ワタクシ自身、HYPERはリムブレーキ用の50mmの初期HYPER時代から2023も含めて使用してきた、思い入れの深いホイールです。その基本的な性能も高く、リペアパーツ類の充実、そして耐久性の高さも実績からわかっていることです。
そんなHYPERから満を持しての新モデルHYPER 3(ハイパー サード)が発表になったのは今年の春のことでした。(※HYPER 3は”サード”、SLC 3は”スリー”というのがメーカーとしての呼び方ということです。)
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WINSPACE社のホイール、LUN HYPERの新型の3のD45です。


WINSPACE JAPAN社から試乗用ホイールをお借りすることができました。
まずはHYPER3を見てみようと思います。


✓リム
まずその見た目です。
グラフィックが2種類でレーザーロゴと、ホワイトロゴです。
完全に好みの問題ですが、個人的にはホワイトロゴ一択です。
なんたってHYPERのロゴがよく目立って好きです。
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※左がホワイトロゴ、右がレーザーです。重量的な差はないようです(詳細は後述)

それとともにHYPERの代名詞的なあのバタフライエフェクトのリムデザインではなくなり、UDカーボン+塗装になりました。個人的にはあの柄がこれぞHYPER感がして好きだったので、正直ちょっと残念な部分でした。
HYPERはD45の場合は、薄い部分が指で強く押すと凹む感覚があり、最初の頃は少々不安をもっていたこともありました。だからといって通常仕様の範囲でそこが割れるということはありませんでしたし、ワタクシ自身お世辞にもきれいに使っているだけではなく、かなりはかなり過酷につかってきましたが問題はありませんでした。GCNがHYPERを実験的にかなり過酷に使用している動画もありましたが、極めて頑丈で、HYPERのリムはただのデザインのためだけの構造ではなかったということです。※ページ下部に動画がございます。
昨今の軽量ホイールでは意外と割れやすい印象があります。しかし最近の流れとしてTLRで低圧運用などもする場合もあり、リムの頑丈さというのも販売する側の人間としても自分で乗る側の人間としても、とても大切なことだと考えております。

では今回のUDカーボンへと変更になったHYPER 3はというと、リム全体にわたり凹む部分がなくなりました。このリムの変更はかなり大きな変更だったと思います。

ではリム形状はというと、そこまで大きな変更はないように思えます。
最近流行りのDTのリムのようなVUシェイプ(中太型)ではなく、Vシェイプのような形状です。
個人的には実際に乗ったモデルではVUシェイプが一番空力的に良かったイメージがあります。実際に乗ってみてどうか、楽しみです。
外幅は28.4mm、内幅も拡張され23mmです。
ということなのですが、実測はコンマ数mm広そうな(実測では28.6~28.7mmでした。)
使用可能タイヤサイズは25c以上ですが、リムとの兼ね合いを考えると新ETRTO基準タイヤで28cがベストマッチかと思われます。
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✓スポーク
スポークは大きな変更が加えられました。
VONOA製のワイドエアロスポークで5.2mmです。
スポーク数もフロントが20本ということで1本減りました。リアがは21本継続です。
フロントが20ということで、フロントに関しては両側タンジェントで組んであります。(リアはフリー側のみタンジェントで反フリー側はラジアル)
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イメージ的にはどうしても薄っぺらいスポークの場合は、通常の扁平スポークよりも横方向の曲げに弱いようなイメージがあります。ですので横剛性に不安があったのですが、代理店の方曰く全く問題ない、むしろ硬い。という回答でした。
ワタクシもその後組み付けてみたのですが横、、、超硬かったです。
最近のホイールの中でもトップクラスの剛性感です。

✓ラチェット
HYPERは2023までは6つの爪式でした。
今作HYPER3より、スターラチェット式に変わりました。
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プラネタリアギアラチェット、とありますが要はスターラチェット式だと思われます。
しかしこのラチェット、チタン製だそうです。
チタン製36Tのラチェットですが、基本的にロードでは36Tが一番バランスが取れていて良いような気がしております。というのも原則下りでは足をとめて空力を意識したほうが早く走れる場合もあります。そういったときの減速感の大きさ、そしてラチェット数の増加によるメリットを考慮しても、多すぎるラチェット数にメリット未だに見いだせておりません。

