前回のお話はこちらからどうぞ↓↓↓


「Aero is everything(エアロこそ全て)」という有名な言葉にもあるように、昨今では重量よりも空力や転がり抵抗を重視する傾向にあるようです。
そう、最近の各種実験データから見ても重量よりも空力で、それはフレームやホイール、ヘルメットやウェアまで、空力を重視したものが増えてきて、むしろ空力を重視していないものはかなり減ってきている時代です。
その中でもコストバリューがかなり高いものとして、ポジションでありいわゆる乗り方であるロードバイクのフォーム、エアロポジションがあります。

しかしです。
先日もお客様とお話をさせていただきました。
“エアロポジションって、本当に速いんですか?”
ということが今回のお話、Aero is everything 時代に全盛期に、エアロポジションは本当に速いのか?を考える。そんなお話しです。

▶エアロフォームの数値
まずは数値的なお話からです。
ロードバイクで走った際の走行抵抗の大半は空気抵抗で、その抵抗は全抵抗の7〜8割は空気抵抗だとされています。空力の重要性は前述のとおりです。
ではそこで今回の本題の、エアロフォームです。エアロフォームを取ることでどのぐらい早く走れるようになるのか?ということです。

実際に行われた風洞実験では、選手が上体を起こした「リラックスポジション」と「エアロポジション」の差は平均で20W以上も削減できたという結果も出ています。空気抵抗が20W減るということは、同じ出力で走った場合、約0.7km/hスピードが上がる計算になります。たった0.7km/h、いやされど0.7㎞/h、40km/h巡航でこれを稼ぐのがいかに大変なことかです。これがフォームを変えるだけで実現できるのは、非常に大きな意味があります。

さらに実走テストでも「リラックスポジション」と「エアロポジション」を比べで、40km/hで30〜40Wくらい節約できるケースもあるということです。
このあたりは細かい数値に多少なりとも差はあれども、やはりエアロポジションはどう考えても速い、というのが共通しているところです。

では速く走りたければエアロポジションを取れば良い、単純にそうはいかないのが今回の本題のお話です。

▶エアロフォームの問題点
前述のように数字で見てもわかる通りでエアロフォーム、エアロポジションを取ることで実際にパワーを節約して、速く走れるよになります。
しかしです。
実際にエアロポジションで走ってみると問題に気がつくことがあります。
それは「速度(タイム)は速いかもしれないけれどもなんかきつい、」ということです。

こればかりは実際にやってみるとわかりやすいのですが、エアロポジションは空力的に有利にはなりますが、パワーが出づらく、パワーを維持するのがキツいと感じる場合があると思います。
というのも、空力的な有利なエアロポジションで前傾を深くすることで、股関節の角度が狭くなります。するとペダルを踏み込むときに使える筋肉の動きが制限されてしまうということです。もちろん柔軟性やペダリング、バイクのセッティングによっても差は出るとは思いますが、基本的にエアロポジションはパワーが出づらくなる傾向にある、ということです。
また上半身のポジションでも深く狭い空力的に有利な形は、胸郭を狭め呼吸もしづらくなることで呼吸もきつく感じる場合が出てきます。

これらのポジションによるフィジカルのロスもあって、エアロフォームは「空力的には30W得したけど、パワーが落ちてしまった(例えば20W出せなくなった)」という状況が起きることがあります。
ですのでエアロポジション、エアロフォームは各種データからも出ているように確実に速いはずなのに、実際に走ってみると「思ったより伸びない」ということは少ないことではありません。

そしてもうひとつ大事なのは持続時間です。
例えばです、5~10分の短時間のTTならかなり前傾で空力的な有利なエアロフォームでもいけるかもしれませんが、30分~場合によってもっと長い時間ともなると、このエアロフォームを維持することが難しい場合もでてきます。 深い前傾姿勢を長く続けることで腰や首、肩の疲労が先に来てしまい、結局フォームが取れなくなってしまうという問題です。

そこで重要なのは「どこまでをエアロに寄せ、どこまでをパワーが出やすくするのか」バランスです。
こればかりは数字の上だけでは割り切れない部分で、実際に柔軟性や筋力、バイクセッティングによっても最適解は変わってくるポイントでもあります。

こういったことを研究したのがField Testing the Upright Versus the Aero Cycling Position(エアロポジションとアップライトポジションの公道(野外)でテスト)※ページ下部にリンクです。 
これによるとデータ上では「アップライトの方がワット数は出やすい」「エアロの方がスピードは出やすい」という傾向が見られました。しかし参加者ごとのバラつきが大きく、「これは確実に差がある」と言い切れるほどの統計にはならなかった。つまり、「エアロにすれば必ず速くなる」という単純な話ではなく、人によって合う合わないが大きい、というのがこの研究の結果でした。


