SHIMANO FC-R9200-Pの精度は本当に正確なのか。

海外のレビューではやや厳しめの評価も見かける製品ですが、
実際の使用感や数値はどうなのか気になっている方も多いと思います。

ワタクシ自身としては普段使っている限りでは、そこまで大きな違和感はありませんでした。

気温が大きく変わる日でも、途中でキャリブレーションを行ってもパワー値が大きく変動することはなく、全体としては比較的安定している印象です。

ただし、どうしても気になる点が2つありました。

ひとつは左右バランス。
もうひとつはスプリント時の最大パワーです。

特に左右バランスについては、私の場合は明確で、
ほぼ常に45/55。

右が強く、左が弱い状態です。

この傾向には導入してすぐに気づいていたのですが、
「本当にこれが正しいのか?」
という疑問はずっと残っていました。

そしてもう一点。

スプリント時のパワーが、実際よりも低く出ているのではないかという点です。
室内のCYCPLUSのスマートトレーナーでは1000Wを取りこぼすことはないのですが、実走のFC-R9200-Pだとどうしてもあと数十ワットがでないのです。

もしこの2点が大きくズレているのであれば、パワーメーターとしてはかなり厄介です。

そこで今回は、この2点を中心に検証するため、
比較的精度が高いとされている CYCPLUS T3 と実際に比較してみることにしました。

20260323_082353-COLLAGE
※本記事の比較はCYCPLUS T3を基準とした相対比較であり、絶対的な真値を保証するものではありません。

■ 比較方法
というわけで、まずは実際に比べてみます。

今回は、
SHIMANO FC-R9200-P と CYCPLUS T3 の2つを同時に使用して、同一ライド内でデータを取得しました。

記録はそれぞれ別系統に分けています。
・FC-R9200-P → Garminで記録
・CYCPLUS T3 → COOSPOのサイコンで記録

この状態で、
・200W前後の巡航
・300W前後の負荷
・500W以上の高出力
・ごく短時間スプリント

と、様々な強度を一通り実施しています。

そして取得した2つのログを、最終的に
Zwift Power上で合成(いわゆる“ガッチャンコ”)して比較しました。

同一条件でのデータをそのまま重ねているので、
単純な体感ではなく、数値としての差がそのまま見える形になっています。
PXL_20260322_220741322.MP

■ 実際に比べてみた結果
まずは良かった点から。
・最大パワーのズレはかなり小さい
・ケイデンスも誤差は0.12%と極めて小さい

たとえばスプリントでは、
・FC-R9200-P:1031W
・CYCPLUS T3:1040W
スクリーンショット 2026-03-23 122812

といった具合で、最大パワーの差はかなり小さい結果でした。

ここに関しては、少なくとも「大きく低く出ている」というような印象は見られませんでした。


一方で、左右バランスに関しては今回の比較では完全な検証はできていません。

というのも、今回の記録ではT3側のログに左右バランスのデータが含まれておらず、
厳密な比較ができる条件ではなかったためです。

ただし、仕様上はCYCPLUS T3は左右バランスの表示に対応しており、
アプリ上ではパワーやケイデンスとともにリアルタイムで確認できるとされています。

そのため、本来であれば左右バランスの取得・比較も可能なはずで、
今回データとして記録できなかった原因については現在調査中です。

この点については、条件を整えて再度検証してみたいと思います。

確認できたのは、FC-R9200-P側のデータのみで、
・FC-R9200-P:平均 L/R → 47 / 53
と、普段の45/55よりも、やや左右差が小さくなっている程度でした。

左右バランスについては、今回の検証だけで結論を出せるものではありませんでした。

左右バランスについては今後の課題として引き続き見ていきますが、
最初に疑っていた部分が、少なくとも今回の比較では大きな問題ではなかった、というのは一つの収穫です。


■ 本当に困ったのは常用帯
ところが、今回検証してみたところ、予定外の部分で大きな差が出ていることが分かりました。

それは、肝心要の常用帯です。
正直ここは、ちょっと無視できないレベルでした。

最大パワーやスプリント時のピーク値については、今回の比較では大きなズレは見られませんでした。
しかしその一方で、実際に最も長く使うことになる200W〜300W付近の出力では、FC-R9200-Pが一貫して低めに出ていました。

しかもこれは単発ではなく、複数の区間で同じ傾向が出ています。


✓200W付近の巡航域
まず200W付近の巡航域です。

このあたりはテンポ未満の巡航、ウォームアップ後のベース走、あるいは日常的な実走で最もよく使う帯域です。
ここで既に差が出ています。

まずはこちら、200Wで2分間、ケイデンスを70rpm、90rpm、110rpmと変えた区間です。
200WCadence
FC-R9200 T3
70rpm 204.9W 214.5W 4.48%
90rpm 181.4W 184.5W 6.25%
110rpm 197.6W 209.6W 5.73%

※200W付近ではおおむね5〜6%低め、ケイデンスを変えても、ほぼ同じ方向にズレる

さらに別区間でも同様です
200W
FC-R9200 T3
スプリント入り 215W 229.2W 6.20%
137秒 198W 210.7W 6.03%
80秒 190.3W 203.1W 6.30%

