昔のロードバイクを知っている人ほど、最近の価格に驚くと思います。
ここ10年でロードバイクの価格は、かなり大きく上がりました。
例えば105完成車。
2015年頃であれば、定価でも20万円前後で購入できるものが多かったです。
もちろんSALEを狙えば、10万円台でも十分に買えたバイクもありました。
しかし現在はというと、機械式105の完成車でも30万円台後半~40万円前後が一般的です。
「最近のロードバイクは高すぎる。」
そう思う人も多いと思います。
しかし構造や価格の内訳を見ていくと、実はそれほど単純な話ではありませんでした。
ということで今回は、
「ロードバイク高すぎ問題」10年前のコンポ価格を比較してみた、そんなお話しです。
「ロードバイク高すぎ問題」10年前のコンポ価格を比較してみた、そんなお話しです。

■ 10年前のロードバイク
まず10年前のロードバイクの構造を見てみます。
当時はリムブレーキが主流であり、ディスクブレーキはまだほとんど存在しない時代でした。
変速は機械式が主流で、Di2もありましたが、プロの世界でも機械式を使用している選手が多くいました。
ここで重要なのは、機械式変速機そのものは現在になっても大きくは変わっていないという点です。
当時は9000、6800、5800といった11速世代のコンポーネントが主流でした。
現在の機械式変速システムと大きな違いがあるのかというと、変速段数が少し増えた程度で、構造そのものは大きく変わっていません。
つまり10年たった現在でも、
・フロントディレイラー
・リアディレイラー
・クランク
の基本構造はほぼ同じです。
カセットスプロケットは多少変化し、当時よりもワイドなギア構成が一般的になりましたが、基本的な構造は大きく変わっていません。
では当時と現在で、何が大きく変わったのでしょうか。
ブレーキシステムです。
■ リムブレーキと油圧ディスクブレーキ
まず10年前の主流だったリムブレーキですが、これは非常にシンプルな構造です。
コントロールレバーの内部は、基本的にインナーワイヤーを引っ張る機構があれば成立します。
ワイヤーを引けばブレーキが動く、極めて単純な機械構造です。
一方で、現在のロードバイクで主流となっている油圧ディスクブレーキは、構造が大きく変わります。
コントロールレバーの内部には、マスターシリンダーなどの油圧機構が組み込まれるため、構造はかなり複雑になります。
単純にケーブルを引っ張るだけではなく、油圧化に伴いオイルを扱うためのマスターシリンダーや各種シールなど、油圧特有の構造が必要になります。
つまりコントロールレバーの内部に、油圧ブレーキシステムの一部を収める必要があるということです。
油圧ディスクブレーキは自転車のブレーキではありますが、構造としては自動車のディスクブレーキとよく似た仕組みを持っています。
当然ながら部品点数は増え、製造コストも上がります。

■ディスクブレーキへの移行が進んだわけ
ではなぜ、このように構造が複雑になるディスクブレーキへと移行が進んだのでしょうか。
これは単純にメーカーが新しいものを売りたかった、という話ではありません。
背景には安全性の問題があります。
ロードバイクは非常に速度の出る乗り物です。
平地でも40km/h前後、下りでは60km/hを超えることも珍しくありません。
プロのレースではさらに速度が出ることもあります。
プロのレースではさらに速度が出ることもあります。
しかし長年使われてきたリムブレーキは、構造的にいくつかの弱点を抱えていました。
特に問題視されていたのが雨天時の制動力です。
リムブレーキはホイールのリムを直接挟んで減速する仕組みです。
そのためリムが濡れていると、最初の一瞬はほとんど制動力が出ません。
いわゆる「ウォーターフィルム」をブレーキシューで拭き取るまで、ブレーキが効かない時間が生まれます。
また、カーボンリムの普及も問題を大きくしました。
カーボンリムはアルミリムと比べて、特に雨天時の制動力が弱くなる傾向があります。
こうした背景もあり、ロードバイクのブレーキ性能については長年議論が続いていました。
そして2023年には、自転車の安全規格である ISO 4210 が改訂されました。
