1. はじめに|エアロはプロだけのものではない

ロードバイクで「エアロ」と聞くと、プロ選手やタイムトライアル、ハイスピードなレースの世界を思い浮かべる方も多いかもしれません。

たしかに、プロ選手のような高い速度域では空気抵抗の影響は非常に大きくなります。空気抵抗は速度が上がるほど増え、空気抵抗に打ち勝つために必要なパワーは、おおむね速度の3乗に近い形で大きくなっていくからです。

しかし、いまやエアロ効果はプロ選手だけのものではありません。

30km/hで走っていても、35km/hで巡航していても、向かい風の中を走っていても、ライダーは常に空気抵抗を受けています。速度がプロほど高くなかったとしても、空気抵抗がなくなるわけではありません。

また、数年前のSwiss Sideの話でも、アマチュアライダーにとってのエアロ効果について興味深い考え方が示されていました。同じ距離を走る場合、プロ選手よりもアマチュアライダーのほうが走行時間は長くなります。つまり、速度域は低くても、空気抵抗の影響を受ける時間は長くなるということです。

しかしこれは「アマチュアのほうがプロよりもエアロ効果が大きい」という単純な話ではありません。

アマチュアライダーにとってのエアロは、プロ選手が扱うエアロとは少し意味合いが違うと考えています。プロの世界では、1分1秒、場合によっては数秒を削るために、姿勢や機材を突き詰めることがあります。

しかし、一般のサイクリングやロングライド、公道での走行において、危険を冒してまで空気抵抗を減らす必要があるのかというと、その限りではないと思います。

いくら空力的に改善されたとしても、前が見えにくくなったり、ブレーキ操作が遅れたり、ハンドリングが不安定になったり、周囲への注意が落ちたりするのであれば、それはアマチュアライダーにとって適切なこととは言えません。たとえ空気抵抗を減らせる可能性があったとしても、安全性を犠牲にしてまで行うべきものではないと考えています。

アマチュアライダーにとって大切なのは、危険を冒して速く走るためのエアロではありません。安全性を犠牲にせず、同じ力で少し楽に進むためのエアロです。

同じ速度なら、少し余裕を持って走れる。同じ力なら、少しだけ前に進める。向かい風の中でも、少し脚を残せる。これこそが、アマチュアライダーにとって現実的で大切なエアロ効果だと考えています。

今回は、そんなアマチュアライダーのためのエアロ効果について考えてみます。

2. アマチュアライダーにとってのエアロ効果

ロードバイクで最も効果が大きい空気抵抗の低減策は何かといえば、やはりライダー自身のポジションです。

リラックスポジションから、上半身を低くし、前面投影面積を小さくする。肘を内側に収め、頭の位置・角度を整え、体全体で受ける空気抵抗を減らす。こういったいわゆるエアロフォームを取ることで、空気抵抗を大きく減らせることが知られています。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

それは、エアロフォームは安全性を犠牲にしてしまうことがある、ということです。

ロードバイクで安全に走るためには、しっかりと顔を上げて前方の視界を広く確保すること、必要なときにすぐブレーキをかけられること、安定してハンドル操作ができることが重要です。これは速く走る以前に、公道を走るうえで欠かすことのできない基本です。

無理に上半身を低くしたり、肘を絞り込みすぎたり、ブレーキ操作が遅れるようなブラケットを握るフォームを取ることで、前後の荷重バランスが崩れたり、ハンドリングが不安定になったりすることがあります。結果的に安全面を犠牲にしてしまうことがあります。

もし、空気抵抗を減らすためのポジションによって安全確認が遅れたり、ブレーキ操作が遅れたり、車体がふらついたりするのであれば、それは本末転倒です。

特に公道は、風洞実験や封鎖された理想的な環境ではありません。車や歩行者がいて、路面の荒れや段差があり、信号や交差点もあります。狭い道で横風を受けることもありますし、グループライドでは周囲のライダーとの距離感にも注意しなければなりません。

そうした環境の中で、無理なエアロフォームを取り続けるリスクは決して小さくありません。

安全性を犠牲にするようなエアロフォームは、アマチュアライダーには不要です。

ただし前方確認ができ、ブレーキ操作に支障がなく、車体を安定して扱える範囲であれば、上体の起こしすぎを抑えたり、肘を軽く内側に収めたりすることでも十分に意味があります。

つまりアマチュアライダーにとって大切なのは、危険を冒してまで空気抵抗を減らすことではありません。安全に走れる範囲の中で、同じ力で少しでも楽に速く進める状態を作ることです。

