たかがボルトと侮るなかれです。
今回はパッド軸の固着のお話です。

ブレーキは11速の油圧ディスクブレーキキャリパーですが、主役はパッド軸のボルトです。パッドピン、ピンではありませんがパッドピンといったほうが馴染みがあるかもしれません。実際にMTB等でピンのモデルもあります。ピンは割ピン何かと言い、開いて使います。
パッド軸はブレーキパッドの交換時には外す必要があるボルトで、普通のボルトとは少々違った構造をしています。基本的にはボルトの頭はマイナスが切ってあり、ボルトの根本にのみネジ山が存在します。(※3mmの六角ボルトもあります。)
ちなみに海外ではこのボルト、バターのように柔らかいと言われていることもあるようです。。。
公式の締め付けトルクは0.2 - 0.4 Nmで、超弱いのです。
要は抜け落ち防止のスナップリテーナーもありますので、そこまで 強い力で締め付ける必要がありません。というかむしろ規定のトルク値以上で締めないほうが良いです。
というの固着すると大変だからです。

ブレーキキャリパーは塗装が浮いて剥がれが始まってしまっている状態ですが、少ないことではありません。
今回お題のパッド軸ですが、固着すると本当にはずれないのです。
ちなみに車体から取り外した状態で緩めようとしてもパッド軸のマイナスのボルトはびくともしません。
貫通等、様々な種類サイズのマイナスドライバーであらゆる方法を試しましたが、全く動く気配すら有りませんでした。ボルトは緩まずマイナスが削れていきます。
まだマイナスの頭は完全に舐めたわけでは有りませんが、このままでは全く動く気配すら有りませんので、これ以上同じ方法でやっても頭が更に駄目になるだけです。
固着がどれだけひどいのか、後学のためキャリパーをご提供いただき分解してみることにしました。
ちなみにこのようにねじ山自体が固着してしまっている可能性が高い場合、ボルトの頭を飛ばしても緩むことは少ないです。むしろ掴みどころを一つ潰してしまうようなものですので、頭を飛ばすのは得策ではないと判断しました。
▶分解して外す
となると方法は一つです。
反対側からアタックする、です。
再利用は諦め固着具合を確認するべく、勉強のために分解です。※分解禁止部分です。

トルクスのT30が2つです。
分解するともう再利用は難しいかもしれませんが実験です。

ボルトは双方ともにかかりがかなり浅く、特にオイルが実際に通る方のネジロックが効いて超硬いので要注意です。

開きました。
オイルラインとなっている方はOリングが存在します。
パッド軸があらわになりました。

もう完全に回る気を失っているように見えます。
この悪い子ちゃんをどうしてくれようか、とは言っても方法はそうそう多くはありません。
✓パワー勝負!
掴む系の工具です。

ロッキングプライヤーがよいでしょう。
右側はボルト外す専用のバイスザウルスです。
通常のロッキングプライヤーよりも溝が特殊で縦からでも横からでもどちらでもつかみやすいです。
ぶっ壊す勢いで回します。

マイナスドライバーなんかでは絶対にかけられないぐらいのパワーを掛けますが、びくともしません。
はっきり言ってもうこの時点で、外側からマイナスドライバーで緩めることは絶対に無理だったと実感しました。
さらにソイヤ!です。

折れました。
バイスザウルスの掴む力はかなり強いということが、これで証明できました(笑)
それにしてもパッド軸が折れる始末です。
どうでしょう。マイナスでボルトをねじ切るほどのトルクを掛けるのは少なくともワタクシのパワーでは無理です。
(しかもパッドピンはバター並みの柔らかさ(笑))
どれだけ固着がひどいかがわかります。
ということは外側からボルトを緩めるのはやはり難しかった、ということになります。
✓何が何でも外す
完全にねじ山固着でかなりひどい状態です。
かくなる上は壊れることを覚悟の上で他の方法を取ります。
①潤滑剤使用、ラスペネ
状況変わらず駄目です。
びくともしませんでした。
②熱、ヒートガン
実際のブレーキング時にはかなり熱くなりますので多少の加熱は耐えられるかとは思いますが、おすすめはしません。また今回は車体から外した状態ですのでできますが、車体についたままでは絶対にできないです。
アッチッチになるぐらい温めて回します。
するとほんの僅かに動きました。
少しでも動けばこっちのもんです。

しかしモタモタしていて冷めると?とたんに回らなくなります。
再びアッチッチまで加熱して緩めていきます。

抜けました。
それでも通常は固着状態からある程度動けば回りだしてくれる場合が多いのですが、今回のパッドピンはこちゃくから動い後もかなりのパワーを掛けないと回ってくれない状態でした。
もちろん緩んでからもマイナスで回るほど生易しいものでは有りませんでした。
おそらくネジ山に何らかの問題があったと考えられます。
これらのことを考慮してもマイナスで緩めることはかなり難しかったと思われます。
✓固着原因を推測
ではなぜこのようなことになるのか、単純な締め過ぎだけではなく可能性を考えてみます。
①汗等によるサビ
リアのブレーキの部分は意外と汗や地面からの水分の影響を受けやすいのも、ブレーキ本体の塗装が腐食や本体の取り付けボルトもサビやすさからも想像がしやすいです。
抜去後のネジ山の状態から見てもあまりきれいな状態ではありませんでした。

