ちょっと良いチューブと言えば一昔前はラテックスチューブでした。
ラテックスチューブはしなやかに動く一方、空気の抜けが早かったり熱に弱いという欠点があります。
そして昨今はTPU(熱可塑性ポリウレタン)のチューブをよく見るようになりました。従来のブチルチューブやラテックスチューブと比べてもお値段はかなり高額でラテックスのようにデメリットもありますが、その重量は圧倒的な30~40g前後と脅威の軽さを誇ります。

しかしです。
問題がないわけではありません。それは組付けの際にダメにしやすい、つまり組付け難易度が高いということです。これは軽量ブチルの代表的なR-AirやSOYOのラテックスチューブなども同様です。

極厚重量級頑丈チューブと比べても、こういったある意味特殊なインナーチューブの取り扱いが繊細なのは、チューブ自体だけではなく、バルブの根本付近であったり、バルブの接着部も基本的にかなり弱いものが多いです。
TPUに関してはまだまだ出始めということもありますし、物によっては品質的な問題もあるとは思いますが、組付けの際にうまくつかずに負担をかけてしまっていることもないとは言い切れない場合もあります。

基本的にTPUでもラテックスでも軽量ブチルでも、重量級ブチルだろうが(笑)交換方法は一緒です。ラテックスだから破れた、、、というのは多分ラテックスが悪いわけではありません。どんなチューブを使用しても手技によるミスは極力減らしたいものです。
ということで本日はTPUチューブ等のチョット良いチューブでも失敗しないロードバイクのタイヤ交換時のポイントのおさらいです。

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▶タイヤレバーに関して
まず本題に入る前にですが、基本的にクリンチャータイヤの場合はレバーを使わずにはめたほうが良いというのは教科書的なお話です。
しかしです。リム等にレバー禁止の制約がなければ絶対に使ってはいけないわけではありません。
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※最近のディスクブレーキ用のリムはタイヤレバー使用禁止のものもありますので、要注意です。

これらがない場合は、レバーを使うことで使わないよりもスムーズに、きれいに入れられるのであればレバーを使っても問題ありません。

レバーを使うこと自体がいけないことではなく、タイヤレバーを間違った使い方をすることで、チューブやタイヤ、またホイール等を傷つけてしまうことがあるということです。

とは言ってもほとんどの場合はコツを掴めば、レバーが不要です。レバーを使わない方法をしっかりと練習するのが良いです。またいきなり出先でのパンクで、というのはなかなか難しいと思いますので、時間があるときに家で練習をしておくのが良いと思います。


▶チューブレスリムの構造を理解する
最近のホイールはクリンチャーリムではなく、チューブレス対応のリムがかなり増えました。というかどこのメーカーも純粋なクリンチャーリムは密かにかなり少なくなっています。
というのもチューブレス対応のリムはクリンチャーも使えますが、クリンチャー用のリムでチューブレスは使用することができません。

ということは、です。
従来までのクリンチャー専用のリムと同じ組み方では、組みづらいことが多いはずです。
新しくチューブレス対応のリムの組み方を学ぶことで、クリンチャーでも取り付けが上手くいくと思います。

ということを踏まえた上で本題へ。

▶インナーチューブには空気をすこしだけ入れる
インナーチューブは空気が全く入っていない、ぺたんこのままリム内に収めようとすると、ねじれヨレたり、曲がったりして収めづらいです。特にTPUはペラッペラです。(イメージ的にはちょっと厚めのビニール袋のようなものです。)きれいに然るべき場所に収まってもらうためにも必ずリム内部に落とし込む際には少しだけ空気を入れておきます。これによってねじれ、曲がり、噛み込み等リスクを極力減らすことができます。
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ただし入れすぎには要注意です。あくまでもシワシワによれない程度です。
またバルブ付近は驚異的に弱いと思って取り扱います。下手したら軽く空気を入れるためにバルブにポンプヘッドを取り付ける際に、少し変な力が加わるだけでも破れることがあります。従来のブチル等の8倍気をつけます。


バルブをリムに差し込む
まず第一関門です。
片側のビードをリムにはめた後、チューブのバルブをリムのバルブホールに通します。
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この際にはしっかりタイヤをめくって超絶優しく、まっすぐ丁寧に差し込みます。
新品のタイヤは硬い場合がありますが、それでも絶対にバルブをグリグリ突っ込んだり、ひねったり、変な力が加わらないように気をつけます。



