ロードバイクの油圧ディスクブレーキは、現在かなり完成度が高くなっています。
以前のように、グレードによって明らかに効きが違う、扱いづらい、タッチが大きく異なる、ということは少なくなってきました。
実際、ULTEGRAのBR-R8170でも105でも普通によく効きます。
そのため、ブレーキキャリパーだけをDURA-ACEであるBR-R9270に交換する意味があるのか、と考える方も少なくないと思います。
しかし実際に使い比べてみると、DURA-ACEのBR-R9270はやはり良いブレーキだと感じます。
実際の制動力だけではなく、整備的なメンテも有利に感じる部分が多くあります。
このあたりを含めると、やはりBR-R9270にはDURA-ACEグレードらしい価値があると思います。
今回は、そんなBR-R9270に関して、価格差に対する価値について書いてみます。

DURA-ACE BR-R9270 をおすすめする理由
① BR-R9270 の制動力
BR-R9270はULTEGRAのBR-R8170と比較すると、ブレーキの立ち上がり自体は大きく変わりません。
レバーを握り始めて、パッドがローターに当たり、制動力が立ち上がってくるところまでは、どちらも十分に良いです。
ですが、そこからレバーを握り込んでいった時の感触が違います。
BR-R9270は、強めにブレーキをかけていったときのキャリパーのかっちり感、剛性感が高く感じます。
レバーを握った分だけ制動力が分かりやすく立ち上がり、強くかけたときにもキャリパー側で逃げるような感覚が少ないです。
BR-R9270のキャリパーは、DURA-ACEグレードのみの「モノボディ」ワンピース設計となっています。
単一の冷間鍛造されたブロックから加工されたワンピース設計により、パーツ点数を抑えつつ、軽量性と高いキャリパー剛性を実現しているとされています。
実際に使ってみると、制動力を高めていった際の変化が非常に分かりやすく、体が前に持っていかれるような強いブレーキング時でも、剛性感は非常に高く感じます。
よりかっちりとしていて、制動力をコントロールしやすいことが特徴です。
これがBR-R9270の分かりやすい良さだと感じています。
実際、お客様からの交換後の印象でもBR-R9270の評判はかなり良いです。
「ブレーキが良い」というのはなかなか言葉にしづらい部分ですが、乗れば違いを感じる方は多いのではないかと思います。
② SHIMANO病(パッドクリアランス問題)が少ない
そして、これは整備をしていると特に感じる部分です。
いわゆる“SHIMANO病”、パッドクリアランスの減少症状です。
これは、考えられる要因は複数あるものの、何らかの原因で通常よりもピストンの戻りが悪くなり、パッドクリアランスが狭くなるという現象です。
ブレーキを解除してもピストンがしっかり戻らず、パッドとローターの隙間が狭くなってしまいます。
その結果、ローターとパッドが干渉しやすくなったり、レバーの引き代が少なくなったりします。
以前の記事でも詳しく書きましたが、油圧ディスクブレーキのパッドクリアランスは、基本的にキャリパー側で決まります。
レバー側のリーチアジャストやフリーストローク調整で、根本的にパッドクリアランスそのものを自由に調整できるわけではありません。
ですので、キャリパー側でピストンが出すぎてしまう、または戻りきらない状態になると、調整だけではどうにもならない場合があります。
もちろん、ピストンの動きが悪くなる原因はひとつではありません。
汚れの蓄積、メンテナンス不足、オイルやシールまわりの状態など、考えられる要素はいくつかあります。
しかし、清掃やピストンリセットを行っても改善しないケースもあります。
この症状が出てしまうと、現在使用しているディスクローターとブレーキパッドの組み合わせでは干渉の問題が出ていない場合でも、どちらか、もしくは両方を新品に交換した際に、パッドクリアランスの狭さが問題になることがあります。
新品パッドや新品ローターでは厚みが戻りますし、微妙な反りもあります。