▶エアロフォームの問題点②
a.安全性の問題
深い前傾姿勢の問題点は単純にパワーが出しにくいだけではありません。

深い前傾姿勢は間違いなく視界が狭くなります。エアロフォームは頭の位置も重要となり、頭を低くすることで視界も狭くなってしまいます。その結果、路面の段差や車の動きに気づくのが遅れてしまうこもあるかもしれません。
逆に安全性を考え視界の確保のために、しっかりと頭を上げることは空力的には悪くなってしまいます。

基本的に深すぎる前傾姿勢、エアロフォームは安全性の低下にもつながってしまうこともあるということです。最近はレースなどしっかり前を見て走りましょう。というアナウンスを聞くこともよくあります。つまり、速さと安全性がトレードオフ的な面もあります。

b.身体的な問題
前述のように深い前傾姿勢では、首・肩・腰への負担がかなり大きくなります。
それだけではありません。
そう、お尻です。前回の記事でも有りましたが、一定のポジションを長い時間取り続けることでサドルとの接点が限定的になることで、痛みやしびれにつながる場合があります。

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▶エアロフォームの練習
①動画や画像でチェック
これはあるあるですが自分の頭の中でのエアロフォームと、現実のエアロフォームの乖離、つまり実際に横から見てみると意外とエアロになっていないパターンがあります。まずはローラー台を用いて画像や動画でチェックしてみると良いと思います。そこで上半身、前腕の角度、ハンドルと頭の距離感を確認しておくことで自分の頭の中のフォームと実際のフォームの乖離を少なくします。
場合によってはプロのフィッティングサービスを利用するのも良いと思います。

②短時間から慣れる
いきなり長時間エアロフォームを維持するのは難しいです。まずは安全を確認した上で、一瞬では短すぎてしまいますので、数分等の短時間でフォームを取り入れ、徐々に、そしてできるだけ長い時間維持できるように体を慣らしていくと良いと思います。例えばですがロングライドの際、安全な平地等だと練習がしやすいと思います。特に股関節の角度や首・肩まわりの負担は慣れである程度軽減できることがあります。
ワタクシ自身もかなり体が硬い方ですが、少しずつ慣らしてくことで徐々に維持できる時間を長くできるようになってきていると感じます。しかしやはりしっかりと意識しないと難しいです。また気を抜くと楽なポジションに戻ってしまっているときも(笑)

③無理をしない
こちらも大事なことですが目指すのは「完璧なエアロ」ではなく「自分が使えるエアロ」を目指すことです。極端に深い前傾で5分しか持たないより、少し緩めでも30分〜1時間維持できるフォームの方が、結果的に速く走れることが多いです。
ですので先日のお話ですが、ハンドル位置を上げても深いエアロポジションを長くキープできるようにした方が速い場合もある、ということです。


▶まとめ
今回はロードバイクでエアロポジションは純粋に速いのか?ということで、データと実際の体験を踏まえて見てきました。
確かに、風洞実験でも実走テストでも、エアロフォームは空気抵抗を大幅に削減することでパワーを節約し、速度を引き上げる効果があることがわかっています。
しかし同時に、前傾を深くするほどパワーが出づらくなったり、呼吸が苦しくなったり、長時間維持できなかったりと、数字の上では速くても「現実の走り」では思ったほど効果が出ないこともあります。

最終的に大切なのは「数字の上の速さ」ではなく、「自分にとって持続できる速さ」だと思います。
5~10分だけの極端なエアロフォームで速く走るより、1時間続けられるフォームの方が、レースでもロングライドでも役に立つと思います。
つまりエアロポジションは魔法のようなものではありません。
それでも練習を重ねや自分にフィットした形に磨きがあげることで、リスクを減らし少しでも速く走れる可能性を秘めているということです。

ということで今回はAero is everything 時代 全盛期に、エアロポジションは本当に速いのか?を考えたところ、やはりエアロポジションは速いが問題点も少なくない。自分にとっての最適案をみつけることが重要、そんなお話でした。
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関連記事・参考論文

↑↑「エアロで得られる速さは魅力的だが、パワーロスとのバランスを取らないと実走では逆効果になる」


↑↑「バイクより体のフォームが空力の鍵、でも持続できなければ意味がない」


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