前回のお話しはこちらからどうぞ。

前回のお話しのまとめです。
転がり抵抗がもっとも軽い傾向にあるのはラテックスチューブ、そして僅差で超軽量のTPUチューブ、ブチルチューブは比較的転がり抵抗が大きめ、ということでした。更に最近では重量よりも転がり抵抗や空力のほうが速さへの影響が大きい、というお話しでした。

では実際の3種類のチューブの特徴や使ってみての主観的な話を織り込んでの総まとめ的なお話し、TPUチューブ、ブチルチューブ、ラテックスチューブの違いとまとめです。

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▶メンテナンス性
まずは走り出す前のバロメーター的な、メンテナンス性です。
一番最初に組み付け、という作業が入るのは必須です。

ブチル ★★★
ラテックス ★★
TPU ★

✓組付けに関して
基本的にはブチルであろうが、超軽量のTPUであろうが取り扱い方法に大きな差はありません。ブチルだから適当に作業をしても大丈夫、ということではなくブチルであってもTPUや軽量ラテックスを扱うように優しく確実な作業をすることはとても大切なことです。

これを踏まえてもメンテナンス性は圧倒的にブチルの勝利です。
というのもブチルの組付けは初心者の練習にも使われるぐらい物理的に強くできています。
またブチルは長年の歴史というものがあり、各社技術の積み重ねも十分なのだと思います。

ラテックスはブチルチューブよりもしなやかですので、組み付け時には少し注意をする必要があります。特にチューブ本体もそうですし、バルブの接着部等はブチルと比べてもやはり弱い傾向にあります。

TPUは更に注意が必要です。ラテックス以上に薄く挟まりやすいので、噛み込み等には要注意です。
ですので必ず空気を少量入れて組み付ける、絶対に引っ掛けない、バルブは常にリムに垂直になるように扱う、等の注意点があります。
とは言ってもこれらはどのチューブでも同じことで、ブチルだから適当で良いということではありません。

またTPUはまだまだ歴史が浅いということもあり、初期不良的な事例があります。この判断も必要になりますので、メンテナンス性が難しくなっている一つの要因でもあります。

✓パンク修理
そしてパンクの修理です。
ブチルはそこまで難しくありませんし、下手したら100均で売っているようなパンク修理キットでも普通に直すことができます。ラテックスも比較的難しくありません。
ではTPUはというと、完璧な修理は難しいと思われます。ワタクシ自身も様々な種類のパッチや接着剤等を試しておりますが、未だ完全クリアとは。。。。
激安のTPU、CYDYとかであれば1000円/本なので不安な修理を頑張るぐらいなら、新しいのに変えてしまったほうが良いと思います。その際はパンクの原因をしっかりと判別しておかないと、また同じパンクをしてしまう可能性がありますので、要注意です。

✓寿命
教科書的にはどのチューブもタイヤ交換ごとに、リムテープとチューブの交換を推奨しております。
ということは大前提として、3種類のチューブの寿命です。
ブチルが一番長く、ラテックス、TPUの順に短いのではないかというのが今のところの結論です。
もちろん各チューブの種類によっても差が出ることは多々あります。

※ちなみにどのチューブでもそうですが、組付け前に高圧を入れるのは原則NGです。最近ではTPU何かには注意書きとしてありますが、TPUだけの話ではありません。軽量ブチルやラテックスでもタイヤに収める前に高圧を入れることはNGです。

▶空気の保持力
ブチル ★★★
ラテックス ★
TPU ★★★

経験上、TPUとブチルは同様か僅差です。
1週間ぐらいしたらぼちぼち足そうかな、というぐらいの運用でも問題なく使えます。
空気の保持力はTPU、ブチルの圧倒的な勝利です。

一方のラテックスは空気圧の自然減圧がとても早く、薄ければ薄いほど(軽ければ軽いほど)自然減圧は早いイメージです。おおよそですがよくあるラテックスチューブ(Vittoria製)で24時間で最大1BARは抜けます。徐々に空気圧が減ってくるに従って減圧量は減ってきますが、それでも3日も空気を入れなければそのまま走ることは難しいぐらいです。
ラテックスは走る前の空気圧チェックは必須です。

ちなみにTPUの注意点として自然減圧が早いと感じる場合、パンクをしている可能性が高いです。
というのもTPUは極微細なリム打ちパンク等が非常に分かりづらいのは、極小さなパンクの場合は空気が抜ける速度がとても遅いからです。原則TPUは自然減圧がかなり少ないですので、やはり早いと感じた場合はパンクを疑うのが良いです。


▶耐パンク性能
ブチル ★★
ラテックス ★★★
TPU ★~★★★??

