■ はじめに
NAGO R4 を使い始めてから、私はほとんど「サドル選び」という悩みそのものから解放されていました。使い始め当初は若干の違和感もあったものの、使い続ける連れお尻の形状ともよく合ってきて、短距離〜長距離はもちろん、トレーニングでも“気にならない”という状態が続いていました。

しかし、乗る時間が増えるにつれて変化が出てきました。たとえば 1 時間近く、ほぼノンストップでシッティングを続けたときです。実走ならではの路面からの振動や衝撃、どこか特定のポイントが痛いわけではなく、“座っている面全体でじわじわと硬く感じてくる”ようになりました。痛みというより、圧の蓄積による疲労感やしびれに近いものです。時おりダンシングを入れれば回避できないことはありませんが、長時間の SST やテンポ走ではシッティングの比率がどうしても高くなります。

トレーニング中はパワーだけでなく、心拍・ケイデンス・路面状況・フォームなど、考えなければならないことがたくさんあります。できる限り“お尻の不快感に気を取られない環境”を作りたい。
そう思い、長時間のシッティングでも安定、不安なく乗れる、快適性も兼ね備えたサドルを一度試してみようと決めました。

そこで選んだのが、今回の Prologo NAGO R4 PAS 3DMSS TIROX、いわゆる“3Dプリントのサドル”です。

■ 3Dプリントサドルを選んだ理由
まずおしりの形がすっかりNAGO R4に慣れていたということもあり、ここから3Dとはいえ、全く別の形のサドルに交換することには不安がありました。また一から慣れていくのも。。。
またNAGO R4の形状自体に問題があったわけではありませんのでNAGO R4の3Dが第一候補に上がりました。

Prologo の3DMSS(3D Multi-Sector System)は、中央から周縁に向かって素材密度を変化させた5つの支持セクターで荷重を設計した技術です。
・骨盤が触れる後部セクターは形状保持と支持密度を高め、ズレを抑えるよう設計
・中央セクターは圧を逃がす弾性密度に設定され、長時間でも食い込みの始点を作りにくい仕様
・外周セクターは微振動に応じて沈む追従密度で皮膚と筋肉をいなす構造
・そして何より、座る位置を誤らせにくい“導かれる接触面設計”がある技術

この構造がもたらす真価は、「姿勢で支える」のではなく、サドルのベースと表皮で荷重の器を作り、面そのものに役割を持たせて“面で支える”ことです。私が期待したのもまさにここでした。


■到着 & チェック
こちらです。
PXL_20251126_022837417
NAGO R4の3Dには2種類があります。
Nack(ナック / カーボンレール)と、 Tirox(タイロックス / 合金レール)です。
PXL_20251126_022842703
今回はあえてTiroxレールを選びました。
なぜならばTiroxレールのほうがサドル剛性が低く作られて、快適性が高いからです。
今回の交換の目的を果たすためには重量よりも、快適性を重視したほうがよかったからです。

まず触ってみると面白いのですが、場所(セクター)によって硬さが全然違うということです。
3D サドルは大げさに立体構造が目立つイメージがありましたが、このモデルは凹凸が強すぎず、指で押しても“沈むべきところは沈む”“支えるべきところは硬い”という感触がハッキリしています。

形状自体は NAGO R4と似通っていますが、唯一の懸念点は真ん中の穴です。以前のNAGO R4は穴無しでしたので、おしりに合うかどうかは心配がありました。


✓ 実測重量 — カタログ値との比較
公称値:196g 前後(Tirox レール)
PXL_20251126_023018240
実測重量:203 g
カタログ値に対して±5%以内には収まっています。
3Dプリントのサドルは重量的に不利なイメージがありますが、この重量であればなんとかOK、と一体印象です。今まで使っていたNAGO R4 のカーボンレールモデルと比べて+50gです。


■ セッティング — 気をつけるべきポイント
3Dプリントを採用したサドルは表面が沈む分、同じ “数字上のサドル高” でも実走の高さ感が変わる ことが多いです。
今回も例外ではなく、以下のポイントに注意して調整しました。

1. サドル高とりあえずキープ
3DプリントのNAGOは通常のNAGOと比べても厚みがありますが、3Dプリントの場合は沈み込みがあります。とりあえずキープで様子を見ることしました。

→実際にはちょい下げ(-3mm)低すぎた
→ちょいアゲ(+2mm)高い
→最終的には交換前から-1mmぐらいの高いで落ちついています。

2. 角度はフラット〜0.5°前下がりを基準に
3D 表皮は摩擦が高く、平面のままでも安定しやすいため、前傾強めの方はほんの少しだけ前下がりにすると淡い圧が逃げやすくなります。
しかし下から前下がりのセッティングをしている場合、3Dプリント特有の構造、前が柔らかい等の影響がある場合、通常のサドルと同様の前下がりセッティングにすることで、前下がりすぎてしまうことがあります。