これらを踏まえて本題に入ろうと思います。

3. アマチュアライダーのためのエアロ

エアロというと、どうしても「何km/h速くなるのか」「何分短縮になるのか」「何W削減できるのか」という話になりがちです。

もちろん、それも大切な考え方です。特にレースやタイムトライアルの世界では、数Wの差、数秒の差が結果に直結することもあります。実際にエアロ効果を数値で考えることは、もはやレースにおける重要な戦略の一つとなっています。

しかし、エアロの恩恵はプロ選手だけのものではありません。

プロ選手ほどの速度域で走れなかったとしても、アマチュアライダーにもエアロ効果は関係します。30km/hで走っていても、向かい風の中を走っていても、長い距離を一定ペースで走っていても、ライダーは常に空気抵抗を受けているからです。

同じ速度で走るのであれば、少し楽に走れること。同じ力で踏んだときに、少しだけ前に進めること。向かい風の中で脚を削られにくくなること。ロングライドの後半に、少しでも余裕を残せること。グループライドで、無駄な消耗を少しでも減らせること。場合によっては、遅れを取らずに走り続けられることもあるでしょう。

これらは、プロレースで1秒を削るためのエアロとは目的が少し違います。

しかし、根本にあるのは同じです。空気抵抗を減らし、同じ力で少しでも楽に進むことです。

アマチュアライダーにとってのエアロ効果は、必ずしも「もっと速く走るため」だけのものではありません。むしろ、いつもの速度を少し楽に維持するため、同じ距離を少し余裕を持って走るため、そしてライド全体の疲労を少しでも減らすためのものだと考えたほうが、現実的です。

たとえば、巡航中に少しだけ空気抵抗を減らすことができれば、同じ速度でも必要な力はわずかに少なくなります。その差は一瞬では小さく感じるかもしれませんが、30分、1時間、数時間かけて行うロングライド全体で積み重なれば、後半の余裕として現れてくる可能性があります。

つまり、アマチュアライダーにとって大切なエアロとは、無理をして一瞬だけ速く走ることではありません。安全性を犠牲にすることなく、ライド全体の負担を減らし、少しでも楽に走りきれるようになるための現実的な手段です。

これこそが、アマチュアライダーにとって現実的なエアロ効果だと思います。

4. 空気抵抗はどこで発生しているのか

続いて、ロードバイクの空気抵抗の話です。実際の走行中に発生する空気抵抗は、機材だけで決まるわけではありません。

もちろん、フレーム、ホイール、ハンドルなど、機材側の空力性能も重要です。実際にこれらのメーカーは、数Wの削減を目指して多くの研究開発を行っていますし、その積み重ねが走りに影響することも間違いありません。

しかし、ロードバイクとライダーをひとつの走行体として見たとき、空気抵抗の大半を占めるのはバイクそのものではなく、ライダー自身の体です。

目安としては、空気抵抗のうちライダー側が約70〜80%、機材側が約20〜30%程度と考えられることが多いです。

もちろん、この数字は絶対的なものではありません。体格、姿勢、速度、ウェア、ヘルメット、フレーム形状、ホイール、風向きなど、さまざまな条件によって変動します。あくまでも、ロードバイクのエアロ効果を考えるうえでの大まかな目安です。

また、この数字はプロ選手だけに限った話ではありません。むしろ、上体が大きく起きたアップライトなポジションを取る初心者サイクリストや、ゆったりした姿勢で走るライダーの場合、正面から見た体の面積が大きくなりやすいため、ライダー側の影響はさらに大きくなる可能性もあります。

ただし、これは初心者ほどエアロポジションを取るべき、という意味ではありません。大切なのは、無理に姿勢を低くすることではなく、安全に前を見られる範囲で、体のバタつきや大きな無駄を少しずつ減らしていくことです。

機材側で数Wを削減するために大きな開発が行われている一方で、実際の空気抵抗の大きな部分を占めているのはライダー自身である、という点はとても重要です。

プロ選手の場合、供給された機材の中で最大限のパフォーマンスを引き出す必要があります。一方で、アマチュアライダーは自分で機材を選ぶことができます。この自由度は大きなメリットでもありますが、同時に機材選びを難しくしている部分でもあると思います。

高価なエアロフレームを選ぶべきなのか、ディープリムホイールを入れるべきなのか、エアロハンドルや内装ケーブルにこだわるべきなのか。そうした機材選びは楽しい一方で、どこから手をつけるべきか分かりにくくなりがちです。