個人的にはこDTとMAVIC以外の面ラチェットはどうしても信用性がまだ、、、ということですがこれも実際に使ってみないことにあなんとも、

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ハブ形状はとても面白いです。


✓実測重量
では実測重量です。
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フロント:626g 

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リア:778g
※リムテープが含まれます。
公称値:D45(F46mm、R54mm)1367g±50g
実測値:1404g(+37g)
ちょっと公称値よりも重たい気もしますが、個体差でしょうか。

昨今は超軽量のホイールが増えてきています。
50mm前後とは言っても、1400gとなると「うっ」と身構えてしまう気がします。

✓タイヤ組付け
前置きはこの辺にしておいて組付けです。

WINSPACE社は試乗用ホイールにタイヤ(IRC製)がついた状態でお貸しいただけるのは非常に嬉しいところです。しかしせっかくですが、今回はインプレを正確にするためにいつも使用しているAGILEST FAST 28c + TPUチューブへと交換をしました。
タイヤの組付けのしやすさも問題ありませんでした。
そして空気を入れ、(CLですが)ビードが上がった瞬間の音 カンッ!という極めて高く硬質な音、これはかなり期待ができると予感しました。

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▶Lún HYPER 3 D45インプレ
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✓試乗環境

フレーム:WINSPACE SLC3
タイヤ:Panaracer AGILEST FAST 28c (クリンチャー)
チューブ:TPUチューブ (29g)
空気圧:前後5.0~5.2BAR
 
テストコース:距離40km以下(1時間程度)
主に平地基調、数十秒で終わる短い上りが何本かあるコースです。
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※テスト1日目のIntervalsのデータです。
基本的に短時間高強度でしっかりのった日、そして少し緩めに乗った日と2日間使用でのインプレとなります。

HYPER 3 D45を使用する前は、50mmハイトで実測値1336gのカチカチ系ホイールを使用していました。実測重量のHYPER3は1404gですので68gの差です。たかが68g、されど68g、侮るなかれです。前後に振り分けると34gずつということで、TPUチューブ1本分よりも重いです。
この重量増がどのような影響があるのか、重要な事です。


✓実走
広い通りに入る前、例のごとく軽く足を回しながらゆるい上り坂をゆっくりと上ります。
このときの印象ってものすごく大切で、多くのホイールはこのときに感じた印象から大きく変わることはないからです。

漕ぎ出しからすぐに感じました。これはちょっとよいのでは。。。という感触です。
”よい”というのも抽象的な表現ですが、
悪い感じがないような印象です。
気にしていた重さも重量だけで単純に比べてれば重いはずですが、乗った感じではそこまで大きな差はありません。ホイールの重量は増加したときよりも減少したときのほうが感じやすい気がしております。増加幅が大きくなると良い印象は有りませんが、微妙な差であればネガティブな印象は持ちづらいです。

ともあれ良い印象のまま期待に胸を膨らませつつ、広い通りに出ます。
ウォーミングアップも兼ねてまずはそこそこの速度まで上げてみます。
一定の速度まで上がった後、自分に合わないホイールであったり、調子が悪い日は自分で思っている以上に速度に対してパワーが出ていないことがあります。この時パワーをちらっと確認しましたが、パワーの出方は問題がありませんでした。(合わないホイールは想像以上にパワーが出ていなかったりします。)

巡航ではしっかりとした剛性感があります。
リム単体の重量が400gを切るような高剛性ホイールのように、めちゃくちゃ軽いわけでは有りませんが、よく進む感覚が気持ちが良いです。前へ前へとグイグイ進んでいくような感覚です。

それとともに感じたのが乗り心地の良さ、しなやかさです。
今まで使用していたカチカチ系のホイールではAGILEST FASTのTLRを使用していたのですが、HYPER 3のクリンチャーのほうが明らかに乗り心地が良く、タイヤがしなやかに動いているように感じます。クリンチャーでこの乗り心地か、というのが正直な感想でした。