この規格では
・制動距離
・操作安定性
・雨天時の性能
・高荷重条件
などの試験方法が整理され、より実際の使用環境に近い形で安全性を評価する方向へと見直されています。
特に重要なのが 雨天時のブレーキ性能です。
濡れた路面でも十分な制動性能を維持できることが求められるようになり、乾燥時と比べて極端に性能が低下することは好ましくないとされています。
こうした安全基準の考え方も、ロードバイクのディスクブレーキ化を加速させた要因の一つだと考えられます。
ブレーキの制動力が不足する状況があるということは、自分自身だけでなく、周囲にも危険をもたらしてしまう可能性があるということでもあります。
ブレーキの制動力が不足する状況があるということは、自分自身だけでなく、周囲にも危険をもたらしてしまう可能性があるということでもあります。
つまりディスクブレーキ化は、単なる流行というよりも安全性を高めるための必然的な進化だったと言えるでしょう。

■コンポーネントの価格を比較してみる
では実際に、コンポーネントの価格を比較してみます。
「ロードバイクは値上がりした」とよく言われますが、感覚だけでなく数字で見てみるとどうなのでしょうか。
今回はおおよそ10年前のコンポーネントと、現在のコンポーネントの価格を比較してみました。
比較したのは以下の組み合わせです。
・DURA-ACE
9000(リム) → R9200(油圧)
・105
5800(リム) → R7100(油圧機械式)
※価格は当時のカタログ価格ベースです。
実際の比較は以下の通りです。


こうして並べてみると、いくつか興味深いことが見えてきます。
まず大きく価格が上がっているのは
・STIレバー
・ブレーキ
この2つです。
また、他のグレードも含めて見えてくる特徴として、油圧ブレーキ関連のパーツは低価格帯でも高水準の価格になっているという点があります。
つまり低グレードであっても、油圧系のパーツはどうしても価格が高くなりやすいということです。
つまり低グレードであっても、油圧系のパーツはどうしても価格が高くなりやすいということです。
特にSTIレバーは、10年前の価格と比較するとかなり大きく上昇しています。
これは単純な値上げというよりも、構造が変わったことによる影響が大きいと考えられます。
前述のようにリムブレーキ時代のSTIは、基本的にはインナーワイヤーを引く機構が中心でした。
しかし現在のSTIは、油圧ディスクブレーキのマスターシリンダーを内部に持つ構造になっています。
つまりコントロールレバーの中に、油圧ブレーキシステムの一部が組み込まれているということです。
当然ながら部品点数も増え、構造も複雑になります。
その結果として価格も上がっていると考えられます。
一方で興味深いのが、変速系の価格はそこまで大きく変わっていないという点です。
・フロントディレイラー
・リアディレイラー
・クランク
これらは値上げはしていますが、構造自体 大きく変わったわけではありません。
つまり今回の価格差の多くは、ブレーキシステムの変化による影響が大きいと言えるでしょう。
またDi2のリアディレイラーが高額になっているのは、無線通信機能が内蔵されたことによる影響もあると考えられます。
■ フレーム構造の変化
ディスクブレーキ化は、ブレーキだけの問題ではありません。
フレーム側にもいくつかの変化を求めるようになりました。
まず油圧ディスクブレーキでは、ブレーキの力がフレームへ直接伝わります。
そのため左右の剛性バランスや、フレーム全体の剛性設計がより重要になりました。
さらにディスクブレーキの台座は、単に強度があれば良いというものではありません。
キャリパー台座の精度も重要になります。
このあたりも、リムブレーキ時代よりシビアな部分と言えると思います。
そしてもう一つ大きいのがフル内装化です。
ブレーキホースやシフトケーブルをフレームやハンドルの中に通す構造は、いまや多くのロードバイクで採用されています。
これは設計や製造の難易度を上げる要素でもありますが、同時に空力や見た目の面でもメリットがあります。
では逆に、内装しないロードバイクを作れば価格は下げられるのでしょうか。
実は必ずしもそうとは限りません。