※200W付近ではおおむね5〜6%低め

画像を見ても、FC-R9200-Pの線は全体的に少し下をなぞるような形になっており、
これは一発の誤差というより、系統的に低いと見た方が自然です。

✓ 300W付近の巡航域
さらに問題なのは、これが200W帯だけの話ではないことです。

300W前後、つまりテンポ上限〜SST〜FTP付近に入っても、FC-R9200-Pはやはり低めに出ています。

300Q
FC-R9200 T3
59秒 313.1W 328W 4.50%
70秒 297.9W 314.8W 5.37%

このあたりは、私のようにトレーニングで一番重視している帯域です。
SSTも、閾値付近も、ヒルクライムの実戦強度も、まさにこの周辺です。

つまり、一番合っていてほしい帯域でズレているということになります。


✓ 500W付近
一方で、出力がさらに上がった区間では、この差はやや変化します。
500W
FC-R9200 T3
34秒 480.4W 495.1W 2.97%
31秒 506.7W 533.6W 5.00%

500W付近でも低め傾向自体は続いていますが、200〜300W帯ほど「常に同じだけズレる」というよりは、条件によって少しばらつく印象です。

✓全体の傾向
個別区間だけではなく、全体のクリティカルパワー傾向を見ても同様です。
Aios
FC-R9200 T3
全体平均 164.5W 173.5W 5.19%

※短時間のスプリントを除けば、概ね5%前後低め


とこのように超短時間のスプリント以外では、概ねFC-R9200-Pは約5%前後低めに出る傾向が見られました。

このズレは単発ではなく、複数条件・複数区間で同じ方向に出ているため、
偶然ではなく“特性”として見た方が自然かと思われます。


■ なぜこのズレが問題なのか、そして結論
最大パワーが少しズレるよりも、実はこの常用帯のズレの方が厄介です。

なぜなら、200〜300Wというのは単なる巡航出力ではなく、
・テンポ
・SST
・FTP付近
・ヒルクライムの実戦強度

といった、トレーニングの中核になる帯域だからです。

ここが毎回5%前後低く出るなら、表示を信じて合わせたときに、実際には余計に踏んでしまうことになります。
逆に言えば、普段見ている「ちょうど良い強度」が、少しずつズレている可能性があるということです。

今回の比較で見えたことをまとめるとこうなります。
・L/Rバランスと最大パワーは、少なくとも今回の比較では大問題ではなかった
・しかし200〜300Wの常用帯ではFC-R9200-Pが低めに出る傾向が見えた
・しかも単発ではなく、複数区間で同じ方向にズレていた

結論としては、
→ パワーが高く出る、いわゆる「ハッピーメーター」よりはまだ良い
と考えています。

高く出る機材は、気分は良くてもトレーニングを確実に狂わせます。
その意味では、低めに出る方がまだ扱いやすいです。

ただし、ここで一番重要なのは再現性です。

もし毎回ほぼ同じように低く出るのであれば、
「このパワーメーターは常用帯で約5%低い」と分かった上で、強度を調整すれば済みます。

しかし、
・日によってズレ幅が違う
・強度や条件によって大きく変わる
・今日は合うが別の日は合わない

となると話は変わります。

その場合は単なる癖ではなく、
→トレーニング機材としての信頼性そのものの問題になります。


■ まとめ
今回の比較で分かったのは、FC-R9200-Pが全ての領域で問題があるわけではないということでした。

スプリント時の最大パワーやケイデンスについては大きなズレは見られず、
少なくとも「ピークが大きく狂うタイプのパワーメーターではない」ということは確認できました。

一方で、200〜300W付近の常用帯では、一貫して低めに出る傾向が見られました。
しかもこれは単発ではなく、複数の区間で同じ方向にズレています。

現時点での整理はこうなります。
・最大パワー:大きな問題は見られない
・L/Rバランス:完全に崩壊しているわけではない(ただし評価は保留)
・常用帯(200〜300W):一貫して低めに出る可能性あり
・再現性:今後の確認が最重要
現状の印象としては、

「全域で不正確」ではなく「特定帯域に癖があるタイプ」です。

このタイプの機材は、使えないわけではありませんが、
扱い方を理解して使う必要があるパワーメーターだと感じています。

そして最終的な評価を決めるのはここです。

→ このズレが毎回同じように出るのかどうか(再現性)

もしこの傾向が安定して再現されるのであれば、
特性として理解した上でトレーニング強度を調整することは可能です。

しかし、日によってズレ方が変わるようであれば、
それは単なる癖ではなく、計測機器としての信頼性の問題になります。

さらにもう一点、重要なのがここです。
今回のズレが「この個体特有のものなのか」、それとも「FC-R9200-P全体の傾向なのか」

今回の検証だけではここは断定できません。

もし個体差であれば、交換や別個体で改善する可能性があります。
一方で、これが製品としての特性であれば、使用者側で理解して付き合っていく必要があります。

この点については、条件を変えながら継続的にデータを取り、改めて検証していきたいと思います。

+++++++++++++++++++++++++++
FF-Cycle(エフエフサイクル)
〒262-0019
千葉県千葉市花見川区朝日ヶ丘1-21-2
※当日の受付は18:00までとさせていただきます。
作業は18:00以降も行います。
TEL:043-376-1121
(整備中、接客中等 電話を受けれない場合は番号通知にておかけいただければ折り返しお電話をさせていただきます。)
E-Mail:ffcycle@outlook.jp
※ご連絡をいただく際には
・お名前
・ご連絡先
・ご希望の整備内容
・ご希望の日程
こちらをお申し付け下さい。
また整備内容によっては、車体メーカー、モデル名、ホイール、コンポーネントなども合わせてご連絡をお願い致します。
ロードバイクの健康診断・カスタマイズ相談的なこともお受けいたします。
当店の特徴・詳細ははこちらから