■症状とメーカーの見解
気がつけば走行中、右の手元からビビリ音とも取れるようなカラカラ系の異音が出るようになりました。
最初はケーブルか何かが当たっているのかと思いましたが、どうにも様子が違います。
自分の自転車をいじる時間が取れず少々放置気味だったのですが、先日コントロールレバーのカバーを交換した際に違和感の正体がはっきりしました。
明らかにレバーのボタン部がフラフラ、カクカク、カタカタしており、もう見るも無惨なほどのコントロールレバーのボタン部のガタが出ていました。

大小双方のレバー側のボタン部は、指で触ると明らかに遊びが大きく、走行中の振動でその遊びがそのまま異音になっていたようです。

通常使用外の落車や強い衝撃の記憶はありません。レバーの外観を確認しても、傷や打痕といった痕跡は見当たりませんでした。

念のためSHIMANOに確認したところ、回答は明確でした。内部のボタン機構に使われているスプリングが外れている、もしくは破断している可能性が高いとのことでした。
分解して確認し、スプリングが外れているだけであれば元に戻せば直りますが、スプリングが折れていた場合は修理不可となります。
そして、このスプリングは補修パーツとしては供給されていないとのことでした。

つまり、スプリングが折れていれば根本的な解決策はコントロールレバー交換となり、現在の価格でおよそ44,000円です。原因がたった一本のバネであっても、という話になります。

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■現状確認
兎にも角にも、まずは現状を確認するほかありません。レバーのスイッチ部にはT5という極小サイズのトルクスが使われています。ここを舐めてしまえば、それこそ完全に終了です。このサイズは工具の精度がダイレクトに出るため、ホームセンターの安物ビットでは危険です。
極めて慎重に作業を進めます。

実際に開けてみると、スプリングは折れていました。

一箇所が折れているというレベルではなく、複数箇所が破断し、細かくちぎれちぎれになっている状態です。粉々すぎて原型もわからないぐらいでした。
これでレバー交換になるというのは、正直なところかなり厳しい話だと思います。
※ちなみに旧レバーは補修パーツとしての販売がありました。
しかも折れた原因は、どう見ても経年によるものとしか考えられません。

それでもSHIMANOの見解としては、このST-R8170の場合は修理不可、レバー交換という判断になります。このレバーは2023年10月7日に組み付けたもので、使用期間は約2年3ヶ月です。正直に言えば、「少し早すぎる寿命宣告ではないか」という印象を持ちました。
(ちなみに保証期間は2年、ソニータイ…)

当初は、バネが外れている、いわば脱臼のような状態も想像していましたが、実際に分解してみると、バネが簡単に外れるような構造ではありませんでした。むしろ極めて外れづらい構造になっており、この症状が出ている場合、多くはバネの外れではなくバネの破断を前提に考えた方が現実的だと思います。

このボタン機構にはバネが合計3本使われており、小さなバネが2本、大きなバネが1本という構成です。そのうち少なくとも大きなバネについては、自然に外れることを想定していないと言ってよいほど、外れづらい構造になっています。構造を確認した限り、この大きなバネが外れるというよりも、長期使用による疲労で破断する可能性を考える方が、はるかに現実的です。


■今後を考える
バネがこの状態でも、うまく組み込めば最低限のストロークは確保でき、ボタン部はカクカク、プラプラしながらも操作自体は成立します。そのため、完全に使えなくなったわけではありません。

しかし、このまま使用することには大きなリスクがあります。
まず、いつ再びバネの破断が進行するかわかりません。
また、この長さのバネでも正しく収まっていれば動作はしますが、ズレればボタンが効かなくなります。それがレース中だった場合を想像すると、決して好ましい状態ではありません。
コントロールレバー上部のボタンを使って変速することは可能ですが、あくまで緊急対応に過ぎません。

さらに問題なのは、バネの巻き終わりが当たる受け側の素材が樹脂である点です。バネが折れるほどの振動が発生している箇所で、先端の尖ったバネが樹脂母材に当たり続けることで、母材そのものを痛めてしまう可能性があります。これはサイズの合っていないバネを使うときも同じリスクがあります。
捨てる前提であれば「使えるうちは使う」という考え方もゼロではありませんが、リスクは決して小さくありません。