だからこそ、アマチュアライダーが本当にエアロ効果を考えるのであれば、まずはライダー側、次に機材側という順番で考えるのが自然です。

機材のエアロ効果を否定するわけではありません。しかし、バイクよりも大きな空気抵抗を生み出しているのが自分自身であるなら、まずは安全に維持できる範囲で、姿勢、ウェア、装備のバタつきなどを見直すことが、最も現実的な第一歩になると思います。

5. ライダー側でできるエアロ改善

ロードバイクの空気抵抗を考えるうえで、まず見直したいのはライダー側です。

ここでいうライダー側とは、ウェア、ヘルメット、ソックスなど、ライダーの体に身につけるものも含めて考えます。空気を受けている大部分がライダー自身である以上、体の使い方や身につけるものを整えることは、エアロ効果を考えるうえでとても重要です。

ただし、ここでも大前提として最も重視するべきことは安全性です。無理に上半身を低くしたり、前が見えにくくなるような姿勢を取ったりする必要はありません。あくまでも、安全に走れる範囲の中で、空気抵抗を少しでも減らすという考え方です。

バタつかないウェアを選ぶ

まず分かりやすいのは、ウェアです。

大きすぎるジャージ、風でバタつく袖、背中で膨らむ生地、走行中に開いてしまうファスナーなどは、空気抵抗を増やす原因になります。

ロードバイク用のウェアは体にフィットするように作られていますが、サイズが合っていなかったり、生地が余っていたりすると、せっかくの性能を活かしきれないこともあります。

もちろん、必ずしも高価なエアロジャージやスキンスーツを着なければならない、という話ではありません。高性能なエアロ系ウェアは確かに効果が大きいとされていますが、体に合っていなければその効果は落ちてしまう可能性があります。

まずは、自分の体に合った、走行中に極力バタつきにくいウェアを選ぶことです。

エアロ専用のウェアではなかったとしても、シワが大きく寄りにくく、風を受けても生地が暴れにくいものを選ぶだけでも、空気抵抗を減らす方向には働きます。

特に向かい風や高速巡航では、バタつくウェアは想像以上に抵抗になります。高価な機材を導入する前に、まずは体に合ったウェアを選ぶことは、アマチュアライダーにとってかなり現実的なエアロ改善だと思います。

前を見る姿勢を崩さず、作るエアロフォーム

次に大切なのは、安全性を考慮したエアロフォームです。

エアロフォームというと、極端に上半身を低くして、頭を下げるような姿勢を想像する方も多いかもしれません。

しかし、公道で前が見づらくなるほど頭を下げるのは危険です。安全確認が遅れたり、路面状況の把握が遅れたりするのであれば、それはアマチュアライダーにとって適切なエアロではありません。

大切なのは、前方確認を維持したまま、無理のない範囲でのフォームを作ることです。

肩に力を入れすぎず、上体を突っ張らせず、ブラケットを自然に握れる位置で、少しだけ体をコンパクトにする。これだけでも、正面から受ける空気抵抗は変わってきます。

上半身を無理に低くするよりも、体を大きく開きすぎないこと、力みすぎないこと、安定して同じ姿勢を維持できることのほうが、実走では重要になる場合もあります。

肘は閉じるのではなく、軽く内側に収める

姿勢の中でも、特に分かりやすいのが肘の開き具合です。

肘が大きく外に開いていると、正面から見た体の幅が広くなり、空気抵抗も増えやすくなります。

とはいえ、無理に肘を絞り込みすぎる必要はありません。肘を閉じるというよりも、軽く内側に収めるぐらいの意識で十分です。

肘を絞りすぎて肩や首に力が入ったり、ハンドリングが不安定になったりするのであれば逆効果です。エアロのために体を固めるのではなく、リラックスしたまま少しコンパクトに収める。そのぐらいのほうが、扱いやすいと思います。

このあたりは、いきなりポジションを大きく変える必要はありません。普段のブラケットポジションの中で、肘が外に開きすぎていないか、肩に力が入りすぎていないかを確認するだけでも十分です。

エアロソックスは試しやすいが、過信はしない

エアロソックスも、ライダー側でできるエアロ改善のひとつです。

エアロソックスは比較的コストが低く、試しやすい装備です。見た目の変化もそこまで大きくなく、フレームやホイールを交換するよりも、はるかに手軽に取り入れることができます。

ただし、エアロソックスの効果は製品によって差があります。脚の形、速度域、着用状態、風の当たり方によっても変わります。

メーカーによっては大きなワット削減をうたうものもありますが、その数値は特定の条件下での結果である場合もあります。ですので、すべての人が同じように大きな効果を得られると考えるのは、少し慎重になったほうが良いと思います。