そのためどうしてもクリアランスが不足し、ローターとパッドが擦ってしまう状態になることがあります。
そのためどうしてもクリアランスが不足し、ローターとパッドが擦ってしまう状態になることがあります。
そして、この状態になると、通常のキャリパー位置調整だけではどうにもならない場合があります。
詳しくは以前の記事でも書いています。
この症状にはピストンシールまわりの影響が大きい可能性があると考えています。
BR-R9270では、少なくともR8170やR7170と比べて、BR-R9270はこの症状が少ないと感じています。
DURA-ACEでこの症状が少ない理由について、メーカーから明確な説明があるわけではありません。
ピストンシールそのものの違いなのか、キャリパー本体の精度なのか、内部構造の仕上げによるものなのか、確実な理由は分かりません。
しかし、実際に使っていて、また整備で見ていて、BR-R9270のほうがパッドクリアランスまわりの問題は起こりづらい印象があります。
ここはBR-R9270を選ぶ大きな理由のひとつとなります。
③ 腐食トラブルも比較的少ない印象
もうひとつ感じるのが、腐食の少なさです。
せっかくなので、ここも少し深掘りしてみます。
ブレーキキャリパーの早期腐食は、もちろんBR-R9270でもまったく起きないわけではありません。
しかし実際に見ている印象としては、BR-R8170やBR-R7170の方が腐食を見かける機会のほうが多いです。流通数に差があることは考慮した上でも、そのように感じています。
参考までに、こちらは腐食が起きているULTEGRAキャリパーの例です。

画像を見ると、腐食はキャリパー全体に均一に出ているというよりも、ボルト周辺、合わせ面、細かな隙間の周囲から広がっているように見えます。

こちらも同様に、キャリパーの合わせ面付近やボルト周辺に白い腐食が目立ちます。
もちろん腐食の発生原因を断定することはできませんが、水分や汚れが残りやすい部分から腐食が進んでいるように見える症例です。
BR-R9270は、シマノ公式でも「単一の冷間鍛造されたブロックから加工したMONO-BODYキャリパー」とされ、いわゆるワンピース構造です。
一方で、BR-R8170やBR-R7170は同じモノボディ構造ではありません。
キャリパー本体に合わせ面や締結部がある構造の場合、その周辺に水分、汗、洗浄液、ブレーキダストなどが残りやすくなる可能性があります。
腐食は、見えている表面だけではなく、ボルト周辺や合わせ面、細かな隙間に残った水分から進むことがあります。
その意味では、BR-R9270のモノボディ構造は、腐食リスクを減らす方向に働いている可能性があります。
ただし、ここは断定できることではありませんが、腐食の出やすさは、使用環境、雨天走行の頻度、洗車後の乾燥状態、保管環境、汗やスポーツドリンクの付着などによっても大きく変わります。
個人的には、やはり水分の影響が大きいと考えています。
特に腐食トラブルは、フロントよりもリア側で多く見かけます。
リアキャリパーは汗やスポーツドリンク、雨水、洗車後の水分が残りやすい位置にあります。
また、リアキャリパーの取り付け角度的にも、隙間に水分が残りやすく、水が抜けにくい構造になりやすいです。
対策としては、雨天走行後や洗車後、汗やスポーツドリンクがかかった可能性がある場合に、しっかり洗って水分を残さないことが大切です。
特に重要なのは、表面だけではなく、隙間に入り込んで残留する水分です。
見える部分を拭くだけでは、キャリパーの合わせ面、ボルト周辺、細かい段差部分に水分が残ってしまうことがあります。
可能であれば、エアでしっかり水分を飛ばしてあげると、腐食をかなり防ぎやすくなる印象があります。
■ 交換するなら前後セットがおすすめな理由
では、BR-R9270に交換する場合、フロントだけで良いのか。
それとも前後セットで交換したほうが良いのか。
制動力の向上や性能面だけを考えれば、フロントだけでも効果は感じやすいと思います。