補修パーツは存在せず、交換すれば44,000円です。たかがバネ一本にそこまでの金額をかけることに、はおいそれと判断をするのは難しいところです。

ということで、、、
ここから先は、あくまでメーカー非推奨の方法です。
しかし結果として、このST-R8170は「死亡宣告」から復帰することになります。


■復旧を考える
前述のように、バネ一本の破断でコントロールレバーを買い直すというのは、どうにも現実的とは思えませんでした。そこで考えたのが、ドナーレバーからの移植作業です。

確か以前、ST-R9170の内部構造を確認するために分解したレバーがあったはずだ、と思い出しました。あれが残っていれば、内部のスプリングを流用できる可能性があります。
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これです。
間違いなくこの大きな方のバネです。



、、

、、、


……と思ったのですが、年末の大掃除で処分していました。orz…

では中古品やジャンク品のレバーはどうかという話になりますが、ジャンク品である以上、すでに同じようにスプリングが折れている可能性も否定できません。
これは開けてみないと分からず、ある意味ギャンブルのようなものです。

ただ、SHIMANOは設計思想として、似たような場所に似た役割の小物部品を使うケースが比較的多いメーカーでもあります。
そこで思い出したのが、何年もの時を経て保管されていた、別世代のDi2コントロールレバーでした。
すでに実用としてはあまり使い道のない個体ですが、内部を確認してみる価値はあります。

分解して確認してみると、ボタン機構内にスプリングが入っていることが分かりました。
線径はやや太く見えますが、サイズ感はほぼ一致しており、位置関係も問題なさそうです。
またこのバネは先端の座巻き処理が丁寧であり、現行の折れたバネよりもむしろ攻撃性が低いと思われます。
理屈の上では、流用できそうだと判断しました。

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このスプリングを使用してみることにします。

■修復作業
※本作業はメーカー非推奨であり、修理を勧めるものではありません。
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まず、スプリングの座りを確認します。
ピタリと収まりました。
次に、実際に組付けボタンのストローク量と戻りの確認を行います。
過不足なく戻ること、引っ掛かりが出ないこと、クリック感が極端に変わらないことを確認します。

組み付け後の操作確認では問題は見られませんでした。
ボタン部の遊びは解消され、戻りも安定しています。操作感は新品同様といってよいレベルで、少なくとも破断したスプリングのまま使用していた状態とは比較にならないまでに回復しました。

その後、約200kmの実走確認を行いました。走行中の異音は解消され、振動によるカタつきも発生していません。変速操作も安定しており、実用上の問題は感じられませんでした。結果として、このST-R8170は実用可能な状態まで復帰しました。


■ まとめ
今回の件は、単に一つのコントロールレバーが壊れた、という話ではありません。
バネ一本の破断によって、メーカーの正規対応ではレバー交換しか選択肢がなくなり、その金額が約44,000円になるという現実を突きつけられました。
使用期間は約2年3ヶ月で、外傷もなく、明確な原因が衝撃とは言えない状況です。この事実をどう受け止めるかは、人によって判断が分かれるところだと思います。

一方で、現代のコンポーネントは軽量化や一体化、防水性といった多くの要求を満たすために、樹脂部品や小径ネジを多用する構造になっています。
その結果、補修という概念が成立しにくくなり、「壊れたら交換」という割り切りが前提になっているのも事実です。これはSHIMANOに限った話ではなく、今の時代の製品全体に言える流れだと思います。

今回行った修復作業は、メーカー非推奨であり、再現性や耐久性を保証するものではありません。
ただし、補修パーツが存在せず、交換しか道がない状況において、実用レベルまで機能を回復させることができたのもまた事実です。
やってよいかどうかではなく、「なぜこういう選択を考えざるを得なかったのか」を含めて記録する価値があると判断しました。

今回のST-R8170は、結果として復帰しました。しかし、同じ症状が再発しない保証はありませんし、誰にでも勧められる話でもありません。もし同様のトラブルに直面した場合、交換を選ぶのも正解ですし、ここで紹介したような対応を検討するのも、自己責任の上では一つの選択肢になり得ます。

この記録が、同じような状況に直面した方が考えるための材料になれば幸いです。

ということで今回は直せない時代のDi2。ST-R8170が示した現代コンポーネントの限界、そんなお話しでした。


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