また、見た目、履き心地、フィット感、ずり落ちにくさなども大切です。特に夏場は、いくらエアロ効果があるとしても、不快感が大きければ使い続けるのは難しくなります。

エアロソックスは、安価で試しやすい装備です。しかし、過剰な期待をしすぎず、自分の走り方や使用環境に合うかを確認しながら取り入れるのが良いと思います。

ヘルメットはエアロだけでない

ヘルメットも、ライダー側のエアロ改善として効果が期待できる部分です。

ライダーの頭まわりは、空気の流れに大きく関係します。そのため、ヘルメットの形状によって空気抵抗は大きく変わることがあります。

実際に、エアロ系ヘルメットの中には、かなり大きな効果が期待できるものもあります。ヘルメットは侮れない装備のひとつです。

ただし、ヘルメットはエアロ性能だけで選ぶべきものではありません。

まず大切なのは、安全性とフィット感です。頭に合っていないヘルメットは、どれだけ空力的に優れていたとしても良い選択とは言えません。

また、重量、通気性、視界、首への負担も重要です。特に頭の熱のこもり方や暑さの感じ方は個人差が大きく、暑さによってパフォーマンスが落ちることもあります。

一番速いとされるヘルメットよりも、自分が安全に、快適に使えるヘルメットを選ぶことが大切です。

そのうえで、快適に使える範囲の中から、できるだけエアロ性能の高いものを選ぶ。アマチュアライダーにとっては、このぐらいの考え方が現実的だと思います。

 エアロフォームは使う場面を選ぶ

ブラケット先端付近を握り、肘を軽く曲げて上体をコンパクトにするエアロフォームも、使う場面を選ぶことが大切です。

以前は「速く走るなら下ハン」というイメージも強かったと思いますが、現在では必ずしも下ハンが常に最も空力的に優れているとは限りません。ブラケット上で肘を軽く曲げ、上体を整えた姿勢のほうが、空気抵抗が低くなる場合もあるとされています。

ただし、ここで大切なのは、そのフォームを実際に走行中に使えるかどうかです。

いくら空気抵抗が少ないフォームでも、慣れていない姿勢で体に余計な力が入ったり、首や肩が疲れたり、呼吸がしづらくなったりするのであれば、実走では必ずしも速くなるとは限りません。空力的には有利でも、その姿勢を取ることでパワーが出しにくくなったり、長く維持できなかったりすれば、エアロ効果だけをそのまま恩恵として受け取ることは難しくなります。

たとえば、エアロフォームで空気抵抗が減ったとしても、その姿勢で踏みにくくなって出力が落ちてしまえば、結果として思ったほど速度が伸びないこともあります。逆に、無理なく維持できるフォームであれば、極端に低い姿勢でなくても、同じ力で少し楽に進める可能性があります。

つまり、アマチュアライダーにとって大切なのは、理論上最も空気抵抗の少ない姿勢を一瞬だけ作ることではありません。実際の走行中に、無理なく、安定して、必要な時間だけ維持できるフォームを作ることです。

もちろん、慣れていないエアロフォームを練習すること自体は良いことだと思います。いきなり長時間使うのではなく、見通しの良い直線や交通量の少ない場所で、短い時間から少しずつ慣らしていくことで、フォームの安定感や使える場面は増えていきます。

しかし、疲れやすい、踏みにくい、呼吸が苦しい、長く維持できないという状態であれば、それはまだ自分にとって実用的なエアロフォームとは言いにくいです。

エアロフォームは、形だけ真似をすれば速くなるものではありません。安全に使えることはもちろん、その姿勢でしっかり走れること、必要な出力を出せること、そしてライド全体の負担をおさえることが重要です。

6. 機材側でできるエアロ改善

続いて、バイク側でできるエアロ改善です。

前章では、ライダー自身の姿勢やウェア、ヘルメット、ソックスなど、ライダー側でできることを見てきました。ここからは、ハンドル、タイヤ、ホイール、フレームなど、自転車側の機材やセッティングについて考えていきます。

