前回の記事はこちらからどうぞ。


昨今急速に増えてきたケーブルやホースの内装システムです。
内装仕様は見た目的にスッキリするだけではなく、空力的にも有利になったり、メンテナンス性は落ちる部分と上がる部分に別れたり、メリットデメリット双方あるということです。

前回は主にヘッド周りの内装のお話でしたが、今回はヘッドよりも先のフレームを中心にした内装事情についてのお話です。
ということで今回は機械式12速の105の登場を期待しつつ、ケーブル・ホースの内装システムの構造と種類 ~フレーム編~、まだまだ頑張る機械式!少々ダラダラと構造について書いてみようと思います。そんなお話です。

image140507

▶フレーム内装化
5~10年前はほとんどのロードバイクがリムブレーキのモデルでその次代は主にシフトケーブルとリアブレーキケーブルの内装化が進みました。
しかしフレームとは反対にハンドル周りの内装化は進みませんでした。
それは今ほど空力の重要性が問われていなかったのかもしれません。
またフロントブレーキはブレーキまでの距離が近いのでわざわざ遠回りをしてまでもアウター一本を内装するメリットが、、、ということもあったのかもしれません。

しかしです。
その後油圧ディスクロードの急速な増加により、フレーム内装が進んでいきます。
これにはいくつか理由があると考えられます。
①空力性能を上げるため
あんな細いホースやケーブルの内装化でも空力特性を向上させることができ、結果的に速く走ることにつながるということが技術の進歩で明確にわかってきたからかもしれません。

②油圧ブレーキ化でブレーキ本体までの距離が伸びたため
そもそも油圧ブレーキ本体の取り付け位置がリムブレーキと違い、ディスクブレーキの場合はフロントフォーク先端やリアのチェーンステー最後方に位置します。つまりホースが長くなります。
この物理的にも長くなったケーブル・ホースをどうするか?ということで最初はフロントフォークの外側に固定しているモデルがありました。その後フロントフォークに内装させるようになり、すっきり感が増していきます。
しかし進化はそれだけでは留まりませんでした。更にフォークから入りコラム内部も通し、更にヘッド周りを内装化設計にすることでフル内装が可能になりました。これはやはりヘッドパーツやハンドル内装が可能になったおかげ、という影響が大きいと思われます。

③油圧ブレーキ化でケーブルの取り回しによる引きの重さを考慮しなくて良くなったため
インナーケーブルが行き来する機械式ではないので、ホースが多少カーブがきつくなったとしてもケーブルで引くよりも影響が少ないのもあるかと思われます。


▶フレーム内装の種類
①前後ブレーキ ホース
主に2種類に分けられます。
フォーク部分にだけ内装する場合、フォークからコラムまで内装の2種類ですが、後者の場合はフル内装になる場合が多いです。
先程も少し書きましたが、ブレーキ本体の位置が遠くなったことによって、ホースの取り回しを考える必要が出てしまったということです。

少なくともフロントフォーク内部、リアはダウンチューブからフレーム内部をブレーキホースが通る場合が多いのも、外に出すことによるメリットはほぼないからだと思われます。
image140507
※画像の左側がフル内装、右側のバイクはフォークからホースが出るセミ内装使用のような構造です。

当然この場合は一部ホースが露出しますし、リアは再度フレーム内に入りフレームを通りリアのブレーキまでホースが伸びます。

②シフトケーブル
シフトケーブルの構造はなかなかに悩んだと思います。
というのもシフトケーブルはアウターケーブルがなくインナーケーブルのみの部分(フレーム内部等)はケーブルが常に張られテンションかかっている、つまり直線である(BB下のケーブルガイドのカーブは除く)ということす。

フレームの内装シフトケーブルルーティングではよくある構造で、フレームに入る部分(アウター受け)からBB下のケーブルガイドまで最短距離でインナーケーブルが通ります。
image136622
つまりこの構造の場合は、フレーム内のインナーケーブルはフレーム侵入口(アウター受け)からBB下のガイドまでまっすぐないとダメ、という絶対的な制約があるということです。アウター受けがありフレーム内はインナーケーブルのみになる構造は、この制約からは逃れることができません。

