下り坂や減速時に足を止めた時に出る音、ラチェット音です。
ロードバイクではリアハブに組み込まれている構造で、足を止めた時にはホイールがフリー回転をし、クランクを回すと動力が伝わる構造、ものすごく簡単に書くならば1方向には回転を伝え、逆方向には回転を伝えない構造、これがラチェット機構です。

このラチェット構造はリアハブに使われており、主に2種類の構造があります。
①爪式
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②スターラチェット式
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爪式はカンパニョーロ、マビックのFTS-L、最近のホイールではHYPERの2023以前のモデルやDRIVEもこの爪式を使用しています。
スターラチェットはDT SWISSで同じような構造は、マビックのInstantdrive360、それ以外ではHYPER3.0、YOELEOの最新のハブなどもこのスターラチェット方式を採用しています。

では双方のラチェットどんな特徴があって、どんなメリット・デメリット等があるのか、そんなお話にしてみようと思います。
ということで今回はラチェット構造、スターラチェットと爪式を考える、そんなお話です。

✓ラチェット音
基本的にスターラチェット式の方が音がうるさいイメージがありますが、爪式でもうるさいものはうるさいです。
スターラチェットは丁数が多い方がうるさいイメージがありますが、少なくないからといっても静かなわけではありません。

ハブにもよって差がありますので、どっちが絶対に、ということはないように思えます。
しかし双方ともにグリスが切れている状態、潤滑がうまくいっていない状態は特に音が大きい印象です。

またラチェット音はラチェット構造だけの影響ではありません。

✓足を止めた時の抵抗
足を止めた時の抵抗は原則、爪式の方が少なく感じることが多いです。
特にスターラチェットの歯数が多ければ多いほど、足を止めた時の減速感は強くなってくるように感じています。

というのも構造的に、スターラチェットは面が広い面積で擦れていること、またラチェット自体が左右に細かく動く際にも抵抗が生まれています。
これらの抵抗は爪式よりも大きいためか、足を止めた時の減速感の大きさにつながっていると考えられます。
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✓トラブル
構造的にトラブルに強いのは、、、というといろいろな意見はあるかと思いますが、爪式だと考えております。
というのもまず爪式ハブのラチェットのトラブルは実際にそこまで多くはなく、逆にスターラチェットのその構造上意外とトラブルが起きやすい印象があります。

①スターラチェットの不具合
スターラチェット式はグリスの種類が適切ではなかったり、グリスの量、またグリスの塗布場所を間違えてしまうことでいとも簡単に具合が悪くなる場合があります。特にDT以外のスターラチェットでグリスの詰めすぎや不適切な潤滑はギア抜けのような症状が起きることがあり、非常に危険を伴いますので要注意です。
また潤滑がうまくいっていない場合、異物が混入してもトラブルが起きますし、ほんのコンマ数ミリ以下の精度でも不具合が起きる可能性を持っています。
摩耗の影響もです。歯の山がすべてなくなることで歯が噛まなくなるわけではありません。こればかりはどのぐらいでというのは難しいですが、左右のスターラチェット部を押し付けるばねの力にもよって変わってくると考えれます。
このようにスターラチェット方式は意外とトラブルの元になることが多いです。
その不具合を長い年月をかけて洗い出しまくって研究に研究を重ねた構造がDTのハブです。

と、アウタートップでぶん回し、足を急に止めるとチェーンが暴れる現象、某選手のゴールスプリント後にチェーンが外れるあれです。あれも爪式だと起きずらい現象です。

②爪式の不具合
一方の爪式もカンパニョーロハブのように一本のスプリングで3つの歯を起こす構造は、ばねが切れたら終わりです。カンパのハブの爪構造からしてどうしても避けられない不具合です。

しかし最近の他社製品で、アレックスリムズのハブ等の各爪に独立したバネが付いている構造、これは意外とトラブルに強いです。
最悪板バネが折れたとしても、1本でも爪が生きてていれば走ることができます。
4つの内2つ破壊されているものも見たことがありますが、普通に走れていました。


✓乗った差
ほとんどわかりません。。。
とはいっても実際にワタクシ自身が使ってきた爪式ではカンパは若干の遊びの多さを感じましたが、すぐになれます。
HYPERの5°に1回かかる6爪式、スターラチェットの36T、52Tと使用してきた中で感じた差というと、変速時にタイミングがずれる ということです。足を止めた時の漕ぎだしの瞬間、遊びが少ないはずなので、トルクを抜く瞬間の遊びの少なさからの差だと思われます。
しかし実際にスターラチェット方式だから@Wアップとか、@㎞/h速くなった、ということはないと思っております。

ただし最初の方にも書きましたが、違いとしては足を止めた時の減速感がスターラチェット式の方が強く感じます。惰性走行距離は爪式の方が長くなると考えられます。

▶まとめ

現在その勢力をぐいぐいと伸ばしてきている中華系メーカーのホイールもこぞってスターラチェット方式へと変わってきております。しかし実際に乗っていい!ということを感じずらい、というのは正直なところです。

今回ご紹介をさせていただきました、スターラチェットと爪式ですがどちらが絶対に優れているというわけではなく、一概にスターラチェットだからよい!爪式だからよい!ということではなく双方にメリットデメリットがあります。
また一言でスターラチェットとはいっても、各社微妙に違う構造をしているのです。例えですがスターラチェットには片側からばねで押す構造(シングルフロート)も両側からばねで押す構造(ダブルフロート)の2種類があります。ですのでスターラチェット”式”ではありますが、全部が全部同じ構造ではないということです。

ともあれまだまだ爪式に比べて、スターラチェット式は各メーカー技術が溜まりきっていない印象もあります。今後よりよくなっていくことを願いつつ、ラチェット構造、スターラチェットと爪式を考える、そんなお話でした。



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