チューブをリム内に移動させる
めんどくさくて一気に行く場合もありますが、確実な作業のためには絶対に飛ばさないほうが良い工程です。
①バルブが通ったらタイヤ内にチューブをタイヤ内に均等に収めます。
②均等におさまったら次はリムの内側にチューブを入れていきます。ポイントとしては滑り込ませるようなイメージです。この際にリムに傷があったりするとチューブを引っ掛け傷が付きます。
滑りが悪くても優しく、少しづつでも確実にリム内に移動させます。
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この作業はチューブにほんの少し空気を入れたまま行います。
空気が入りすぎているとうまく移動できない場合もありますが、逆にチューブに空気が入っていない状態、ぺったんこの状態では非常に難しいです。
リムに収まると②の状態になります。
②の状態になってから、残りの片側のビードをはめていきます。


バルブ付近からはめる

絶対ではありませんが一例です。
チューブがきれいにリム内部に収めることができたら、次はバルブ付近から取り付けます。
バルブ付近を先にはめるのには理由があります。
最もきれいにはめたい部分、最も変な負荷をかけたくない部分がバルブだからです。
場合によってはタイヤの最後が超硬い場合もあるかもしれませんので、その超硬い最後をバルブ付近ではめたくないからです。
繰り返しになりますのでバルブ付近はかなり弱いものがあります。
あくまでも優しくです。
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②の状態では不十分です。
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②の状態から本当にかるーくですが、バルブを押し込んで上げるとビードがリムにスッと入ります。。

バルブ付近を確実に入れてから反対側に向かってビードをはめていきます。

最後が硬い時は寄せると落とす
ビードの最後が硬い場合があります。
その場合はタイヤを寄せていきます。

①センターに落とす
これは基本的にチューブレスの際に使う方法なのですが、リム構造が同じであればクリンチャーでも使えます。
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はめたい方のビード(画像では右側)をセンターに落とすことでタイヤがハマりやすくなります。

②タイヤを寄せる
少しずつですが、タイヤをもみつつはめたい部分に向かってタイヤを寄せていきます。
上の①の方法と合わせて行うのが良いです。
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▶それでも硬い場合
①少しづつ空気を抜いてみる

あまりにも硬い場合は、この最後の最後で少しだけ空気を抜くのがポイントです。
完全に抜いてしまうと最後で噛み込んでしまうことがあります。特にしなやかなチューブは要注意です。少し抜いてチャレンジ、ダメならもう少し、という感じに完全に抜けきる前にハマるのが理想です。

②一気にいこうとしない
本当に左右少しづつです。
一気にはめようとしても固くて入りません。あくまでも少しずつ、少しずつはめていくことで、最後もパシッとハマります。


▶空気を入れる前に
さあこれてOK、ということではありません。
空気を入れる前にも大切なポイントがあります。
①チューブの噛み込み確認
全周にわたりインナーチューブの噛み込みがないか確認します。
この際の噛み込みがあると、空気圧が上がった瞬間にパンクします。

この噛み込みのチェックの際にインナーチューブに軽く空気が入っている場合は、タイヤをもんであげることで多少のヨレやよりを取ることもできる場合があります。
あくまでも軽くもんで上げると良いです。

②もう少しだけ空気を入れて揉む
もう少しだけ空気を入れて再度もみます。
このもみでヨレやより、偏り等を減らす目的だと考えております。

③空気を入れる
最初だけではなく、実際に空気を入れる際にも注意があります。
バルブは基本的に弱いです。

バルブナットで固定されていない状態で、ポンプヘッドを力任せに押し込んだりすることでバルブの接着が破れたりすることはよくあることです。特にエアーが抜け気味の際には要注意です。
力を入れてバルブに押し込むような構造のポンプヘッドは、構造上バルブにか負荷がかかりやすいです。

バルブ付近は異常に弱い、ということをしっかりと忘れないように、最初だけではなく日頃の取り扱いも優しくするのが良いです。


▶まとめ
チューブの交換はできたほうが良い整備技術ではありますが、毎回毎回きちんと手順を踏んでやることで例えば出先でパンクしてしまった時も慌てずにいつもの手順通りできるようになれるはずです。
出先でのパンクは、例えばせっかくチューブを交換しても噛み込んでしまい、またパンク、、、よくあることです。
そんなときは一呼吸、もう一回確認をして、急がば回れの精神で、これはとても大切なことです。

入らないタイヤを無理やりレバーで押し込むのではなくて、リムの構造を考えタイヤを寄せたり、チューブを均等に入れていくことできれいにそこまで無理をしなくともつけられる場合が多いです。

また今回主役の軽量チューブ等の薄いチューブは特にですが擦れたり、ムリに入れるとそれだけでダメになってしまうことがありますし、バルブの根本に変な力がかかって根本からエアー漏れがおきたりもします。
分厚いチューブだから、ということではなくどんなチューブを使用していても毎回確実な作業を行うことで、TPUだから極薄ラテックスだからということでの失敗を減らすことができると思います。
ある意味チューブ交換も練習あるのみです
ということで今回はTPUチューブでもタイヤ交換で失敗しないためのポイントを解説、そんなお話でした。

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