フレーム内は基本的に張られたシフトインナーケーブルが直線的に存在しますが、通常のリムブレーキであればフレーム内部のシフトケーブルと干渉することはなく問題がありませんでした。
しかしリムブレーキでも一部例外があり、リアのアンダーBBマウント方式のダイレクトマウントの場合で内装仕様の場合はシフトケーブルとブレーキアウターが絡まったり、干渉する事がありました。通常アンダーBBマウントはフルアウターで組むことが多く、ピンと直線的に張られたシフトインナーとある程度余裕を持ったブレーキアウターの相性はあまり良くなかったのかもしれません。
逆にアンダーBBマウントでブレーキもアウター受けがあるモデル(フレーム内部でインナーのみになる構造)の場合は、アウター受けの角度設計が肝のようになっていてきれいに組めばOKですがやはり組付けや組み換えの際に絡んだりすることによる不具合も少なくはなかったように思えます。

このいわゆる”フレーム内部ゴミゴミ問題”(笑)は油圧のホースでも同様に起きています。
仮にです。もしもインナーケーブルがフレーム内部でリアの油圧ホースと絡んでいたら、、、ということです。シフトをするたびに、動くシフトのインナーケーブルが油圧のホースを傷つけたら、という不安があります。

ではフレーム内部でホースを傷つけたり、絡んだりを防ぐための方法とは?要はフレーム内部のインナーケーブルを直線にしないための方法としてはどうするかというと、フレームにシフトと検証しないような設計のホース専用のトンネルを作るか、シフトもフルアウターで組むということです。
フルアウターで組めば多少曲がっていようがカーブがあろうが、下手したらグルングルンに絡んでいても(良いわけではありませんが)、理屈上は動かせることができます。

すこしお話はそれますが後期型の11速(Rがつくモデル)からフロントディレイラーもフルアウターに対応になりました。当時はフルアウターそんなに使うか?と考えていたこともありましたが、今となってはその理由が明確になっているということです。

✓フルアウター構造のメリット・デメリット
ではフルアウターのメリット・デメリットです。
フルアウターのデメリットは、、、
・物理的に重量は重たくなります。
・シフトアウターケーブルの長さが1パッケージで足りない場合もあるかもしれません。
・内装の際にコラム部を通すのがかなり難儀な場合もあります。1.5サイズであればまだ余裕がありますが、通常のD型コラムの場合はかなりキッツキツの場合があります。急すぎるケーブルの角度はインナーケーブルが切れやすくなり、寿命が短くなる傾向にあります。
・フレーム内で振動で暴れる場合があります。ある程度余裕をもった長さで組めるからならではの問題です。これは結構根深い問題で現在はふわふわのウレタンチューブなどで物理的にカタつく音を抑える場合が多いです。

では逆にフルアウターのメリットはというと、意外としっかりとあるのです。
・アウター受けの破損や故障、グロメット類の不具合による変速不良等の悪影響が出ません。極端な話アウター受けの専用パーツやフレーム側のアウター受けが破損した場合組めなくなってしまうことがあります。しかしフルアウターであれば穴さえあいていれば、むしろ最悪穴がなくても組めないことはありません。電動専用フレームであっても、フル外装仕様で組めば組めなくはありません。
PXL_20230110_001936072
時代の流れに逆らった??フルアウター外装仕様です。

・インナーケーブルのみの交換が容易
インナーケーブルのみの交換であればスッポ抜いて入れるだけ、という作業になりますのでアウターがハンドル内を通っていようがフレーム内を複雑に通っていようが単純な作業です。

つまり現在の油圧のロードバイクでは特にですが、シフトのフルアウター構造はリスクを減らせる、ということもあり採用されているフレームが意外と多いです。
またフルアウターだから悪いということではないのです。これはリアブレーキのフルアウター仕様もそうですし、ロードバイク以外では抜群の耐久性を誇り過酷な使い方をされるママチャリなんかも外装変速機の多くはフルアウターで組まれています。



