12速で完全ワイヤレス化されたGRXのリアディレイラーですが、最近、実際に触る機会が増えてきました。
しかしそこで、ただ調整をしながら「新型のGRXのリアディレイラーってなるほど。」と流してしまっては、正直あまり面白くありません。
では、どう見るか。
そう考えたときに、どうしても頭に浮かぶのがロード用コンポーネント、DURA-ACEの存在です。
ロード用Di2はいまだ完全ワイヤレス化されていません。
なぜ実現していないのか。
何が障害になっているのか。
そのヒントは、このGRXの完全無線リアディレイラーの構造そのものにもあるかもしれません。
そんな視点から、今回は考えてみたいと思います。
GRX完全無線リアディレイラーの構造から見る、次期DURA-ACEの行方。
今回は、そんなお話です。

■GRXの弱点とは?
12速で完全ワイヤレス化されたGRXのリアディレイラーは、まず何よりも「次世代の機能」を形にした製品です。
他社ではすでにワイヤレス変速システムが存在していましたが、SHIMANOとしては、MTBコンポーネントに続き、グラベル用コンポーネントとしても完全ワイヤレス化を実際の製品として成立させました。(※制約がありますが詳細は後述)
配線に頼らず、リアディレイラー単体で通信・制御・電源を完結させる。
この仕組みは、配線トラブルのリスクを減らし、フレーム側の制約も減らし、設計の自由度を大きく広げる可能性を持っています。
ここまでは、非常に前向きな進化です。
しかしです。
完全ワイヤレス化を実現するにあたり、リアディレイラーは一体、何を背負うことになったのか。
実際に触っていると、どうしても避けて通れないのが大きさと重量の問題です。
このRDは、単に「重い」というよりも、なぜ重くなったのかが、構造から見えてくる重さをしています。
✓重量
まずは数字の話からいきます。
完全ワイヤレスではない、従来構成のリアディレイラーの重量は以下の通りです。
・RD-R9250(DURA-ACE 12速):215g
・RD-R8150(ULTEGRA 12速):262g
・GRX 11速 RD:287g(メーカー公表値)
RD-R9250、RD-R8150は12速世代で、 コントロールレバーとの通信は無線ですが、 バッテリーは別体でフレーム内蔵式、フロントディレイラー・リアディレイラーは有線接続という構成です。
RD-R9250、RD-R8150は12速世代で、 コントロールレバーとの通信は無線ですが、 バッテリーは別体でフレーム内蔵式、フロントディレイラー・リアディレイラーは有線接続という構成です。
もちろんバッテリーは内蔵式ではないので、別途バッテリー(BT-DN300 52g)とエレクトリックワイヤーの重量は加わりますが、それらを含めても、DURA-ACEであれば総重量は300gを大きく下回ります。。
一方、GRXの完全ワイヤレスRDであるRD-RX717-SGSは、リアディレイラー単体にバッテリーを内蔵した構成です。

実測重量は471gです。(弊店実測)
カテゴリーは異なりますが、同じく完全ワイヤレスのMTB用リアディレイラー RD-M9250でも 389g です。
こうして並べてみると、完全ワイヤレス化によって、リアディレイラーは確実に重量増の方向へ振れていることが分かります。
リアディレイラー+バッテリーという構成に加え、着脱機構や、従来フレーム内バッテリーが担っていた制御・管理の役割までを詰め込んだ結果、この重量になるのは不思議ではありません。
まずは、この重量という点がロード用としては弱点として見えてきます。
✓サイズ感
ここからは、実際に触って分かったことです。このリアディレイラーで実走はしていませんが、整備としてはすでに何度も触っています。
それでも、箱から出して手に取った瞬間に分かります。とにかくボリューム感が大きい。
もちろん、これはロード用コンポーネントではなく、グラベル用のGRXです。GRXはロード用ではありませんので、泥、水、砂、落車、そして長距離走行といった条件の中で「確実に動くこと」が最優先になります。
軽さよりも信頼性を取るという考え方は、非常にShimanoらしいものだと思います。
その前提を理解したうえでも、やはりこのリアディレイラーのサイズ感はかなりのものです。11速ロード用リアディレイラーとGRXの重量差、その延長線上として考えられるレベルの話ではなく、サイズそのものが一段階違う、そんな印象を受けます。
11速GRXやRD-R8150と比べてみると、実際に手に取った際、寸法以上に全体のボリューム感が強く、存在感がかなり大きく感じられます。感覚的には、賛否の分かれるCampagnoloの、あのマッシブなリアディレイラーに近いサイズ感と言ったほうが分かりやすいかもしれません。
これは好みの話ではなく、製品として見たときの率直な感覚です。
シングルテンションのシャドータイプとなり、機能的にもシャープになった現行のリアディレイラーの流れを考えると、大きさを大きく変えることなく完全ワイヤレス化を実現できるのかどうか。この点は、DURA-ACEならではの非常に難しい問題だと思います。
■次期DURA-ACE推測
✓リアディレイラー
ここからが本題です。まだ詳細が一切明らかになっていない次期DURA-ACEですが、まず気になるのは「完全ワイヤレス化されるのか」という点でしょう。
個人的には、無線化そのものは進むと考えています。ただし、GRXと同じ考え方のままDURA-ACEを完全ワイヤレスにする可能性は低いと見ています。理由は単純で、DURA-ACEはあくまでロード用のコンポーネントであり、重量という制約を無視できない存在だからです。