ただし、ここでも大切なのは「エアロ性能だけで選ばない」ということです。

どれだけ空力的に優れた機材でも、扱いにくかったり、ポジションが合わなかったり、安全に走れなかったりするのであれば、良い選択とは言えません。

バイク側のエアロ改善も、あくまでも安全に、無理なく、同じ力で少し楽に進むためのものとして考えるのが良いと思います。

ハンドル幅とブラケット角度

バイク側で比較的分かりやすいのが、ハンドル幅です。

ハンドル幅を少し狭くすると、正面から見た前面投影面積を減らせます。実際、近年はプロ選手でも以前より狭いハンドルを使う例が増えています。

ただし、狭ければ狭いほど良いというわけではありません。

ハンドル幅を無理に狭くしすぎると、呼吸が苦しくなったり、ハンドリングが不安定になったり、ダンシングがしにくくなったりする場合があります。肩や首が詰まってしまい、長時間のライドで疲れやすくなることもあります。

そうなるのであれば、エアロ以前に逆効果です。

大切なのは、無理にハンドルを狭めることではなく、安定して走れる範囲の中で、過剰に広すぎるハンドルを見直すことです。

また、ハンドル幅そのものだけでなく、ブラケットの角度も重要です。

肘を軽く内側に収めやすく、肩や首に無理な力が入らず、自然に上体を整えられる位置。こうしたセッティングが出せると、安全性を保ちながら、空気抵抗を減らしやすくなります。

単純にハンドルを狭くするよりも、自分が安定して走れて、なおかつ肘を内側に入れやすいハンドル幅とブラケット角度を探すことが大切です。

タイヤ幅とリム幅の相性

タイヤも、エアロに関係する部分です。

タイヤというと、転がり抵抗、乗り心地、グリップ、耐パンク性の話になりがちですが、空力面でも無視できない要素です。

特に重要なのは、リムの内幅・外幅とタイヤ幅の相性です。

タイヤがリムに対して大きく膨らみすぎると、空気の流れが乱れやすくなる場合があります。逆に、リムとタイヤの形状がうまくつながると、前方から受ける空気の流れがスムーズになりやすくなります。

特にフロントホイールは、走行中に最初に空気を受ける部分です。そのため、フロントタイヤの幅や形状は、空力への影響が比較的大きい部分だと考えられます。

もちろん、タイヤは空力だけで選ぶものではありません。

転がり抵抗、乗り心地、グリップ、耐パンク性も重要です。どれだけ空力的に良さそうでも、乗り心地が悪すぎたり、グリップに不安があったり、普段使いでパンクが増えたりするのであれば、実用上は使いにくくなります。

リム幅に対してタイヤ幅をどう合わせるか。フロントとリアでタイヤ幅を変えるか。走る速度域や路面状況に対して、どの太さがよいのか。

タイヤは空力だけに振り切るのではなく、転がり抵抗、安全性、乗り心地、普段の使いやすさを含めて選ぶことが大切です。

ホイール

ホイールは、バイク側のエアロ改善として分かりやすい部分です。

ディープリムホイールは、条件が合えば空力的にもかなり有利になります。速度が上がるほど、ホイールの空力性能が走りに影響してくる場面も増えます。

ただし、ホイールも深ければ深いほど良い、という単純な話ではありません。

リムハイトが高くなると、横風の影響を受けやすくなる場合があります。重量、価格、扱いやすさ、ブレーキング時の安定感、普段走るコースとの相性も考える必要があります。

特にアマチュアライダーにとって重要なのは、速さだけでなく安定性です。

横風で怖いと感じるホイール、普段のコースで扱いにくいホイール、長い下りや荒れた路面で不安が出るホイールでは、安心して走ることができません。

エアロ性能は大切ですが、それと同じぐらい、普段使いできるか、横風でも怖くないか、安定して扱えるかが重要です。

自分の脚力、体重、走る場所、天候、使用目的に合ったホイールを選ぶことが、結果的には速く、楽に走ることにつながると思います。

フレーム・ハンドル周り・ケーブル内装

エアロフレーム、一体型ハンドル、内装ケーブルなども、空力的には有利になる可能性があります。

近年のロードバイクでは、フレーム形状、フォーク、シートポスト、ハンドル、ケーブルルーティングまで含めて、空気抵抗を減らす設計が進んでいます。

見た目にも分かりやすく、所有感も高い部分です。エアロフレームや内装ハンドルに魅力を感じる方も多いと思います。

ただし、ここでもエアロ性能だけで選ぶのはおすすめしません。

一体型ハンドルやフル内装のバイクは、見た目がすっきりして空力的にも有利になる可能性がありますが、ポジション調整の自由度、整備性、費用、トラブル時の対応なども考える必要があります。

