WINSPACEのフラッグシップモデルであり、生粋のレーシングバイクであるSLC5から、
レース終盤、脚が削られた状況でこそ差を生む究極のエアロ性能を追求したM6 Mile Masterへ乗り換えました。

比較がしやすいよう、フレームのみを変更。
ホイールもハンドルも、ポジションも基本的にはほぼ同条件です。

単独走だけでなく、爆風の日もあれば、いつもの周回コースを2人で走る日もありました。

その中で、一貫して強く感じていることがあります。

M6は、確実に速い。
ということです。

しかし今回書きたいのは、「速い」という感想そのものではありません。

なぜ速く感じたのか。
どんな状況で差を感じたのか。
そして、その速さは誰にとって価値があるのか。

最先端のエアロロードは、プロのための道具なのでしょうか。
それとも、私たち一般的なサイクリストにこそ意味があるのでしょうか。

SLC5から乗り換え、さまざまなシチュエーションで使ってきた今、その答えが少し見えてきました。

今回は、実走で感じたことをもとに、
「一般サイクリストにとっての最適解」について考えてみたいと思います。
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■2人走で感じた発見
今回この記事を作ろうと思ったきっかけでもあり、M6へ乗り換えてからワタクシ自身が一番大きく驚いたところでもあります。

というのも理屈でいえば、空力の差は単独走で一番効くはずです。

2人以上になれば、必ず前走者がいる時間があり、その間はドラフティングが効きます。

ロードバイクの走行中の空気抵抗というのは、正面にある“空気の壁”を押し分ける仕事です。
しかし後続は、その壁を前走者がすでに空気を押し分けてくれている状態で走ることになります。
なのでドラフィング時には後続は楽になります。

研究報告では、単独走を100とした場合、2人走では先頭が約95〜100%、後続はおおよそ65〜75%程度まで負荷が下がるとされています。

つまり理屈だけでいえば、2人走の場合、後ろにいる時間がある以上、空力性能の差は単独走ほど顕著には出ないはずと、考えていました。

ところが走り出してすぐに、その違いに気が付きました。
後ろについたとき、、前走者がいるとき、とにかく楽ということです。

軽く回しているだけで、楽についていけますし、
以前のSLC5と同じぐらいの踏み方をすると、今度は前につまりすぎてしまいます。
パワーを見ても、明らかに低いです。

下りもそうです。

下りで後方についているときは脚を止めているのに、ついていくことができるだけではなく、ちょっと伏せると前走者との距離が自然に縮まっていきます。

そしてもう一つ、下り終えて平地に戻る、いわゆるパワーが上がる踏み直しの瞬間、超軽いのです。
下り終えるということは、速度はかなり出ている状態です。
その高い速度域からの加速でも、スルスルと速度が上がっていく感覚です。

軽量バイクが「点」の加速だとすれば、M6は「線」の加速のようなイメージです。

一度乗せた速度が減衰しにくいので次の一踏みが、ゼロからではなく“続き”から始まります。

その差が、脚の削れ方に出ているのかもしれません。

理屈では、後続の位置では空力の支配は弱くなるはずの状況です。
それでも、はっきりとその差を感じました。

というのも前走者が空気を切り裂いてくれているので、後ろにつけば楽なのは当然です。
しかし、完全に“無風”になるわけではありません。
前走者の後ろには、細かく乱れた空気の渦が残っています。
その不安定な空気の中を、自分のバイクは進んでいきます。

そのときの乱れた空気の渦をフレームが処理するか。
もしかするとM6は、その微細な乱れをも整えてくれている、
だからこそ、SLC5よりもさらに一段深い「速さ」を感じたのかもしれません。

周回コースはいつもの10km、獲得100mで何十回も走っている場所です。
だからこそ、体に染み込んだ感覚があり、ちょっとした違いはごまかせません。

30km/hという“現実的な速度域”。
ここで楽になることの意味は、想像以上に大きいのかもしれません。

ここが、今回の大きな発見でした。


■強風ではどうか?
正直なところ、“エアロロード×強風”という組み合わせには、少し身構えていました。

過去に乗ったエアロ系フレームでは、横風にはそこまで強い印象がなく、その形状からしても一般的な軽量バイクやオールラウンド形状のフレームより不利になるのではないか、という先入観があったからです。