→通常のサドルは微妙に前下がりでしたが、3Dは下がり幅が少ないほうがしっくりきています。

3. 前後位置は5mm の範囲で探るべき
3D のクッション分布(MSS)が部位で異なるため、
“いつもの位置=ちょうど合う位置” にならない場合があります。

→ 1~2ミリ後ろへ下げるとベストになりました。

PXL_20251126_023644161
3Dプリントサドルのほうが厚みがあります。

■ 実走インプレッション
到着後すぐに跨って走り出した最初の印象は──
「うわ、なにこれ…」と声が出そうなほど、不思議な感触でした。
柔らかくもないのですが、衝撃の角が取れているような感覚、そんな奇妙な安心感です。

試しに 両足をペダルから離してサドルへ全荷重 を預けてみても、ギャップ通過時にあえてお尻をドンと載せるように荷重してみましたが、以前のサドルよりも全然やさしいです。

これまでの NAGO R4 では、フラットな面の“支点”を自分で探して座っていた感覚がありました。良く言えば前後移動ができる、悪く言えばフラットな印象です。 
対して 3D NAGO は、骨盤を定位置へ誘導されるようなフィット感があり、接地面積?的には遥かに広く、安定して座れます。 前乗り後ろ乗りというよりも、ピンポイントで良いく、とにかく座りやすいようなイメージです。ですがしっかり前にも座れる、そして前でも不安定感がない、という不思議なものです。
もはや高さや角度という概念より、“座面の役割分布で支えられている”という感覚が強く、ここは 3D プリント構造ならではメリットだと思いました。

特に際立っているのが 座面のグリップ感 です。
滑らないのに、止まりすぎて動きを削がない。この グリップ × フィット × MSS のゾーニング が三位一体となり、「自然と座るべき位置へ収まる」「そこからズレにくい」という長所に直結していると思います。


その後約1週間にわたり実際に試した強度は、SST・L3 ロングテンポ・高強度・そして最もおしりに負担のかかる超低強度のリカバリー走まで幅広くです。
初日はサドル角度を ボルトうん周レベルでよりさらに小さな範囲で触り、クリート位置もごく僅かに調整しました。痛みが出たからではなく、“より集中できる位置”を探っただけです。

1 週間も経つ頃にはすっかりなれました。
結果として 長時間のシッティングでも圧疲労に意識を奪われない という期待は、見事に満たされました。

ただし サドルが柔らかいのか?と言われれば NO です。
ベースとなる支持密度の高い部分はしっかり硬い。しかし “硬いのに、しっかり馴染む”。広い面積で支えてくれる、というイメージです。
Tirox レールモデルの適度な弾性が、3D トップの設計思想ととても相性が良いように感じています。
PXL_20251126_214444554

■まとめ
3Dサドルを選んだ動機は 荷重を点ではなく面で受け止める設計思想 、つまり3Dプリントではなければできないこと、それはフォーム頼みの支えから解放される期待があったことです。

3DMSS は 骨で沈むだけではなく、骨盤ラインを導きながら軟部組織と皮膚を追従させる密度分布 で荷重の器を作る技術であるため、体感のサドル高は “単純沈下” とは一致しません。
こういったことがサドルブランドとしての技術の髄です。

実走した結果、長時間シッティングの圧疲労で集中帯域を奪われない という要求を高い再現性で成立させました。

ただしフワフワやグニャグニャと柔らかいのではなく、しっかりしているのに馴染む、という対義的な共存がこのモデルの正体です。それが表面のグリップ力と相まり、抜群の安定感を生み出してくれます。

つまり 軽さ × 安定グリップ × 誘導フィット × 役割密度の両立 が、3Dプリント構造でのみ生まれる性能であり、NAGO R4 から無理なく乗り換えられた最大の理由でもあります。

NAGO R4 PAS 3DMSS はTIROXレールのモデルで44,000円です。おそらく競合他社製品からしてみると若干お安い価格設定かと思われます。
もちろんサドルは合う合わないがあると思います。角度一つにしても1mm、1°でもかなり感覚が変わることもあります。こんなことを考え始めると、沼です。(笑)

ともあれ現状ではとても良い買い物をしたと感じております

ということで今回は
抜群の安定感と快適の両立 — Prologo NAGO R4 PAS 3DMSS TIROX を使ってみたリアルインプレ
そんなお話しでした。



+++++++++++++++++++++++++++
FF-Cycle(エフエフサイクル)
〒262-0019
千葉県千葉市花見川区朝日ヶ丘1-21-2
※当日の受付は18:00までとさせていただきます。
作業は18:00以降も行います。
TEL:043-376-1121
(整備中、接客中等 電話を受けれない場合は番号通知にておかけいただければ折り返しお電話をさせていただきます。)
E-Mail:ffcycle@outlook.jp
※ご連絡をいただく際には
・お名前
・ご連絡先
・ご希望の整備内容
・ご希望の日程
こちらをお申し付け下さい。
また整備内容によっては、車体メーカー、モデル名、ホイール、コンポーネントなども合わせてご連絡をお願い致します。
ロードバイクの健康診断・カスタマイズ相談的なこともお受けいたします。
当店の特徴・詳細ははこちらから