RD-R9250は215g、バッテリーであるBT-DN300は約52gです。(フロントディレイラーや配線を考慮せず、かなり単純化した話ですが)この2つを足した重量を大きく超える構成を、DURA-ACEとして許容できるかと言われると、正直かなり厳しいと思います。
完全ワイヤレス化を実現するにあたり、重量とサイズをどこまで抑えられるのか。これはDURA-ACEがDURA-ACEであるからこそ、避けて通れない課題だと感じます。
✓フロントディレイラーの問題
完全ワイヤレス化の話題で、あまり語られないのがフロントディレイラーです。
まず前提として、前述の現行のワイヤレスリアディレイラーは、いずれもフロントシングル専用という制約があります。Shimanoの現行ラインナップを見ても、ワイヤレス化されたフロントディレイラーはまだ存在していません。フロントディレイラーを使う場合、現状では何らかの有線接続が必要になるという制約があります。
リアディレイラーと比べると、フロントディレイラーはチェーンを強引に押し上げる必要があり、より大きなトルク、つまり電力を必要とします。リアディレイラー以上に過酷な仕事をするフロントディレイラーに、あのサイズのバッテリーを載せて、果たしてDURA-ACE基準の変速速度や変速回数を維持できるのか。ここは大きな疑問が残ります。
まず前提として、前述の現行のワイヤレスリアディレイラーは、いずれもフロントシングル専用という制約があります。Shimanoの現行ラインナップを見ても、ワイヤレス化されたフロントディレイラーはまだ存在していません。フロントディレイラーを使う場合、現状では何らかの有線接続が必要になるという制約があります。
リアディレイラーと比べると、フロントディレイラーはチェーンを強引に押し上げる必要があり、より大きなトルク、つまり電力を必要とします。リアディレイラー以上に過酷な仕事をするフロントディレイラーに、あのサイズのバッテリーを載せて、果たしてDURA-ACE基準の変速速度や変速回数を維持できるのか。ここは大きな疑問が残ります。
またこれはあくまで想像ですが、現行のバッテリーは決して薄い部品ではありません。フロントディレイラー周辺は、フレーム形状、空力、タイヤクリアランスなど、条件が非常にシビアな場所です。その限られたスペースに独立したバッテリーを載せるのは、設計的に相当難しいはずです。
12速化に伴いフロントディレイラーはかなり小型化されましたが、時代の流れに逆行するように巨大化することは、歓迎されるものではないでしょう。
✓アイデアとしての「変速構成」
そこで、可能性は低いものの、構造的な逃げ道として考えられる案もあります。リアディレイラーは独立バッテリーを持つワイヤレス構成とし、フロントディレイラーとリアディレイラーを有線接続するというものです。理論上は成立しますが、バッテリー容量、信頼性、整備性を考えると、現実的とは言いにくい構成です。
また、フロントディレイラー側のバッテリーの逃げ場として、ボトルケージ付近などに配置する案も考えられますが、これも設計としてはかなり難しい選択になります。
■まとめ
GRXの完全無線リアディレイラーは、技術的には非常に興味深い製品です。
「完全ワイヤレス化は可能か」という問いに対して、Shimanoはすでに一つの答えをGRXやMTBコンポでもで示しました。
その一方で、この完全無線のリアディレイラーがもたらす代償も、これ以上ないほど分かりやすく示しています。
重量、そしてボリューム感。実際に触ってみると、それらは決して無視できるものではありません。
完全無線=正解、とは限らない。というのがワタクシの個人的な意見です。
これは、今回GRXのリアディレイラーのサイズ感を見て、強く感じた点です。
またロードコンポーネントにおいて、完全無線化の最大の障壁は、フロントディレイラーにあります。
フロントディレイラーはリアディレイラーよりも、変速時に大きな力を必要とします。限られたスペースの中に、そのパワーを支えるモーターとバッテリーを詰め込めば、かつてのDi2のような大きなユニットに逆戻りしてしまう可能性があります。
空力と軽さを突き詰めてきたDURA-ACEにおいて、それは進化というより、退化と受け取られかねない選択です。
無線にこだわることで、重量が増え、サイズも大きくなってしまうのであれば、本当にそれがロード用コンポーネントにとって最適解なのか。
それよりも、重量、信頼性、変速精度、整備性といった、ロード用コンポーネントとして本来突き詰めるべき性能を、さらに磨いていく方向に振ったほうが良いのではないか。そんな考え方も、十分にあり得ると思います。
GRXはグラベル用コンポーネントとして、非常に合理的な選択をしています。
しかし、その合理性がそのままDURA-ACEに当てはまるかと言われると、話は別です。
次期DURA-ACEがどのような形になるのか。
完全無線に進むのか、それともShimanoらしい別の答えを用意してくるのか。
待つのも楽しみの一つです。
ということで今回は、
GRX完全無線リアディレイラーの構造から見る、次期DURA-ACEの行方。そんなお話しでした。
ということで今回は、
GRX完全無線リアディレイラーの構造から見る、次期DURA-ACEの行方。そんなお話しでした。
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