今回は、GCN Techの動画
「Everything You Thought About Weight Is WRONG」の内容をベースに、軽量化の効果を数値で整理してみます。
「1kg軽くなれば速くなる」これは間違いではありません。
ただし、その“どれくらい速くなるのか”を具体的な数字で見ると、機材選びの優先順位は少し変わってきます。
ロードバイクの世界では、昔から「軽さは正義」と言われます。
完成車重量、ホイール重量、タイヤ重量、ボトルケージ重量まで、何かを選ぶたびにまず見てしまうのが“重さ”です。
特にヒルクライムを意識していると、「あと1kg軽くなればかなり速くなるのでは」と考えたくなります。
実際、軽量化には意味があります。これは間違いありません。
ただし、その効果は思っているほど絶対的ではないというのも事実です。
今回見た動画では、「1kgの軽量化」が実際にどの程度のタイム差、あるいはワット差に相当するのかを、かなり分かりやすく数値で整理していました。
感覚ではなく数字で見ると、軽量化の価値がかなり冷静に見えてきます。
1時間の登りで1kg差が生むタイム差
■ 1kg軽くなると、1時間の登りで何秒変わるのか
動画内では、「1時間の登坂で重量が1kg違うと、タイム差はどれくらいか」という表が示されています。
条件は、体重60kg・80kg、そして4W/kg・6W/kgという複数のパターンです。
1時間の登りで1kg差が生むタイム差
| 条件 | 勾配3% | 勾配5% | 勾配10% | 勾配20% |
|---|---|---|---|---|
| 60kg・4W/kg | 22秒 | 35秒 | 48秒 | 52秒 |
| 60kg・6W/kg | 16秒 | 31秒 | 44秒 | 51秒 |
| 80kg・4W/kg | 19秒 | 31秒 | 38秒 | 40秒 |
| 80kg・6W/kg | 14秒 | 22秒 | 35秒 | 40秒 |
ここでまず見えてくるのは、1kgの差は確かに効くということです。
特に斜度がきつくなるほど、その差は大きくなります。
ただ一方で、例えば1時間登るヒルクライムであっても、勾配3%では14〜22秒程度、勾配5%でも22〜35秒程度です。
つまり、1kg軽くしたからといって、劇的に世界が変わるわけではありません。
このあたりが、感覚と現実がズレやすいところです。
しかも、強い人ほど「1kgの差」は小さく見えてくる
表を見ると分かる通り、同じ1kg差でも、体重が軽い人ほど、そして相対的に出力が低い人ほど影響は大きくなります。
逆に言えば、体重が重い人や、より高い出力で登れる人にとっては、1kg差の影響は相対的に小さくなります。
たとえば勾配10%でも、
・60kg・4W/kgでは48秒差
・80kg・6W/kgでは35秒差
となっています。
もちろん35秒も小さい数字ではありません。
ただ、「軽ささえあれば勝てる」というほど単純でもない、ということです。
1kg軽量化は、ワットでいうとどのくらいか
この動画で特に面白いのがここです。
重量差を、登坂時の必要ワット差として見せています。
スクショの表では、1kg差はおおむね次のような値になっています。
1kg差をワット換算すると
| 条件 | 勾配3% | 勾配5% | 勾配10% | 勾配20% |
|---|---|---|---|---|
| 60kg・4W/kg | 2.9W | 3.3W | 3.5W | 3.5W |
| 80kg・4W/kg | 3.0W | 3.4W | 3.5W | 3.8W |
| 60kg・6W/kg | 3.7W | 4.6W | 5.1W | 5.3W |
| 80kg・6W/kg | 3.8W | 4.7W | 5.2W | 5.4W |
つまり、かなり急な登りであっても、1kgの差はおおむね3〜5W程度という見方ができます。
これをどう受け取るかです。
1kg軽くするために高額なパーツをいくつも入れるのか。
それとも、3〜5Wぶんを別の方法で稼ぐのか。
ここから先は、かなり現実的な話になります。
軽量化は効く。だが、効率は良いのか
ここが一番大事なところです。
1kg軽くすること自体は意味があります。
しかしロードバイクの世界では、その1kgを削るためにかなり大きなお金がかかることがあります。
フレーム、ホイール、クランク、サドル、ハンドル、ケージ、ボルト類。
確かに積み重ねれば軽くなります。