ブレーキ時はフロント側に大きく荷重が乗ります。
そのため、強いブレーキング時の剛性感やコントロール性は、フロント側のキャリパーを交換するだけでも分かりやすいです。
しかし、基本的には前後セットでの交換をおすすめしております。
理由は、性能面だけではなく、腐食やパッドクリアランスの問題まで含めて考えたいからです。
腐食はリア側で見かけることが多く、パッドクリアランスの問題もリアだけに起こる可能性があります。
また、交換作業の面でも前後同時交換には意味があります。
フロントだけを交換する場合でも、現在のフル内装フレームではヘッド周りをバラす必要が出ることがあります。
その場合、リアだけを残しておいたとしても、作業工賃が大きく変わらない場合があります。
油圧ブレーキキャリパーの交換では、ホースの脱着、オリーブ・インサートの交換、オイル作業、エア抜きなどが必要になる場合があります。
車体によってはホース長の問題や内装ルーティングの関係で、思った以上に手間がかかることもあります。
どうせバラすのであれば、前後まとめて作業してしまったほうが効率的です。
もちろん、予算や目的によってはフロントだけ交換という選択もありです。
ただし、BR-R9270の良さを「剛性感」だけではなく、「トラブルの少なさ」「腐食の少なさ」「長く安心して使うこと」まで含めて考えるなら、前後セットでの交換がよりおすすめです。
■ まとめ
ブレーキは、軽量化パーツや空力パーツとは少し性質が違います。
交換したからといって、すぐに何秒速くなるというものではありません。
しかし、走るたびに必ず使うパーツです。
下りでも、街中でも、信号でも、コーナー手前でも、ブレーキは毎回使います。
BR-R9270には、握り込んだときの剛性感、制動力の分かりやすさ、コントロールのしやすさがあります。
BR-R9270には、握り込んだときの剛性感、制動力の分かりやすさ、コントロールのしやすさがあります。
ブレーキング時の性能は、数字では表しにくいですが、実際の走りではかなり大きな差になります。
特に下りの多いコースや、スピードが出る場面では、ブレーキへの信頼感がそのまま走りやすさにつながります。
BR-R9270は、ひとつ下のグレードであるULTEGRAのBR-R8170と比べても高価です。
単純にコストパフォーマンスだけで考えれば、BR-R8170で十分という方も多いと思います。
もちろん、BR-R9270なら絶対にトラブルが起きないわけではありません。
使用環境やメンテナンス状態によっても差は出ますし、原因を断定できない部分もあります。
それでもパッドクリアランス問題や腐食の少なさという面でも安心感があります。特に、過去にBR-R8170やBR-R7170でトラブルを経験した方、キャリパーの腐食が気になる方、ブレーキタッチや剛性感にこだわりたい方には、BR-R9270はかなり有力な選択肢になると思います。
また、下りの多いコースを走る方や、体重が重めでブレーキへの負荷が大きい方にとっても、この安心感は大きな価値になります。
BR-R9270は、DURA-ACEらしい世界最高峰クラスのブレーキキャリパーだと感じています。
FF-Cycle(エフエフサイクル)
〒262-0019
千葉県千葉市花見川区朝日ヶ丘1-21-2
※当日の受付は18:00までとさせていただきます。
作業は18:00以降も行います。
TEL:043-376-1121
(整備中、接客中等 電話を受けれない場合は番号通知にておかけいただければ折り返しお電話をさせていただきます。)
E-Mail:ffcycle@outlook.jp
※ご連絡をいただく際には
・お名前
・ご連絡先
・ご希望の整備内容
・ご希望の日程
こちらをお申し付け下さい。
また整備内容によっては、車体メーカー、モデル名、ホイール、コンポーネントなども合わせてご連絡をお願い致します。
ロードバイクの健康診断・カスタマイズ相談的なこともお受けいたします。当店の特徴・詳細ははこちらから
コメント