特にビル風のような突風、横からドン、と押されるような風。
瞬間的に前輪を叩かれ、ハンドルを一気に持っていかれるような怖い感覚です。

ところが、走り出してみると以外にもその感覚は少なかったです。
むしろ、落ち着いています。

もちろん爆風の中では決して穏やかというわけではありません。
それでも、いわゆる軽量系のバイクで横風を受けたときの、ハンドルを揺すられるような神経質さよりは、明らかに安定している印象でした。

ハンドルが揺すられないということは、無意識に行っている修正舵が減るということです。
高速域で直進安定性が高いというのは、脳のリソースを節約できるということであり、路面状況や周囲の確認に、より意識を割けることになります。
100km走ったあとの精神的な疲れの差は、この“安定感”から来ているのかもしれません。


つまりM6に至ってはエアロ形状=横風に弱い、というただ単純な話ではないのかもしれません。

そしてこれは実際に走ってみて感じたことですが、横風の影響、特にステアリングモーメントへの影響は、フレームよりもホイールのほうが大きいのではないか、と思いました。

SLC5のときと同じくホイールはHYPER Lightでタイヤも同様です。

リムハイトが低くても横風の影響を受けやすいホイールはあります。
しかし今回は、SLC5との比較で「横風に弱くなった」という印象はありませんでした。

むしろ大きな差は感じなかった、というのが正直な感想です。
このことからも強風時の前輪をさらうような、ハンドルを持っていかれる感覚に関しては、フレームへの依存性はそこまで大きくはない可能性が考えられます。

またそれだけではありません。
面白いのは、風がある日はとくにそのフレームの性能差を感じやすいことです。

向かい風区間ではそこまで大きな差を感じませんが、その風向きに角度がついた時(ヨー角の開き)、スッと軽くなり、スルスルッと前に引き込まえるように感じることができます。

風に当たっているはずなのに、失速しない。これは面白い感覚です。

エアロは向かい風で効くものと、思いがちです。

ですが、斜め後ろからの風、いわゆる追い風区間でこそ、フレームが空気を受けて“前に押される”感覚があります。
風がある日のほうが差を感じた理由は、ここにもあるのかもしれません。

■今回感じたエアロロードの利点
空力性能に優れたエアロロードの利点です。

空力性能というと、どうしてもレースでの大逃げや、高速域での話を想像しがちです。
ワタクシ自身もそう思っていました。

しかし実際に様々な状況で乗ってみると、それらだけの話ではなかったということに気が付きます。

つまり――
いわゆるワタクシ自身が考えていた、
「エアロロードが不利になりそうな状況」「メリットが薄れると思われがちな場面」
でも、その効果は確かに残っていただけではなく、むしろ、そういう日でも明確な差が見えた、ということです。

これが今回、いちばん大きな収穫でした。


■では上りは?
ここまで書いておいて、避けて通れない話があります。
ご来店いただいたお客様にも聞かれることあります。

「今年の富士ヒルはSLC5とM6、どっちで出るんですか?」

正直に言えば、簡単ではありません。

単純に「上り」という言葉だけで考えれば、
重量 > 空力
これは理屈として正しいです。

ですが、富士ヒルは“よくある普通のヒルクライム”とは少し違った場面があります。

富士ヒル特有の特徴
①緩い傾斜

平均勾配は5%前後、最大でも約8%と、ヒルクライムとしては穏やかな部類です。

勾配が緩む場面も多く、30km/h近く出る区間もあり、最後の平地は風向き次第では50km/h近く出ることもあります。この速度域になると、重力だけが支配的とは言い切れません。

軽さの恩恵は確実にありますが、それだけではなく空力の影響も混ざってきます。

②集団走行
富士ヒルでは20~30人の集団(トレイン)になることも珍しくありません。

そうなると一定走ではなくなります。
・緩んだ瞬間に踏み増す。
・誰かが上げれば反応が必要になる。
・インターバルのような踏み方が必要になることもあります。
(※これかなり重要で、集団走行を考えている方はインターバル耐性も必要になります)