②熱による焼付き
ブレーキングでブレーキキャリパーは加熱されます。
いわゆる熱によるかじり、もしくは締め込む際に熱以外の原因でのかじりが起きていた可能性も考えられます。
③ネジ山異常
ボルト側、もしくはキャリパー側に何らかのネジ山の異常があった可能性です。
通常ここのボルトはネジロック等は使われておりませんので、最後まで軽く締め込んでいけるはずですが、ネジ部に異常があった場合、異常に硬い締め応えに違和感が出ます。

試しに抜去後、別のボルトを使用してみましたが、この状態から進みません。
そのまま無理に締め込んでしまうと今回のように悲しいことになってしまいますので、くれぐれもそのままねじ込まないように注意が必要です。
▶まとめ
ともあれ固着したボルトは100%外せるとは限りません。
今回のように油圧ブレーキ、分解をして最後の手段でなんとか外せる場合もないわけではありません。しかしここまでやってしまっては、再利用時はオイルも漏れ等の不安を感じながら使ことになりますので、このような状態になってしまった場合は多くの場合新品に交換、ということになります。もちろん分解は禁止ですので。※DURA-ACEのブレーキキャリパーはワンピース構造なので分解はできません。
まずは締め付けすぎないこと、ネジ山の状態を気にすること、そして定期的なメンテナンス、これらはどれもとても大切なことです。
と今回はマイナスのパッド軸でしたが、では六角のパッド軸だったら外れたのか?ということを考えてみますが、おそらく六角でもかなり厳しい戦いになったのではないかと思います。
ということで今回は油圧ディスクのパッド軸のボルト(パッドピン)には要注意、そんなお話でした。
++++++++++++++++++++++++++
FF-Cycle(エフエフサイクル)
〒262-0019
千葉県千葉市花見川区朝日ヶ丘1-21-2
※当日の受付は18:00までとさせていただきます。
作業は18:00以降も行います。
TEL:043-376-1121
(整備中、接客中等 電話を受けれない場合は番号通知にておかけいただければ折り返しお電話をさせていただきます。)
E-Mail:ffcycle@outlook.jp
※ご連絡をいただく際には
・お名前
・ご連絡先
・ご希望の整備内容
・ご希望の日程
こちらをお申し付け下さい。
当店の特徴・詳細ははこちらから
今回はパッド軸の固着のお話です。

ブレーキは11速の油圧ディスクブレーキキャリパーですが、主役はパッド軸のボルトです。パッドピン、ピンではありませんがパッドピンといったほうが馴染みがあるかもしれません。実際にMTB等でピンのモデルもあります。ピンは割ピン何かと言い、開いて使います。
パッド軸はブレーキパッドの交換時には外す必要があるボルトで、普通のボルトとは少々違った構造をしています。基本的にはボルトの頭はマイナスが切ってあり、ボルトの根本にのみネジ山が存在します。(※3mmの六角ボルトもあります。)
公式の締め付けトルクは0.2 - 0.4 Nmで、超弱いのです。
要は抜け落ち防止のスナップリテーナーもありますので、そこまで 強い力で締め付ける必要がありません。というかむしろ規定のトルク値以上で締めないほうが良いです。
というの固着すると大変だからです。

ブレーキキャリパーは塗装が浮いて剥がれが始まってしまっている状態ですが、少ないことではありません。
今回お題のパッド軸ですが、固着すると本当にはずれないのです。
ちなみに車体から取り外した状態で緩めようとしてもパッド軸のマイナスのボルトはびくともしません。
貫通等、様々な種類サイズのマイナスドライバーであらゆる方法を試しましたが、全く動く気配すら有りませんでした。ボルトは緩まずマイナスが削れていきます。
まだマイナスの頭は完全に舐めたわけでは有りませんが、このままでは全く動く気配すら有りませんので、これ以上同じ方法でやっても頭が更に駄目になるだけです。
固着がどれだけひどいのか、後学のためキャリパーをご提供いただき分解してみることにしました。
ちなみにこのようにねじ山自体が固着してしまっている可能性が高い場合、ボルトの頭を飛ばしても緩むことは少ないです。むしろ掴みどころを一つ潰してしまうようなものですので、頭を飛ばすのは得策ではないと判断しました。
▶分解して外す
となると方法は一つです。
反対側からアタックする、です。
再利用は諦め固着具合を確認するべく、勉強のために分解です。※分解禁止部分です。