TPUに関してはまだまだ不明瞭な部分が多いです。
それでもTPUチューブは穿孔に関しては強いという話もありますが、TPUチューブ自体かなり様々な厚みがあります。厚みによっても強さは変わってきますが、今回は30~40g程度の一番多いTPUチューブを元に考えました。それでもその重量と引き換えに、物理的に圧倒的に薄いのはTPUの特徴であります。リム打ちパンクはし易いです。

穿孔パンク、異物が思いっきり突き刺さるパンクですが、これはおそらくどのチューブでもパンクしてしまいますので、そこまで大きな差はないと思われます。

カット系に関してはTPUは物理的に強く、ラテックスはしなやかで穴が空きにくいという話です。この鋭利なガラス片や鉄片等がタイヤを貫いてチューブに直接あたった場合の耐パンク性能、このことをTPUがパンクに強いと言っているのではないかと思います。

ですのでパンク耐性とは言ってもどんなパンクに対しての耐性か、というところ差が出ると思われます。

釘・ネジ等のものが深く突き刺さる際 → どの種類のチューブでも同じ
カット系、細かな異物系パンク → TPU、ラテックスが強い傾向
リム打ち → TPUが弱い
ということになります。


▶速さ、走りに関して
最も重要なところではないかと思います。
ブチル ★
ラテックス ★★★
TPU ★★
この評価は何を求めるかにもよって差が出ると思います。
とにかく走りに軽さを求めるのであれば、TPUがトップに出ます。
しかし今回は総合的な速さ、ということに着目しての評価とさせていただきました。

転がり抵抗が最も軽いのはラテックスで、僅差でTPUチューブです。
しかしこの両者で圧倒的に違うのが乗り心地です。
同じ空気圧で走ったときにTPUチューブのほうが明らかに乗り心地が硬いです。空気圧を下げようにもTPUチューブはリム打ちパンクのリスクが高いのでラテックスほど下げることができません。
軽さと引き換えに、タイヤのしなやかさをトレードオフしているのがTPUです。

きれいな路面であればTPUはかなり有利です。
しかし実際に公道を走るときれいな路面は少なく、ボコボコだったりギャップがあったりということはよくあることです。こういった状況下での速さ、ということを考えるとやはりラテックスです。
空気圧の設定もそうで、転がり抵抗を下げるためには空気圧が高いほうが転がり抵抗は低いです。(5.5BARと6.9BARで1割以上の差)
ですが、どんなに転がり抵抗が低く走りが軽くても車体が跳ねてたりタイヤがしっかりと路面を掴んでいないとき、トラクションが抜けている時は前には進みませんし、乗り手も跳ねているときはパワーがかけづらいです。こういった細かなロスの積み重ねを考えると、多少の重量差よりもしなやかさを重視したほうがタイム的には速くなる可能性が高い、というのがワタクシが実際に体感した話でした。


▶まとめ
前回の話でも出てきましたが、クリンチャータイヤを使用している場合、インナーチューブを交換することは比較的簡単にできるカスタムです。
しかしそのカスタムの効果は想像以上高く、空力等を犠牲にすること無く、転がり抵抗を軽減させる事ができるカスタムです。

しかしです。
注意点としてチューブの選択は使い方に合わせて適切なものを選択する、ということです。
というのも例えば24時間以上にわたって走り続ける必要があるブルベなどでも、いくら乗り心地が良く転がり抵抗が良かったとしても、空気圧を保つことができないのがラテックスの難点です。
またヒルクライムで有利になることもある軽さが有利なTPUチューブも、長い距離をのんびり走りたい場合、乗り心地の悪化は避けられない問題です。
選び方、とても大切です。

ということで今回はTPUチューブ、ブチルチューブ、ラテックスチューブの違いと特徴、そんなお話しでした。
参考サイト






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