以前、リアでAGXEROを使ったことがあります。
ただ、そのときは正直なところ、そこまで強い印象は残りませんでした。
というのも、PanaracerにはAGILEST FASTという、速さをかなり強く打ち出したモデルがあります。
そしてこのFASTは、実際に乗ると漕ぎ出しから「あ、速い」と分かるタイプのタイヤです。
少なくともワタクシにとっては、かなり印象の強いタイヤでした。
そんなこともあり、AGXEROはどこか後回しになっていました。
ところが今回、FASTに気になるトラブルが出たことをきっかけに、改めてAGXEROをフロントで試し、さらに実走ログでも比較してみることにしました。
すると、単純な速い・遅いではなく、かなり分かりやすい特性の違いが見えてきました。
今回はそのあたりを、実際の体感と数値の両方から整理してみようと思います。

1. 比較条件
今回の比較条件からです。
今回は、フロントタイヤのみを変更した実走比較です。
リアタイヤは共通で、どちらも Michelin Power Cup TLR 30c を使用しています。
比較したフロントタイヤは以下の2本です。
・Panaracer AGILEST FAST
・Panaracer AGXERO
※双TLR 方28c 同空気圧4.1BAR
走行はどちらも、同じルートを同じパワーで走行した、実走データをもとにしています。
同じルートを同じメニュー(強度)で走行しているため、速度やコーナーの傾向が見やすいです。
今回比較したかったのは、単純な平均速度だけではありません。
・全体の速度・タイム
・最高速の出方
・コーナー付近での速度の落ち方
・実際に乗って感じる転がり感や接地感
これらを、体感と実走ログの両方で見ています。
とは言っても、これはあくまで屋外で行った実走比較です。
風向きや気温、交通状況、その日の脚の状態まで完全に揃えたテストではありません。
したがって、今回の記事は「厳密な実験結果」というより、実際に走った中で見えてきた傾向を整理したものとしてお読みいただければと思います。
それでも、今回の比較では数字上でも、差を見ることができました。
単純にどちらが速いか、だけではなく、どういう場面でどう違うのかが比較的はっきり出たのは収穫でした。
FASTは独特で、走り出してすぐに軽さを感じることができるタイヤです。
やはりフロントでも際立った軽さを感じるほどではありませんでした。
それでも、気温の影響もあるのかもしれませんが、リアで目立っていた硬さやコンプライアンスの低さは、そこまで気になりませんでした。
むしろFASTと比べてもどちらかというと、意外としっとりとしているように感じ、FASTのパリッとした硬さとの違いを感じることができました。
そしてリアでも大きなメリットと感じていた、コーナリングです。
2. フロントで使ってみた感想
体感の話です。
やはりリアで使用したときと同様に、フロントでも全体として“よく転がる”と感じるのはAGILEST FASTのほうだということです。
やはりリアで使用したときと同様に、フロントでも全体として“よく転がる”と感じるのはAGILEST FASTのほうだということです。
FASTは独特で、走り出してすぐに軽さを感じることができるタイヤです。
漕ぎ出しの一発目から抵抗感が少なく、速度に乗せていくときの感触も軽いです。さらに、ある程度スピードが乗ってからの伸び方も良く、全体として軽快に進んでいく印象があります。
これは以前から感じていたことですが、今回改めて比較してみても、その印象は大きく変わりませんでした。
一方で、AGXEROが悪いかというと、そういう話でもありません。
正直、以前リアで使ったときは、そこまで強い印象は残りませんでした。
どうしてもFASTの分かりやすい軽さが強烈なので、AGXEROは少し地味に見えてしまいます。
ただ、今回フロントで使ってみると、印象は少し変わりました。
やはりフロントでも際立った軽さを感じるほどではありませんでした。
それでも、気温の影響もあるのかもしれませんが、リアで目立っていた硬さやコンプライアンスの低さは、そこまで気になりませんでした。
むしろFASTと比べてもどちらかというと、意外としっとりとしているように感じ、FASTのパリッとした硬さとの違いを感じることができました。