特にアマチュアライダーにとって重要なのは、自分の体に合うポジションを出せるかどうかです。

どれだけ空力性能の高いフレームでも、ハンドルが遠すぎる、低すぎる、幅が合わない、ポジションが合わないという状態では、その性能を活かしきれません。

エアロ性能だけでなく、自分が安全に、快適に、長く維持できるポジションを出せるかどうか。ここを外してしまうと、せっかくのエアロ機材も使いにくいものになってしまいます。

ボトルやアクセサリーの配置

ボトルやライト、サイコン、サドルバッグなどのアクセサリー類も、空気抵抗に影響する場合があります。

もちろん、これらは走行に必要なものでもあります。ロングライドであれば補給や工具は必要ですし、ライトやサイコンも安全面や実用面で重要です。

ただし、必要以上に大きなサドルバッグを付けていたり、ライトやマウントが大きく前に張り出していたり、ボトルやツールケースの配置がバラバラだったりすると、空気の流れを乱す原因になることがあります。

ここで大切なのは、何でも外してしまうことではありません。

必要なものは持つ。そのうえで、できるだけ無駄に大きくしない、風を受けやすい位置に余計なものを増やさない、走行中にバタつかないようにする。

このぐらいの意識で十分です。

特にアマチュアライダーの場合、エアロのために携行品を削りすぎて、トラブル時に対応できなくなるのは本末転倒です。

安全性や実用性を確保したうえで、できる範囲で装備をすっきりさせる。それも、バイク側でできる現実的なエアロ改善のひとつです。

機材側のポジション設定

最後に大切なのが、機材側のポジション設定です。

エアロフレーム、エアロハンドル、ディープリムホイールなどを使っていても、ポジションが合っていなければ、その効果を十分に活かすことは難しくなります。

特に注意したいのは、ハンドルの高さです。

一昔前は、速く走るためにはハンドルを遠く低くする、という考え方が強かったように思います。もちろん、上体を低くすることで空気抵抗を減らせる場合はあります。

しかし実際には、自分が無理なく取れるフォーム以上にハンドルを下げすぎると、かえってフォームが崩れることがあります。

ハンドルが低すぎることで肘が伸びたり、上体を支えるために余計な力が入ったりすると、正面から見た体の面積が大きくなってしまう場合があります。そうなると、低いポジションを取っているつもりでも、実際には空気抵抗を減らせていない可能性もあります。

つまり、ハンドルの高さや位置は、低いことが正義なのではありません。

大切なのは、長時間走っても姿勢を保つことができ、前を見やすく、必要な出力を出しやすい位置にあることです。その結果として、無理なくエアロなフォームを維持できることが重要です。

ハンドル幅も同じです。

無理に狭くしすぎることでバランスが悪くなったり、肩や首に力が入ったり、上半身が起きてしまったりするのであれば本末転倒です。

自分が安定して走れて、肘を自然に内側へ収めやすい幅を選ぶことが大切です。ブラケット角度やレバー位置も含めて、無理なくエアロな姿勢を作れる状態にすることが重要です。

バイク側のエアロ性能は、単体で完結するものではありません。

フレーム、ホイール、ハンドル、タイヤ、ボトル、アクセサリー。そして、それらを使うライダーの姿勢やフィットが合わさって、初めて実走での効果につながります。

アマチュアライダーにとって大切なのは、最も空気抵抗の少ない形を短時間だけ無理に作ることではありません。

安全に走れる範囲の中で、自分の体に合った機材とポジションを整え、同じ力で少し楽に進める状態を作ることです。

7. Wだけでなく、時間と距離で見るエアロ効果

エアロ効果は、「何W削減」という形で語られることが多いです。

もちろん、これはエアロ効果を考えるうえで大切な指標です。しかし、パワーメーターを使っていない方にとっては、5W削減、10W削減と言われても、実際にどのぐらい違うのかは少し分かりにくいかもしれません。

そこで今回は、エアロ効果をWだけではなく、時間と距離でも考えてみます。

基準にするのは、25km/h、30km/h、35km/hでそれぞれ1時間走る場合です。

基準速度1時間で走る距離
25km/h25km
30km/h30km
35km/h35km

この基準で考えると、普段25km/h前後でサイクリングをする方、30km/h前後で巡航する方、35km/h前後でやや速めに走る方、それぞれにとってイメージしやすくなります。

なお、ここで出す数字は厳密なシミュレーションではありません。平坦、無風、一定ペースで、同じ力を出し続けた場合の概算です。実際には、体格、姿勢、タイヤ、路面、風向き、ウェア、バイク、走り方によって変わります。

また、厳密には同じ装備でも速度が変われば削減されるW数も変わります。ここでは分かりやすくするために、「その速度域で何Wぶん空気抵抗が減った場合」という考え方で見ていきます。