▶電動フレームとは
現在密かに増えてきたのが電動専用フレームというものです。
なにをもっての電動専用フレーム?ということですが、要因は1つだけです。
それは何かというと、シフトケーブルを通す構造がない、これです。

機械式で組むためには物理的にシフトケーブル(アウター&インナー)が通るための構造が必要になります。そのためにはヘッド周りでは主に2つの構造があります。
①ヘッド部やダウンチューブにシフトケーブルの侵入口がある
②ヘッド部にケーブルを内装できる構造
そしてディレイラー直前にもアウターやインナーが通すことができる構造があること、機械式で組むためにはこれらをクリアする必要があります。

具体的に見てみます。
image161697
この構造の場合は、ホースは通っていますが物理的にシフトアウターは通りません。
ではどうするのか?というと赤丸です。フレームに空いた穴を使いフレーム内部にシフトケーブルを通します。ですのでこちらの構造は電動、機械式両用フレームとなります。(これ以外にもBB下の問題もありますがさほど重要ではありません)だだしこの構造の場合のシフトケーブルはヘッド周りは外出し、ということになります。

ではフル内装で組める両用フレームはというと、上部1.5サイズのベアリングにコンプレッションリングがだいぶ広く開いている構造の場合が多いです。
PXL_20230502_051156250 (1)
これだけ広さがあれば通しやすいかと思われます。
こういった問題からも両用フレームは1.5の上下同径のヘッドが主流になってくると思われます。

またもう一つディレイラー直前の問題もあります。
電動専用フレームはディレイラー直前のフレームからケーブルが出る出口の部分が狭かったり、フロントは角度が厳しかったり、そもそもフロントに関しては出口自体が電動用しかない場合もあります。
image161731
※電動用の穴では機械式は構造的に組めません。
これらの設計もあって、電動でしか組めない電動専用フレーム、ということになります。

また現在はSHIMANOのコンポはハンドル周り前後とディレイラーは無線接続ですが、前後ディレイラーとバッテリーはケーブルで繋ぐセミワイヤレス方式を取っています。
ですのでフレームメーカーもエレクトリックケーブルを通す道、Di2ケーブルの出口を設計していますがそれこそSHIMANOがフルワイヤレス使用になったらこれらの穴もなくなると思われます。

しかし油圧のホースは通さざるを得ませんので、そこは絶対ですが。。

▶まとめ

特にまとめることもないような雑記的なお話ではありますが、フレームの内装化はその時代のトレンドや諸々の規定、そして科学の進歩にもよって変わってくるものだと思います。
またそれだけではありません。肝心要は世界のSHIMANO社です。なぜかと言えばコンポの設計に合わせたフレーム設計が必要だからで、現在はコンポの企画に合わせたフレーム設計となっている場合がほとんどです。

それにしても現在のカーボンフレームの価格は上がる一方、お値段を抑えた新興メーカーの成長も目まぐるしいです。今後は、というかむしろ現在でももうすでに2極化が進んでいるようにも思えます。
今後このまま高くなり続けるのか、どうなってしまうのでしょうか。。。

ということで今回はケーブル・ホースの内装システムの構造と種類 ~フレーム編~、そんなお話でした。

+++++++++++++++++++++++++++
FF-Cycle(エフエフサイクル)
〒262-0019
千葉県千葉市花見川区朝日ヶ丘1-21-2
※当日の受付は18:00までとさせていただきます。
作業は18:00以降も行います。
TEL:043-376-1121
(一人運営のため整備中、接客中等 電話を受けれない場合もございます。その際はお時間を開けて再度ご連絡を頂ますようお願い申し上げます。)
E-Mail:ffcycle@outlook.jp
※ご連絡をいただく際には
・お名前
・ご連絡先
・ご希望の整備内容
・ご希望の日程
こちらをお申し付け下さい。
また整備内容によっては、車体メーカー、モデル名、ホイール、コンポーネントなども合わせてご連絡をお願い致します。
ロードバイクの健康診断・カスタマイズ相談的なこともお受けいたします。
当店の特徴・詳細ははこちらから