そしてリアでも大きなメリットと感じていた、コーナリングです。
しなやか、というよりは少しゴム感のある弾むような感触ですが、それでも路面をしっかり掴んでいる感覚があり、グリップ感を得やすいです。接地感も強く、バンク時の安定感はかなり高く感じました。
とにかく、コーナーリング時の良さが際立っています。
ここは明確にFASTよりも良いと感じました。
つまり体感としては、
・直進での軽さ、速度の伸び、転がり感はFAST
・コーナーリング時の安定感、グリップ感はAGXEROのほうが良い
という印象です。
やはり単純に「FASTのほうが全部優れている」という感じではありませんでした。
実際に使ってみると、速さの質が違うと言う方がしっくりきます。
FASTは、いわば走り出した瞬間から「速いタイヤだな」と分かるタイプです。
対してAGXEROは、第一印象ではそこまで派手ではないものの、使っていくと違う方向の良さが見えてくるタイプに感じました。
そしてこの印象は、後で実走ログを見返してみると、意外と数字の上にも表れていました。
3. 実際の数字を見てみる
ここからは、実際の走行ログを見ていきます。
今回、特に比較しやすかった信号がほとんど無くなる区間で比較します。
同じコースで同じメニューであれば一定のリズムで走れており、速度やコーナー通過時の傾向も追いやすくなっていました。
なお、まず前提として書いておくと、今回の2本は極力条件が近しくなるような日を選びましたが、完全な同条件とはなりません。
記録上の気温は、
・AGXERO使用時:約16℃
・AGILEST FAST使用時:約20℃
でした。
気温差があると、タイヤの感触だけでなく、空気密度や身体の動きやすさにも多少影響が出ます。
そのため、今回の数字はあくまで実走で見えた傾向として見ていただくのが適切です。
・比較区間の全体傾向
まず、比較に使う区間全体で見ると、FASTのほうがやや良い結果でした。
AGXEROでは、
・距離:約50km
・所要時間:約86分30秒
・平均速度:約34.67km/h
・平均パワー:約270W
・NP:約272W
・気温:約16℃
一方、AGILEST FASTでは、
・距離:約50km
・所要時間:約85分44秒
・平均速度:約34.98km/h
・平均パワー:約264W
・NP:約269W
・気温:約20℃
という内容でした。
なお、FAST使用時のほうが気温は約4℃高く、空気密度の面ではやや有利な条件でした。
この差を単純計算すると、空力抵抗分の補正はおおよそ2〜3W程度、タイムにして20秒前後と見込まれます。
さらにBRRの転がり抵抗差(AGXEROはAGILESTと同等として)から見ても、今回の実走差は説明不能なほど大きなものではなく、概ね妥当な範囲に収まっていました。
単純に見ると、FASTのほうが約46秒速く、しかも平均パワーもNPもやや低めです。
この区間全体に関しては、体感どおりFASTのほうが転がり抵抗の面で有利と見てよさそうです。
では続いて、特に違いが出ていたと思われるポイントを見ていきます。
今回見たのは、最高速が出るポイント1か所と、コーナー3か所について、それぞれ5回の平均値です。
・最高速
速度の伸びとして最高速の出るポイントでの比較です。
最高速についても確認してみると、ここでもFASTがわずかに上でした。
・AGXERO:約60.4km/h
・AGILEST FAST:約61.0km/h
差は大きくありませんが、少なくとも今回のログでは、単発の最高速だけでなく、高速域の速度傾向を見ても、FASTのほうがやや良い印象でした。
体感として感じていた「速度高速域での軽さ」は、数字の上でもある程度は整合していました。
・コーナーリング
では続いてコーナー付近の速度です。
全体や最高速でFASTがやや有利だった一方で、コーナー付近の速度だけを見ると、AGXEROがかなり健闘していました。
① コーナー a
この地点では、AGXEROのほうが通過速度は高めでした。
・AGXERO:約25.6km/h
・FAST:約22.6km/h
差は約3km/hで、ここは比較的はっきり違いが出ています。
ただし、この地点では踏み方の差が少し混ざっている可能性があるため、数字をそのままタイヤ性能だけということではない場合もあります。