ここでは軽さは武器になります。
踏み出しの鋭さや反応の速さ、トレインから落ちた瞬間に終わるということは普通にありえます。

ですが、逆に最初から集団を追わない走りを選ぶなら、状況はまったく変わります。

一定で淡々と踏み続けるなら、巡航効率がじわじわ効いてきます。
どう走るか。
ここで答えが分かれます。

③長丁場
富士ヒルはヒルクライムレースの中でもかなり長い方です。
そしてとにかく休みどころがなく、じわじわときついペースを継続する走りが必要になります。

徐々に削られフォームが崩れる、後半に脚をどれだけ残せるか、どちらが“垂れにくい”か。
ここは単純な重量比較では語れません。

コンプライアンス。
安定性や巡航効率。
体へのストレスの蓄積。

だからこそ、「ヒルクライム=軽量一択」これは一概に言い切れない場合もあると思います。
ヒルクライム時の重量の支配は確実にありますが、単純にそれだけではない場合もありそうです。

緩斜面や集団走行、長丁場。これらを総合すると、エアロという選択が不合理だとも言い切れません。
断言はできることではありません。
しかし少なくとも、“一般的なサイクリストにとっての速さとは何か”
それは、単純な重量比較では決まらない。ということを考えさせられるフレームだと感じています。
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■まとめ
M6をさまざまな状況で使ってきている中で感じているメリットは、空力性能だけではありません。
走行時のあらゆる状況下でも明確にわかる安定性とコンプライアンスを土台に、最後まで速さを失わない性能であり、メーカーが掲げる「疲れてから、もう一度踏める反応性」
これらは実際に乗ると、はっきり体感できます。

SLC5が一踏み目でわかる“点”の速さなら、M6は削れにくく、最後に伸びる“線”のような速さ。その違いです。

そしてここからが重要なところで、
”M6の性能は一般的なサイクリストにはメリットがあるのか”、というところです。

普段一般的なサイクリストが行うライドの多くは、大集団の高速レースではなく、超級山岳での度重なるアタックがあるわけではありません。

むしろ
・単独、あるいは2〜3人
・速度域は~30km/h台
・走っている時間のほとんどが巡航
・それでもパワーにかかわらず下りではそれなりのスピードが出る
実際にはこういった場面の多いライドだと思います。

ともなると現実のライド時間の大半を占める巡航で数ワットでも、数%でも、楽になる空力性能。
そして高速域ともなれば、クイックで俊敏な反応よりも乗りやすさと安定感。
その積み重ねのほうが、私たち一般的なサイクリストにとっては大きな意味を持つのではないでしょうか。

今回M6に乗って感じたのは、まさにそこでした。
少なくともワタクシ自身がM6に乗り換え、自分自身が主に経験しうる様々な環境下で使用してみた結果で感じたことです。

レースでも発揮できる性能を持ちながらも、一般的なサイクリストにとっても恩恵の大きいフレーム、それこそがM6 マイルマスターというバイクなのではないかと考えております。

ということで今回は一般サイクリストの最適解とは何か。 最新エアロロードM6に乗って見えた“速さ”の正体、そんなお話しでした。

■おまけ:試乗の際にひとつだけ
そんなワタクシ自身も、その空力特性をしっかり実感しているM6ですが、
ご試乗の際にひとつだけお伝えしたいことがあります。

ある程度以上の速度域に入れるコースであること。
これが最低条件だと感じています。

M6の良さは、初速ではありません。

伸びです。

ジワッと、スッと、速度が乗っていくあの感覚。
それがこのフレームの本質だと思っています。

ですので、伸びを感じる前にブレーキングが入ってしまうような短いコースや、加減速が多すぎる環境では、その特性を実感しづらいかもしれません。

今後、さまざまな地域で試乗の機会があるかと思います。

もしその場に足を運ばれることがあれば、ほんの少しで構いません。
「伸びを感じられるかどうか」
そこに意識を向けてみてください。
きっと、このフレームの性格が見えてくるはずです。




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