前回のお話はこちらです。

前回は「30cを350km使ったけど、やっぱり28cに戻した」という話をしました。
というのもどうしても28cの“踏み出しの軽さ(瞬間的な軽快さ)”が気持ちよく速く走れる気がしたからで、結局のところ28cのほうがしっくりきたからです。
しかしです。最近は、プロでも30cを使う人が増えてきています。
「重そうに思えるけど、実は速いのかもしれない」ということが気になりだしたのです。

そこで今回は、AIを使って28cと30cの本当の違いを計算してもらうことにしてみました。

感覚とデータではどのような差が出るのか?
そして“速さ”を決めるのは、いったいどの要素なのか?
そのあたりを、実際のライド条件にできるだけ近い形でAIに計算をしてもらいました。


ということで今回は、AIを使って「28c vs 30c」を実際のライダー条件に近い形でシミュレーション。
「28cと30c、どっちが速いのか?」をAIで検証してみた結果、そんなお話です。

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▶比較条件
項目28c30c
タイヤタイプチューブレスレディ(TLR)チューブレスレディ(TLR)
空気圧4.5 bar4.0 bar
路面状況千葉県の一般的な舗装(B〜C中間)
ライダー体重61kg
バイク+装備8.5kg(総重量 約69.5kg)
使用タイヤモデルGP5000 S TRで計算

タイヤは低圧運用がベースのTLRです。
空気圧は実運用方法を考慮し、28cは4.5BAR(高圧)、30cは4.0BAR(低圧)としました。
路面状況も重要ですので、千葉県の一般道を想定し「B〜Cクラス(やや荒め)」の舗装状態を条件としました。
A:滑らか(新しめのアスファルト、ツルツル)
B:普通(一般県道くらい、小さなザラつきあり)
C:荒い(古い舗装・ひび・小砂・微細な段差あり)

▶AIシミュレーション結果(平地)
まずはAIによるシミュレーション結果を見ていきます。
比較項目 28c TLR 30c TLR
転がり抵抗係数(Crr) 0.0041 0.0038
速度(平地40km/h条件) 基準 +0.2〜0.3 km/h
損失パワー(前後合計) 約27.8W 約25.8W
5分セグメント差 約15〜20m前進(約2秒差)
※この結果は平地巡航時のシミュレーション、「フラットな道を一定パワーで走るとき、どちらが効率的か?」を比較したもので、上りは後述します。

⇨ 路面が少しでも荒れてくると、30cのほうが明確に速いという結果です。
つまり、同じパワーで走っても30cのほうが路面のエネルギーロスが少なく、トータルで速いという結果です。
特に「舗装が粗い地方道・田舎道」では、振動ロスの差が顕著に出ます。

▶上り坂ではどっちが速い?
上り坂になると、話が少し変わってきます。
こちらも合わせてAIに計算をしてもらいました。

登坂時は「空気抵抗」よりも「重力に対するパワー」が支配的になるため、
わずかなタイヤ重量や転がり抵抗の差よりも、いかに安定してトルクを掛けられるかが重要になります。

AIシミュレーションでは以下のような結果になりました👇

勾配が緩い(〜4%):
 路面の粗さによる振動損失が支配的なので、しなやかで追従性の高い30cのほうがトータルで速くなります。

中勾配(5〜6%):
 転がり抵抗・重量・振動抵抗がバランスしてほぼ互角。
 このあたりが「どちらもアリ」のゾーンです。

急勾配(7%以上):
 登坂時は重力に対するパワー支配が強くなるため、タイヤ重量や慣性の軽い28cのほうが有利。
 30cのほうがトルクは安定しやすいものの、総合的には“軽く踏み出せる”28cが速い傾向です。

こうして登坂条件をまとめると、結果的には次のようになります。

中勾配以下 → トラクション・安定性重視で30cが有利

急勾配   → 慣性と重量面で28cが有利


▶結論:どっちが速いのか
シーン おすすめ
平地・ロングライド 30cが有利(楽に速い)
アップダウン中心 ほぼ互角(脚質・路面で変動)
勾配7%以上の登坂 28cが有利(軽快にトルクが掛かる)
スプリント・ヒルクライム 28c(反応が鋭い)

⇨ 千葉県のような“微アップダウン+荒めの路面”では、
総合的に見ると 30cが速い という結果になりました。
ただし、ヒルクライムで7〜10%級が連続するような山岳では、28cの方が軽快で登りやすいです。
ちなみに千葉といえば鹿野山です。
宝竜寺ルート(平均5.2%)や福岡ルート(約5%)ではどちらも大きな差はありませんが、
福岡ルートは路面がかなり粗めなので30cのほうが有利かもしれません。
一方、あの“凶悪”な秋元(平均8%)では、やはり28cの軽さが活きるコースです。

AIの計算によると――
・30cは平地や荒れた路面で優勢
・7%以上の登坂では、軽快に踏める28cが有利
・“体感の軽さ”なら28c、“実際の速さ”なら30c
・どちらを選ぶかは、走る場所や目的次第

「速さ」を狙うならデータ的には30c。
「気持ちよく走る」なら28c。

この2つのバランスをどう取るか――
それこそがロードバイクの面白さであり、セッティングの醍醐味だと思います。

▶まとめ

どうしても瞬間的に感じる「重さ」が気になって、30cを約350kmほど使ったあとに、結局28cへ戻してしまいました。

しかし――最近のトレンドは、この「瞬間的な軽さ」よりもトータルで速いほうを選ぶ方向にシフトしています。
今回AIでの計算でも、主観的には重く感じたとしても実際には速く、体へのダメージも少ないという結果が出ました。

これは空力でも、転がり抵抗でも同じことが言えます。

たとえば空気圧は高いほうが瞬間的には軽く感じますが、実際の走行では適正より高すぎない空気圧のほうがトータルで速いことが多いです。
同じように「軽く感じる=速い」とは限りません。
かつては「上りでは軽さが正義!」と言われていましたが、勾配がそこまできつくない限り、今ではヒルクライムでも軽さよりも転がり抵抗や空力特性を重視する傾向があります。理由は単純で――そのほうが速いからです。

ホイールでも「過度な軽量化」より「空力特性」を重視する時代になり、クリテリウムのような短時間高強度のレースでも空力優位の結果が出ています。


こうした流れを見ると、「主観的な感覚」や「瞬間的な軽さ」ももちろん大切ですが、結果を急ぎすぎず、中長期的な視点で見ることも大事なのだと感じます。

ともあれ今回はあくまでもAIでの計算結果です。
ですがせっかくなので今回の結果を受けてまた30cに戻して、しばらく使ってみようと思います。
ということで今回は「28cと30c、どっちが速いのか?」をAIで検証してみた結果――そんなお話でした。



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