ただ、そこにかかるコストを考えると、得られる3〜5Wぶんの効果に対して本当に見合っているのかは、かなり冷静に考えたほうがよいと思います。
特に一般ライダーにとっては、ここで順番を間違えると遠回りになりやすいです。
重量より先に見直したいもの
この動画が面白いのは、「軽量化は無意味」とは言わず、もっと先に効くものがあると示している点です。
まずは出力そのもの
当たり前ですが、登坂ではパワーが出せるほうが強いです。
1kg軽量化が3〜5W相当なら、トレーニングによって数W上積みする価値は非常に大きいと言えます。
しかも、出力向上は登りだけでなく、平坦でも向かい風でも効きます。
ここが軽量化との大きな違いです。
タイヤと空気圧
これは実走派ほど効いてくる部分です。
転がり抵抗が小さいタイヤ、適正な空気圧、路面との相性が良い組み合わせは、登りでも平坦でも確実に効きます。
しかも軽量化と違って、単純な重量だけではなく、乗り心地・グリップ・安心感・持続性まで変わってきます。
実際の速さという意味では、こちらのほうが体感差が大きいことも珍しくありません。
駆動系のメンテナンス
汚れたチェーン、抵抗の大きいルブ、荒れた駆動系は、確実に損をします。
しかもこれは比較的低コストで改善できます。
高価な軽量パーツを入れる前に、チェーン周りをきちんと管理したほうが手堅い。
これはかなり現実的な話です。
姿勢と空力
ヒルクライムだけを切り取ると重量は目立ちます。
しかし、実際のライドは登りだけではありません。
巡航、下り、緩斜面、向かい風。
こうした場面では空気抵抗の比重が大きくなります。
つまり、少し重くても空力や姿勢が良いほうが、トータルでは速いということは普通に起こります。
ヒルクライムで軽量化は不要なのか
もちろん、そんなことはありません。
ヒルクライムでは軽量化は確かに有効です。
特に、
・すでにトレーニングがある程度詰められている
・タイヤや空気圧の最適化も進んでいる
・ポジションや機材バランスも煮詰まっている
このような段階では、最後の詰めとしての軽量化は十分意味があります。
問題は、そこに行く前の段階で、軽さだけを優先してしまうことです。
たとえば、タイヤは重いけれどよく転がるものもあります。
少し重くても安定感が高く、安心して踏める機材もあります。
実走では、そのほうが結果的に速いことも多いです。
つまり、「軽い=速い」と単純化してしまうと、機材選びを誤りやすくなります。
富士ヒルのような場面ではどう考えるべきか
ヒルクライムイベントでは、たしかに重量差は効きます。
ただし、それでも順番は大事です。
まず優先したいのは、
・しっかり踏み続けられる身体
・無理なく転がるタイヤ
・不安なく踏めるポジション
・抵抗の少ない駆動系
・補給やコンディション管理
この土台ができていない状態で軽量化だけを進めても、効果は限定的です。
逆に、そのあたりがすでに高い水準にあるなら、最後に数百gを削る価値は出てきます。
この順番で考えると、軽量化はかなり納得しやすくなります。
結局、軽量化はどう位置づけるべきか
今回の動画を見て改めて感じたのは、軽量化は「大事ではあるが、最優先ではない」ということです。
・1kgの差は確かに効きます。
・1時間の登りなら十数秒から数十秒の差になります。
・ワットにすれば3〜5W程度の価値があります。
これは小さい数字ではありません。
ただ、それを得るために払うコストや、他の改善項目との比較まで含めて考えると、軽量化だけを特別視しすぎるのは少し危ういと思います。
軽さは魅力です。
持った瞬間に分かりますし、スペック表でも目立ちます。
しかし、実際の速さは軽さだけでは決まらない。
むしろ、タイヤ、空気圧、駆動抵抗、姿勢、そして何より継続的に踏める身体のほうが、先に効いてくる場面はかなり多いはずです。
まとめ
軽量化は確かに効きます。
ただし、思っているほど魔法ではありません。
1kg軽くして得られる効果は、1時間の登りで十数秒から数十秒。
ワットにすると3〜5W程度です。
この数字をどう受け取るかで、機材選びの優先順位はかなり変わります。
高価な軽量パーツに投資する前に、
まずはタイヤ、空気圧、駆動系のメンテナンス、ポジション、そしてトレーニングを見直す。
そのうえで、最後の詰めとして軽量化を考える。
この順番のほうが、結果として速くなりやすい。
今回の動画は、その当たり前だけれど見落としやすいことを、数字で冷静に見せてくれる内容でした。
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