② コーナー b
ここはかなり接近しており、ほぼ互角でした。
AGXERO:約32.4km/h
FAST:約32.7km/h
差はごくわずかで、ここだけを見るとFASTが少し上ですが、実質的には大差なしと言ってよい範囲です。
③ 下りで速度の乗るコーナー
ここではAGXEROがわずかに高い速度で抜けていました。
・AGXERO:約49.1km/h
・FAST:約48.2km/h
差は約0.9km/hです。
大きな差ではありませんが、少なくとも今回の比較では、AGXEROのほうがコーナーで速度を維持しやすい傾向にありました。
4. 数字から見えてきたこと
まず、比較区間全体を見る限り、体感どおりFASTのほうが転がり感と高速域での伸びに優れているように見える結果でした。
実際、平均速度はFASTのほうが高く、しかも平均パワーやNPは少し低めでした。
もちろん、FAST使用時のほうが気温は約4℃高く、空力の面では少し有利だったはずです。
その影響をざっくり見積もると2〜3W程度、タイムにして20秒程度はありそうですが、それを差し引いてもなお、FASTのほうが全体としてはよく進む傾向に見えました。
一方のAGXEROは、総合的な転がり抵抗、軽さではFASTよりも低いものの、コーナーリング時のグリップ感をつかみやすく、バンク時の安定感が高いのが特徴です。
そのため、コーナーを早く抜けれるタイヤだと感じていましたが、それは実際に乗った体感だけでなく、今回の数字にも表れていました。
特に一部のコーナーでは、FASTよりも高い速度で抜けられている結果は数字でも出ており、少なくとも「FASTのほうが全域にわたって速い」という単純な話にはなりませんでした。
つまり今回の比較では、
・FASTは区間全体の速さ、転がり、伸びに強い
・AGXEROはコーナーリング時の安心感が高く、そのぶんコーナー速度にもつながっている
という形で、かなり分かりやすく性格が分かれました。
ここで大事なのは、どちらかが全面的に上という話ではないことです。
もし「直進での軽さ」や「伸びの良さ」を最優先に見るなら、やはりFASTの魅力は大きいです。
一方で、実際のロードバイクの走りは、ただ真っすぐ全開で走るだけではありません。
減速して、曲がって、立ち上がって、また踏み直す。そういう一連の流れの中で見ると、AGXEROの良さも見えてきます。
今回のログを見て改めて思ったのは、速さにも種類があるということです。
単に転がり抵抗が小さいだけでなく、コーナーで安心して入れること、速度を落としすぎずに抜けられること、そうした部分も実走では立派な速さです。
どんなに直進でよく転がるタイヤでも、コーナーで不安があれば、その速さを活かしきれない場面はあると思います。
どんなに直進でよく転がるタイヤでも、コーナーで不安があれば、その速さを活かしきれない場面はあると思います。
FASTとAGXEROは、まさにそうした速さの出方が異なるタイヤであり、それぞれの特徴がしっかり分かれた、住み分けのはっきりした2本だと感じました。

■ まとめ
今回の比較をして実際に見えてきたことは、AGILEST FASTとAGXEROは、単純な優劣というより方向性や狙っている部分が異なるタイヤだということです。
速度の伸びや、走らせたときの軽さを重視するなら、やはりFASTは魅力的です。
一方で、コーナーでの安心感や扱いやすさまで含めて考えると、AGXEROにもはっきりとした良さがあります。
今回の比較は純粋に走りの違いを見たものですが、タイヤ選びではそこに耐パンク性や天候条件も加わってきます。
そう考えると、AGXEROは単に“少し頑丈寄り”というだけではなく、ウエット路面やパンクを避けたい場面、安心感を重視したサイクリングでも選びやすいタイヤだと思います。
ざっくり分けるなら、
・とにかく速度を重視するならFAST
・コーナーリングや安心感、耐パンク性まで含めるならAGXERO
という選び方が分かりやすそうです。
どちらが上かというより、どこに価値を感じるかで選びやすい2本です。
今回比較してみて、その住み分けはかなりはっきりしていると感じました。
今回の比較は、そんな印象でした。
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