エアロ改善でどのぐらい時間が短縮されるのか

まずは、同じ力で走った場合に、どのぐらい到着時間が変わるのかを見てみます。

エアロ改善量25km/hで25km30km/hで30km35km/hで35km
3W削減約50秒短縮約30秒短縮約20秒短縮
5W削減約1分20秒短縮約50秒短縮約30秒短縮
10W削減約2分45秒短縮約1分35秒短縮約1分短縮
20W削減約5分50秒短縮約3分20秒短縮約2分05秒短縮

この表で面白いのは、同じW数の削減で見ると、速度が低いほうが時間短縮や距離の伸びが大きいことです。

これは、25km/hのほうが35km/hよりも空気抵抗が大きい、という意味ではありません。速度が高いほど空気抵抗は大きくなりますし、エアロの重要性も高くなります。

ただし、同じ5W削減で考えると、走行に必要な全体のパワーに対する割合は、速度が低いほうが大きくなります。たとえば200Wで走っているときの5Wは全体の約2.5%ですが、400Wで走っているときの5Wは約1.25%です。

そのため、同じ5Wという条件で比較すると、低い速度域のほうが相対的な影響は大きくなります。

一方で、実際のエアロ改善では、速度が上がるほど削減されるW数も大きくなりやすいです。ですので、「低速のほうがエアロが重要」という単純な話ではありません。

ここで伝えたいのは、25km/hや30km/hのような速度域でも、エアロ改善は決して無関係ではないということです。数Wの差でも、1時間、2時間と走る中では、疲労感や余裕の差として効いてくる可能性があります。

もちろん、5W削減したから必ず何秒短縮できる、という単純な話ではありません。実走では信号、交差点、風向き、勾配、加減速など、さまざまな要素が入ります。

それでも、エアロ効果は走っている時間全体に積み重なるものです。数Wの差でも、1時間、2時間と走る中では無視できない差になってくると思います。

同じパワーなら、どのぐらい早く到着できるのか

次に、同じパワーで走った場合に、どのぐらい早く到着できるのかを考えてみます。

こちらのほうが、パワーメーターを使っていない方にはイメージしやすいかもしれません。

ここでは、25km/hで25km、30km/hで30km、35km/hで35kmを走る場合を基準にしています。つまり、それぞれ「普段なら1時間かかる距離」に対して、エアロ改善によってどのぐらい早く到着できるのか、という見方です。

エアロ改善量25km/hで25km30km/hで30km35km/hで35km
5W削減約1分20秒早く到着約50秒早く到着約30秒早く到着
10W削減約2分45秒早く到着約1分35秒早く到着約1分早く到着
20W削減約5分50秒早く到着約3分20秒早く到着約2分05秒早く到着

このように見ると、エアロ効果は単に「速くなる」というよりも、「同じパワーでも早く到着できる」と考えることもできます。

たとえば、いつも25km/hぐらいで25kmを1時間かけて走っている方が、空気抵抗を10W減らせたとします。それによって、同じぐらいの頑張りでも約2分45秒早く到着できる可能性があります。

これはグループライドで遅れにくくなる。ライド仲間を待たせる時間が減る。向かい風でも少し余裕を持って走れる。ロングライドの後半に脚を残しやすくなる。そう考えると、それは十分に意味のある差です。

つまりアマチュアライダーにとってのエアロ効果は、必ずしも一瞬の最高速度を上げるためだけのものではありません。

このように考えると、エアロはプロ選手やレースだけのものではなく、普段のサイクリングやロングライドにも十分に関係するものだと思います。

8. 部位別に見るエアロ効果の目安

ここまで、ライダー側とバイク側でできるエアロ改善について見てきました。

では、実際にそれぞれの改善でどのぐらいの差が出るのでしょうか。

エアロ効果は「何W削減」という形で語られることが多いですが、この数字は条件によって大きく変わります。体格、姿勢、速度、ウェアのサイズ、ヘルメットの形状、ホイールとタイヤの組み合わせ、風向き、路面状況などによって結果は変わります。

そのため、ここでの数字は絶対値ではありません。

あくまでも、25km/h、30km/h、35km/h付近で走るアマチュアライダーが、どの部分から見直すと効果が出やすいのかを考えるための目安としてお考えください。

