昨日の記事で少し触れた“第三の抵抗”。
実はこれ、現在のロードバイク研究の最前線で注目されているテーマの一つでもあります。

ロードバイクの速さを決める要素といえば、
現在では「空気抵抗」と「転がり抵抗」が重要とされています。
この2つはパワーメーターや風洞実験といった技術の進歩によって、 すでに“数値で見える世界”となっています。

しかし、実際に走っていると——
「同じぐらいの強度で走っているのに、妙に進まない」
「路面がザラつくと脚が重く感じる」
「パワーが思ったほど出ていない」
「踏んでも“抜ける”感覚がある」
そんな経験もあるかと思います。

その“謎の抵抗感”の正体が、今回紹介する**第三の抵抗(vibration loss / 振動抵抗)**です。
ということで今回は研究最前線!? ロードバイクのタイヤにおける「第三の抵抗」とは?そんなお話しです。

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▶ 第三の抵抗とは?
第三の抵抗とは、  
**「路面からの細かい振動によって発生するエネルギーロス」**のこと。  
専門的には **vibration loss(振動抵抗)** と呼ばれています。

走行中は常に、路面の荒れや段差、ギャップなどの影響で、
タイヤやホイール、そしてライダーの体が小さく上下しています。
このとき、筋肉や関節が無意識にその揺れを吸収しようと働くことで、
結果としてペダルを踏む力の一部が「振動の処理」に奪われてしまいます。

つまり、見た目はスムーズに進んでいるようでも、
実際には振動が多いほど“進むエネルギー”が減っていく。
振動によるパワーロス。

これこそが、ロードバイクの世界で言われる  
**「第三の抵抗」=振動抵抗** の正体です。

▶ どんなときに大きくなるのか?
「第三の抵抗」は、以下のような条件で特に大きくなります⇓

・路面が荒い(ひび割れ・小石・古い舗装など)
・コンクリート舗装や、地方道路に多い B〜Cクラス路面(※)
・タイヤが硬い、または空気圧が高すぎる場合

(※)B〜Cクラス路面とは、舗装が荒れ気味で微振動が多く、
見た目には平らでも、実際には細かな段差や凹凸が連続しているような路面を指します。 
千葉県や地方郊外の一般道がこの代表例です。

つまり、「硬いタイヤ × 荒い路面」ほどエネルギーロスが増える構図です。

逆に、30c TLRのようにしなやかで低圧運用ができるタイヤは、
路面の凹凸を“いなして”くれるため、この振動ロスを大幅に減らせます。

昨日のAIシミュレーションでも、荒れた路面条件(千葉県の一般道レベル)では、
同じ250W出力時に 30cが28cより約2〜3W効率が高い という結果が得られました。

▶ なぜ“軽く感じる”のに実際は遅いのか?
多くのライダーが経験するのが、
「高圧にしたほうが軽く感じる=速い気がする」という錯覚です。
これは高圧だけでなく、細いタイヤの軽快さにも同じことが言えます。

タイヤが硬くなることで、入力(踏み込み)に対する反応が鋭くなり、
瞬間的には“軽く進んだように感じる”からです。

しかし実際には、タイヤが硬すぎると路面の細かな凹凸を吸収できず、
その振動がすべてライダーの身体に返ってきます。
結果として筋肉がその振動を抑えるために余分な力を使い、
ペダルを回すためのエネルギーが失われてしまうのです。

つまり、「感覚的な軽さ」=「実際の速さ」ではないということです。

AIシミュレーションでも、荒れた路面ではこの差が顕著に現れています。
同一出力で走行しても、“軽く感じる28c”より“しなやかな30c”のほうが
平均速度がわずかに上回るという結果が出ています。

「第三の抵抗」は、まさにこの“感覚と実測のズレ”を生む要因のひとつ。
そして、最近のプロが選ぶ理由もここにあります。

また速さだけではありません。
体への振動は、知らず知らずのうちに筋肉の微細な疲労を蓄積させます。
特にロングライドやレース終盤では、この「振動由来の疲労差」が大きく効いてきます。

たとえば100kmを超えるようなライドでは、
同じ平均パワーでも30cのほうが疲労感が少なく、
最後までパフォーマンスを維持しやすい傾向があります。

この点もまた、「第三の抵抗」を抑えるメリットのひとつです。
単純な速さだけでなく、“楽に速く走る”ための鍵――
それが、30cのようなしなやかで低圧運用できるタイヤに隠されています。

▶ 現代ロードのトレンド:「軽さ」から「効率」へ
かつては「ヒルクライム=軽さ」「タイヤ=細く高圧」が常識でした。  
しかし最近のトレンドは、そんな“重量神話”が失われつつあり、  
**“トータルで速いセッティング”**へとシフトしています。

プロ選手でも28cが主流、30cを使う選手も増えているのは、  
まさにこの“第三の抵抗”への理解が進んだからです。

実際、バイクの軽量化で得られるメリットは想像以上に小さいものです。  
たとえば1kgの軽量化をしても、勾配5%の上りで得られる差は  
1分あたりわずか1〜2秒程度(約3〜4W相当)にしかなりません。  

一方、振動ロスを抑えて**3〜4W効率を改善**できれば、  
平地でも上りでも同等以上の差が出ます。  

つまり、**「軽いバイク」よりも「ロスの少ないバイク」**のほうが速いのです。  

その“ロスを減らす”ための要素こそが、  
しなやかなタイヤ、最適空気圧、そして路面追従性。  
これらを最適化することで、第三の抵抗(振動損失)を抑え、  
結果として「軽く感じる以上に速い」走りを実現できます。

この考え方は空力でも同じです。  
少し重くても空気抵抗が小さいホイールのほうが、  
多くの状況で実際には速くなることが証明されています。

今のロードバイクは、“瞬間の軽さ”よりも“持続的な効率”を重視する時代。  
それは、数値上の軽量化よりも  
**「エネルギーを無駄にしない走り」**が勝負を決めることを、  
プロたち自身が実感しているからです。

▶ まとめ:第三の抵抗を味方にするセッティング

| 条件 | 有利なタイヤ傾向 | 理由 |
|------|------------------|------|
| 荒れた路面・地方道 | 30c・低圧 | 振動ロスが少ない |
| 滑らかな舗装 | 28c・中圧 | 空力と転がり抵抗が有利 |
| 登坂(7%以上) | 28c | 慣性が軽く、踏み出しが軽快 |

「第三の抵抗」を抑えるというのは、  
単なる“乗り心地の良さ”を追求する話ではありません。  

それは、ライダーのエネルギーを**無駄なく推進力に変えるための考え方**です。  
タイヤのしなやかさ、空気圧、そして路面との相性——  
これらを最適化することで、バイクは“軽く感じる”だけでなく、**実際に速く**なります。  

ぜひ、今後のタイヤ選びや空気圧設定の基準として、  
この“第三の抵抗”という視点を取り入れてみてください。  

それが、**「楽に、速く」走るための次のステップ**です。
ということで今回は研究最前線!? ロードバイクのタイヤにおける「第三の抵抗」とは?そんなお話でした。

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