ただしギャップを超えたときの衝撃や振動の角を丸くしてくれる一方で、うねりのように自転車がグッと持ち上げられるような動きをした時はしっかりと自転車ごとリニアに持ち上がります。おそらくホイール全体としての剛性の高さ、たわみにくさからの反応だと思われます。タイヤの選択や空気圧の調整はしっかりとしたほうが良いと思います。

パワーを抑えて走っている時の快適性は高いです。
高剛性で反応の良いホイールは乗り心地も硬い印象がありますが、HYPER3は強度を低く走っている時でもある程度の乗り心地は確保されているのがすごいと思いました。これが23mm内幅の影響か、極薄カーボンスポークの影響かは不明です。
ですので高剛性系のホイールで有りつつも、速く走るだけではなくサイクリングにも使えるような性能も持っていると感じました。

パワーを上げていきます。
速いです。間違いなく速さを感じます。
前述のようにパワーが低めの時は乗り心地の良さを感じるのですが、パワーを思いっきり上げていっても弱い感じも、剛性不足感は一切ありません。かなりしっかりと硬いです。
嫌な硬さではなく、テンポの取りづらい反発やタメ感もほぼなく、踏んだら踏んだだけ素直に前へ前へと進んでくれます。気がつくと速度が上がっていて、かつ乗り心地もよいです。
しなり系タメ感系のホイールからの乗り換えだと、回す感覚を掴むまで乗り方に苦労をするかもしれません。

ギャップを超えたり、一瞬の減速からグッ!と力を加えたときの反応、グイっと後ろから押し出されるような加速をします。縦剛性もしっかりとしています。

足を止めたとき、惰性の進み方も非常に良いです。
これらの動きはおそらくですが、ハブの良さ(ハブの精度や高剛性)からだと思います。足を止めた時、細かい路面の荒れ等による影響によって感じる減速感、回転の落ち込みを他のホイールよりも感じづらかったです。(リム重量の影響もあるのかもしれませんが)
これは柔らかめのフレームにWISHBONEを入れてガチッと固め剛性を上げた時のような回転の良さ、この感覚に近く感じました。
ハブ単体の重量は不明ですが、それでもハブは重量よりも回転性能であったり、剛性を重視したほうが良いというのも超一流メーカーも同じ考えのメーカーが多いことです。

高速域での風の抜け、非常に良いです。
極薄スポークは風を乱しにくく風を切るように進む、というようはお話を伺っていたのですが、その通りでした。高速域の巡航性能も非常によく、高速域におけるステアリングもふらつくこともなく、逆に重たくなることもなく極めてニュートラルで乗りやすいです。
では強風の場合は、というと前輪46mm、後輪54mmのリムハイトが効いているのかステアリングモーメント(ハンドルを取られる動き)は前後50mmと比べても穏やかです。
真横からの風に対してはある程度はハンドルを取られる感覚はありますが、それでも前後50mmと比べてだいぶ穏やかで乗りやすいです。突風に関しても同様でめちゃくちゃ取られる、ということでも有りませんでした。スポークがかなりワイドになり横風の影響を気にしていたのですが思いの外、気にならない程度の影響でした。
気になる点としては、斜め向かい風の際にリアが若干引っ張られるように感じた独特な感覚がありました。54mmもあるので、流石に全く影響がないことはないと思います。。。

最後は短く急勾配の感触です。
急勾配時はリアに想像以上の荷重がかかります。単純にリム、ホイール重量だけではなく、リアが弱い(ホイール剛性)と重量以上に走りの重さを感じることになりますが、嫌な重さを感じることは有りませんでした。

どうすればこのホイールの弱さがでるのかと、こじるように車体を振ってみたり、思いっきり踏み足で乗ってみたりしたのですが、パワー不足も相まって弱さを感じることは一切ありませんでした。
それどころか、どんなに思いっきり踏みしめても素直な反応でスッと前に出ます。
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やはり白ロゴのデザイン、好きです。

✓実走②
その後100km以上のライドで使用しました。
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※試走日のライド記録です。
長い上りでは有りませんが、ある程度上りも下りも含まれたコースです。
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HYPER3の感覚や先入観をできるだけリセットするため(自分の中でのインプレの確認の意味も含めて)に1日間を開けてから、再インプレのために練習でよく使うルートでのライドをしました。

