはもっとも厚いトレッド面(路面接地面)から空気が漏れることは多いことではありません。ある意味トレッド面からも空気が漏れるロード用のタイヤは不良レベル。。。(´=ω=。)ホボソッ...かなり厳しい場合もあります。

通常はタイヤからのエア漏れは一番薄いサイドウォールから漏れます。(下の画像参照)
シーラントの仕事として、タイヤサイドから漏れるエアをどれだけ抑えられるか、どれだけ素早くタイヤのゴムに行き渡りエア漏れを止められるか、そしてタイヤが回転していない状態でもどれだけ空気を保持できるのか?そしてタイヤだけではなく微細な隙間、例えばバルブ付近等などもです。これらも空気の保持には重要なところです。

しかしこれは難しいところがあり、単純にシーラントの性能だけではない場合もあります。某社のタイヤで製品回収となったモデルの場合は、シーラントの性能は一切関係なくタイヤ側の問題でタイヤからのエア漏れが止まらないということがありました。実際にタイヤ側の不具合の可能性もないわけではないので一概にシーラントがダメ、ということではない場合もあるということです。(最近はめっきり減りましたが、数年前のタイヤでは比較的製品の初期不良的なものが一定数はあったように記憶しております。)

またシーラントが早く乾いてしまうとしても、シーラントだけに問題があるということではない場合もあります。と言うのもチューブレスレディのシステムとしての気密性が低い場合もシーラントが早く乾く傾向にあります。例えば前述のようにタイヤ自体の問題、リムとの嵌合、バルブの取付、リムテープの張り方等の様々な問題があります。

ですので期間だけみて早く乾くからシーラントがダメ、と決めつけるのは良くない場合が意外と多いです。
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※タイヤからのエア漏れ例です。

②パンクの修復能力

シーラントに求められるのはいざという時、もしもパンクをしてしまった時の修復能力、つまりパンクによる減圧を止める性能です。せっかくシーラント入れているのにパンク穴を塞ぐことができなければ入れている意味が半分なくなったようなものです。

なぜ重しにもなるであろうシーラントをわざわざ入れているかと言えば、それはもちろん前述のエア漏れを止める理由もありますが、ちょっとやちょっとのパンクなんか気にせずに走るためということもあります。レースの場合などは特にですがパンクもしたくないですし、ちょっとやちょっとのパンクぐらいで止まりたくありませんし止まったら負けます。
クリンチャーの場合は小さな傷でもあっという間に走行不能になりますが、チューブレスレディでは気が付かないぐらいのこともあるぐらいです。チューブレスの強みです。

またパンクを塞ぐ性能というのは完全に止めるだけではありません。これも非常に重要なところですが、もしも大きな穴が空いてしまった場合はというと、どれだけ走れるのか?どれだけ完全に空気が抜けるまで時間を稼げるのか?ということも非常に大切です。

このぐらいの大きさの傷でも安全に止まるまでの時間をできるだけ長く稼げることこそ、TLRの大きなメリットの一つでもあります。


③耐久性(どれだけ鮮度を保てるか)

毎度毎度記載をさせていただいていることですが、シーラントはナマモノです。
シーラントは鮮度が命です。
ですので実際にタイヤ内部で1ヶ月とかで乾いてしまうような製品は、お世辞にも実用的とは言い難いです。
タイヤの中でどれだけ鮮度を保てるのか?要は乾いたり、劣化したりせず性能を発揮し続けられるのか?というのとても大切なところです。

基本的にロード用のチューブレスレディのシステムは高圧運用、そしてシーラントの量も少量での運用となりますので、シーラントにとってはかなり過酷な状況になりやすいということです。

メンテナンスがめんどくさい場合は、シーラントの量を増やすことでメンテナンスの頻度を少なくすることができる場合が多いです。逆にぎりぎりの少ない量の場合は、メンテナンスの頻度が上がる可能性が高いです。
ロードではMTBよりもシーラントの期間が短命になるのは単純に量が少ないから、そして空気圧が高圧だからということが多いように思えます。