外装ケーブルの場合、フレームにはアウター受けやケーブルガイドといった構造が必要になります。
こうした部分は単に穴を開ければ良いわけではなく、受け部を成形したり補強を入れたりする必要があり、製造工程としてはそれなりに手間がかかります。
またケーブル出口や受け部の周辺は、フレーム剛性の確保という点でも設計上の配慮が必要になります。
そのためフル内装の構造であれば、こうした外装用の受け部構造を減らすことができ、設計としてはシンプルになる側面もあります。
また店頭で
・フル内装の完成車
・外装ケーブルの完成車
が並んでいた場合、よほど整備性や今後の運用まで考えているマニアックな方でない限り、多くの人は前者を選ぶのではないでしょうか。
理由はシンプルです。
見た目がスッキリしていますし、空力的にも有利、普段の使用ではほとんどデメリットを感じないからです。
実際、多くのユーザーにとってメンテナンスと言えば
・簡単な掃除
・チェーンの注油
程度であり、分解整備まで自分で行う人はそれほど多くありません。
ブレーキのエア抜きやケーブル交換などの整備は、ショップに依頼するという使い方が一般的でしょう。
そう考えると、ユーザーの立場から見ればフル内装のデメリットはそれほど大きくありません。
つまりメーカーとしても、市場のニーズを考えればフル内装に舵を切らざるを得ない状況になっているのだと思います。
■ まとめ
さらに視点を少し変えてみます。
この10年で値上がりしたものは、ロードバイクだけではありません。
| 品目 | 約10年前(2015頃) | 現在(2024〜2025頃) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 米(5kg) | 約1,800〜2,000円 | 約2,500〜3,000円 | 約1.3〜1.5倍 |
| 卵(10個) | 約180〜220円 | 約280〜350円 | 約1.4〜1.7倍 |
| トイレットペーパー(12ロール) | 約300〜350円 | 約450〜550円 | 約1.4〜1.6倍 |
| ガソリン(レギュラー/L) | 約130円 | 約160〜180円 | 約1.2〜1.4倍 |
| チョコレート(板チョコ) | 約100円 | 約150〜200円 | 約1.5〜2倍 |
※総務省CPI・小売相場の傾向からの概算です。
こうした生活必需品も日常的に消費するものも、この10年でかなり値段が上がっています。
こうした生活必需品も日常的に消費するものも、この10年でかなり値段が上がっています。
加えて、ロードバイクやコンポーネントの多くは海外製品です。
この10年で為替も大きく変わり円安が進んでいます。
同じ製品であっても、円安が進めば日本での販売価格はどうしても上がります。
つまり価格上昇は、単純にメーカーが値上げしたというだけではなく、為替の影響もかなり大きいということです。
また為替だけではなく、輸送費や原材料の高騰といった外部要因も大きく影響しています。
また為替だけではなく、輸送費や原材料の高騰といった外部要因も大きく影響しています。
確かにロードバイクは高くなりました。
しかしこうした世界的なインフレを考えると、油圧ディスクブレーキ化という構造的なコスト増を除けば、SHIMANOのコンポーネント自体は、むしろ比較的価格上昇を抑えている方だと言えるのかもしれません。
少なくとも他の製品と比べても、特別に価格高騰が激しい製品というわけではないように思われます。
その背景には、ブレーキシステムの進化や安全性の向上、そして為替の変動といった明確な理由があります。
単純に「値上げされた」と考えるだけではなく、その構造や背景を見てみると、また少し違った見え方がしてくるのではないでしょうか。
ということで今回は、
「ロードバイク高すぎ問題」10年前のコンポ価格を比較してみた、そんなお話しでした。
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・ご希望の整備内容
・ご希望の日程
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