走り始めてすぐに気が付きますが、やはり乗り心地が良いです。乗り心地というのもゴツゴツした振動衝撃の角を丸めてくれるイメージで、やはり今まで使用していたカチカチ系のホイール+AGILEST FAST TLRよりもFAST CLを使用しているHYPER3のほうが乗り心地が優しいです。この乗り心地の良さの要因は内幅の広さかスポークの影響かはやはり掴めませんでした。

そしてやはりホイール自体は高剛性なのですが、非常に乗りやすく感じパワーが出しやすい、かけやすい、回しやすいのもSLCとの相性もあるのかと思いました。
巡航も速度が上がってくると速度維持の楽さを感じました。イメージ的にはなんとも調子が良い日のような、弱い追い風が吹いているようなスルスル進む感覚でした。
当日は調子が良いように感じたこともあってか、半分ぐらい経ったときの数値で踏みすぎ傾向に感じましたが、せっかくなので燃え尽きてもいいかと継続して踏みました(笑)

前回の試走ではなったある程度の長さの下りですが、下りでは速度が上がるにつれて抜けの良さを感じました。そしてその速度感よりも特に優位に感じたのは回転の良さで、ホイールの抵抗が非常に少なくきれいに回転していくイメージでした。下りでの回転の良さは極薄スポークによる空力性能だけではなく、ハブの精度や剛性、リムの良さも関係しているのではないかと感じました。

続いて上りです。
最近はジャスト400gの軽量リムモデルやもっとリムハイトの低いDRIVE40D等を使用していた影響もあってか、上りでは軽さはそこまで感じませんでした。だからといっても重いとも感じることは有りませんでした。
HYPER3で走って通常インナーで上るような上りもアウターのままこなせた、ということがありました。昨今の高剛性のホイールはきれいに回さないと進みづらい印象をもっています。しかしHYPER3は高ケイデンスでパワーを出しても、ケイデンスを低めて踏んでもどちらでも進みます。どちらの乗り方でもこなせる、というのはメリットとしてかなり大きなことだと思いました。
そして50mmを超えるリムハイト(リアは54mm)だとどうしても上りでは不利になってしまうイメージがありますが、急勾配も含めての上りで実際に使ってみた感触としては、劇的な軽さを感じることは有りませんが嫌な重さも感じることはなかったです。

そして最後は終盤の状態です。足をどこまで残せるのか、ということです。
踏めば踏むだけ疲れるのは仕方がないことですが、それでも後半に踏めなくなる感覚、どうしても疲労が溜まってくる後半での踏みづらさがあるホイールもありますが、HYPER3は問題ありませんでした。

ということでよく走る練習コースを使用しての平地だけはなく、上りも下りも含めた走りを総合的に考えても、結論は変わることは有りませんでした。それは注文して良かった。ということです。
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製品の到着が待ち遠しいところです。

まとめ
まだ長い上りでは使用したわけでは有りませんが、総合的に見てもその性能は極めて高いホイールだと感じています。
HYPER3、あえて短くまとめるのであれば、”ある程度の乗り心地を確保したまま、高い反応性と巡航性を兼ね備えたホイール”、まさにロードレースのように上り下りも平地もある様なコースに最適な高剛性ホイールだとしっかりと感じることができました。

ホイールとしてはカチカチ系ほどの硬さではなく、タメ感系のホイールでもなく、カチカチ系の僅か手前かなりいい塩梅の極めて高剛性ホイールです。

もちろんフレームとの相性もあるかと思いますが、SLC3 との相性もかなり良いように感じています。

はっきり言って好みの問題ではありますが、個人的にはものすごく気に入りました。
ということで、実は初回の試乗でかなり好きになってしまって即日自分用に注文を入れました(笑)そのぐらい良いホイールだと感じています。

ということで今回はLún HYPER 3(ハイパー サード) D45 到着~初期インプレ、そんなお話でした。

天候が少々怪しい日が多いですが、30日(水)まではお店に試乗用ホイールとしてお借りしております、またその後は注文したホイールが届き次第、ご試乗も承れますのでお気軽にご相談ください。ぜひともこの性能はご体感頂きたいところです。



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