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※2~3ヶ月は普通に持ってほしいものです。

④メンテナンス性
メンテナンス性も重要なところです。
シーラントはある程度の期間が経ち、乾き切る前に入れ替える作業が必要です。乾き切る前に、というのが超重要です。もしくはめんどくさければ追加のいわゆる追いシーラントをするという方法でも何もしないよりかは全然良いです。

タイヤを外した際には、再び組む前にタイヤのビード部やリム側もできるだけきれいにして組み付け直したほうがトラブルが少ないです。ですが、実際には少しぐらいであればシーラントカス等の異物を噛んだとしても、問題がない場合もありますが、きれいにできるのであればできるだけきれいしたいものです。

2度目以降の組付けの前の掃除では実際にこびりついたシーラントカスを落とすのですが、できるだけ簡単に落ちたほうが良いです。
再組み付け時にシーラントカスが頑固すぎて、全く落とせずに苦労をするようなものは、お世辞にもメンテナンス性が良いとは言い難いです。得にビード部にガビガビのシーラントが固まってしまってるとどうしても嵌合に影響が出てきてしまうようにも思えます。

しかしです。これは逆に考えると、ということのなのですがゴムに密着し、もう癒着するようにガッチリと一体化するほうがパンクの修復能力は高く、再びパンクから吹き出しにくいというジレンマのようなこともあります。
ですがワタクシの経験上、パンク穴の修復はシーラントではなくパッチで行ったほうが確実なので、出先ではシーラント、戻ってきたらパッチという使い方ではやはりごりごりに固着しないほうがありがたく思います。

これも何をもとめるのか?というところでバランスが難しいところです。

またメンテナンスの際にはこの様になる場合もあります。

タイヤ自体が内部の乾き気味のシーラントで張り付いて剥がれなくなってしまうことがあります。
こういったシーラントもお世辞にもメンテナンス性が良いとは言い難いところです。

⑤性質
最後は性質です。
性質とはなかなか難しいところですが、触った感じ、感触です。

シーラントにはドロドロのものからサラサラ、粘度の差もありますし、触った感じも差がある印象です。
個人的にはいまいち良くないと思うシーラントは油っぽさの強いシーラントです。
シーラントが付着した際に、拭い取っても油分が残るような感触があるものです。
こういった油っぽい系のシーラントは、乾きにくい場合が多く鮮度は保ちやすい反面、以下のリスクが高いと感じております。
リスクは2つあります。
1.もしもパンク等でシーラントを噴いた際にリムブレーキでリム、ディスクブレーキでローターやパッドに付着したら、ということを考えるとあまり好ましいことではないのではないかと考えております。
(これらの部分は構造的に付着しにくい部分ではありますが、リスクが0なわけではありません。)

2.パンクをしてシーラントで止まらなかった場合、油っぽいことでタイヤが滑りチューブを入れたりする作業がしづらくなります。
これは地味に嫌な印象が強いのですが、とにかく拭ってもヌルヌル感が抜けないのでタイヤが滑ってチューブを組み込む際に作業がし辛いのです。
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▶まとめ
ロードバイク用のチューブレスシステムはまだまだ発展途上だと思います。
それでも一昔前のTLRをシステムと比べてもかなり良い方向へ進化しています。
タイヤだけではなく、シーラントも確実に進化をしております。
もっとより良いシーラントが出ることも、チューブレスのデメリットを減らすことに繋がると考えております。
またチューブレスをまだ苦手とするお客様の意見も少なくないのも、製品の問題もありますししっかりとした情報や技術を伝えられないこともあるのではないかと考えております。
どちらが絶対に正解であり正義ということではありません。双方のメリット・デメリット、知識をしっかりと理解した上で選択をするのが良いと思います。

ということで今回はTLR(チューブレスレディ)の最重要アイテム シーラントに求める5つの性能とは!?というお話ですが、シーラントがもっと良くなることでTLRの使い勝手はもっともっと良くなる可能性を秘めている。メーカーさんお願い致します。そんなお話でした。
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