トルクスのT30が2つです。
分解するともう再利用は難しいかもしれませんが実験です。

ボルトは双方ともにかかりがかなり浅く、特にオイルが実際に通る方のネジロックが効いて超硬いので要注意です。

開きました。
オイルラインとなっている方はOリングが存在します。
パッド軸があらわになりました。

もう完全に回る気を失っているように見えます。
この悪い子ちゃんをどうしてくれようか、とは言っても方法はそうそう多くはありません。
✓パワー勝負!
掴む系の工具です。

ロッキングプライヤーがよいでしょう。
右側はボルト外す専用のバイスザウルスです。
通常のロッキングプライヤーよりも溝が特殊で縦からでも横からでもどちらでもつかみやすいです。
ぶっ壊す勢いで回します。

マイナスドライバーなんかでは絶対にかけられないぐらいのパワーを掛けますが、びくともしません。
はっきり言ってもうこの時点で、外側からマイナスドライバーで緩めることは絶対に無理だったと実感しました。
さらにソイヤ!です。

折れました。
バイスザウルスの掴む力はかなり強いということが、これで証明できました(笑)
それにしてもパッド軸が折れる始末です。
どうでしょう。マイナスでボルトをねじ切るほどのトルクを掛けるのは少なくともワタクシのパワーでは無理です。
(しかもパッドピンはバター並みの柔らかさ(笑))
どれだけ固着がひどいかがわかります。
ということは外側からボルトを緩めるのはやはり難しかった、ということになります。
✓何が何でも外す
完全にねじ山固着でかなりひどい状態です。
かくなる上は壊れることを覚悟の上で他の方法を取ります。
①潤滑剤使用、ラスペネ
状況変わらず駄目です。
びくともしませんでした。
②熱、ヒートガン
実際のブレーキング時にはかなり熱くなりますので多少の加熱は耐えられるかとは思いますが、おすすめはしません。また今回は車体から外した状態ですのでできますが、車体についたままでは絶対にできないです。
アッチッチになるぐらい温めて回します。
するとほんの僅かに動きました。
少しでも動けばこっちのもんです。

しかしモタモタしていて冷めると?とたんに回らなくなります。
再びアッチッチまで加熱して緩めていきます。

抜けました。
それでも通常は固着状態からある程度動けば回りだしてくれる場合が多いのですが、今回のパッドピンはこちゃくから動い後もかなりのパワーを掛けないと回ってくれない状態でした。
もちろん緩んでからもマイナスで回るほど生易しいものでは有りませんでした。
おそらくネジ山に何らかの問題があったと考えられます。
これらのことを考慮してもマイナスで緩めることはかなり難しかったと思われます。
✓固着原因を推測
ではなぜこのようなことになるのか、単純な締め過ぎだけではなく可能性を考えてみます。
①汗等によるサビ
リアのブレーキの部分は意外と汗や地面からの水分の影響を受けやすいのも、ブレーキ本体の塗装が腐食や本体の取り付けボルトもサビやすさからも想像がしやすいです。
抜去後のネジ山の状態から見てもあまりきれいな状態ではありませんでした。

②熱による焼付き
ブレーキングでブレーキキャリパーは加熱されます。
いわゆる熱によるかじり、もしくは締め込む際に熱以外の原因でのかじりが起きていた可能性も考えられます。
③ネジ山異常
ボルト側、もしくはキャリパー側に何らかのネジ山の異常があった可能性です。
通常ここのボルトはネジロック等は使われておりませんので、最後まで軽く締め込んでいけるはずですが、ネジ部に異常があった場合、異常に硬い締め応えに違和感が出ます。

試しに抜去後、別のボルトを使用してみましたが、この状態から進みません。
そのまま無理に締め込んでしまうと今回のように悲しいことになってしまいますので、くれぐれもそのままねじ込まないように注意が必要です。
▶まとめ
ともあれ固着したボルトは100%外せるとは限りません。
今回のように油圧ブレーキ、分解をして最後の手段でなんとか外せる場合もないわけではありません。しかしここまでやってしまっては、再利用時はオイルも漏れ等の不安を感じながら使ことになりますので、このような状態になってしまった場合は多くの場合新品に交換、ということになります。もちろん分解は禁止ですので。※DURA-ACEのブレーキキャリパーはワンピース構造なので分解はできません。
まずは締め付けすぎないこと、ネジ山の状態を気にすること、そして定期的なメンテナンス、これらはどれもとても大切なことです。
と今回はマイナスのパッド軸でしたが、では六角のパッド軸だったら外れたのか?ということを考えてみますが、おそらく六角でもかなり厳しい戦いになったのではないかと思います。
ということで今回は油圧ディスクのパッド軸のボルト(パッドピン)には要注意、そんなお話でした。
++++++++++++++++++++++++++
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※当日の受付は18:00までとさせていただきます。
作業は18:00以降も行います。
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コメント
コメント一覧 (1)
キャリパーはSLXとXTグレードの物を使っていますが、甞めたりした覚えは無いですし。3㎜の6角だからってのもあるかと思いますが。