改善ポイント効果の傾向25km/h30km/h35km/h
バタつかないウェア体に合っていれば効果が出やすい約1〜4W約2〜6W約3〜10W
エアロヘルメット条件次第でかなり有効約1〜3W約2〜5W約3〜8W
エアロソックス低コストで試しやすい約0.5〜2W約1〜3W約2〜5W
肘を軽く内側に収める無料で効果が出やすい約2〜5W約4〜8W約6〜12W
前方確認できる範囲で上体を低くする効果は大きいが安全最優先約5〜10W約8〜18W約12〜25W
ハンドル幅とブラケット角度の適正化やりすぎなければ有効約1〜3W約2〜5W約3〜8W
タイヤ幅とリム幅の相性特にフロントで影響しやすい約0〜2W約1〜3W約2〜5W
ホイール速度が上がるほど効きやすい約1〜3W約2〜5W約3〜8W
フレーム・ハンドル周り・ケーブル内装効果はあるが費用も大きい約1〜5W約3〜8W約5〜12W
ボトル・ライト・アクセサリー配置整理すれば小さな差が出る約0〜2W約1〜3W約1〜5W

ただしこの表で重要なのは、数字そのものを細かく見すぎないことです。

たとえば、エアロソックスで必ず5W削減できる、エアロヘルメットなら必ず8W速くなる、という意味ではありません。実際の効果は製品や使う人、速度域によって大きく変わります。

また、これらの数値は単純に足し算できるものでもありません。

ウェアで5W、ヘルメットで5W、ホイールで5W、フレームで10Wだから合計25W、というほど単純ではありません。ライダーの姿勢や空気の流れは、それぞれの要素が互いに影響し合います。ある部分で空気の流れが変われば、別の部分の効果も変わることがあります。

それでも、この表から見えてくることがあります。

アマチュアライダーにとって最も現実的なのは、いきなり高額なフレームやホイールを交換することではなく、まずライダー側を整えることです。体に合ったウェアを着ること、肘を軽く内側に収めること、前方確認できる範囲で上体を低くすること、自分に合ったヘルメットを選ぶこと、安全に維持できるポジションを作ること。こうした部分は、費用を大きくかけなくても見直せる場合があります。

一方で、バイク側のエアロ改善も意味がないわけではありません。

ハンドル幅、ブラケット角度、タイヤ幅とリム幅の相性、ホイール、フレーム、ケーブル内装なども、条件が合えば効果を積み重ねられる部分です。

ただし、アマチュアライダーにとって大切なのは、エアロ性能だけを追いかけることではありません。安全に走れて、快適に使えて、自分の体に合い、普段のライドで扱いやすいこと。そのうえで、少しでも空気抵抗を減らせるものを選ぶ。この順番で考えるのが、現実的なエアロ改善だと思います。

9. エアロ改善の優先順位

では、実際にアマチュアライダーがエアロ改善を考える場合、どこから手を付けるのが良いのでしょうか。

個人的には、いきなりエアロフレームやディープリムホイールに行くよりも、まずはライダー側から見直すのが自然だと思います。

優先順位改善内容理由
1安全に走れる姿勢作り影響が大きく、費用をかけずに始められる
2バタつかないウェア低コストでも効果を感じやすい
3ヘルメット・エアロソックス比較的取り入れやすく、ライダー側の抵抗を減らしやすい
4ハンドル幅・ブラケット角度姿勢を作りやすくなるが、フィットと安全性が優先
5タイヤ幅とリム幅の相性空力だけでなく、転がり抵抗や乗り心地にも関係する
6ホイール効果はあるが、価格・横風・扱いやすさも考える必要がある
7フレーム・ハンドル周り・ケーブル内装効果はあるが、費用や整備性、ポジション調整幅も重要
8ボトル・ライト・アクセサリー配置小さな差だが、無駄な抵抗を減らせる場合がある

この表の通り、やはり最初に考えたいのはライダー側の改善であり、安全に走れる姿勢作りです。

もう少し楽に、もう少し速く走りたいと考えたとき、ディープリムホイールや高価なエアロフレームを思い浮かべる方は多いと思います。もちろん、それらの機材にも効果はあります。

しかし実際には、高価な機材に手を出す前に見直せる部分は多くあります。場合によっては、ライダー側の姿勢やウェア、ポジションの見直しのほうが、大きな効果につながる可能性もあります。

むしろ、ライダー側やセッティングを見直さないまま高価な機材だけを入れても、その効果を十分に活かせない場合があります。

アマチュアライダーにとって大切なのは、最初から最速の機材を揃えることではなく、安全に、快適に、無理なく走れる状態を作ったうえで、少しずつ空気抵抗を減らしていくことだと思います。

10. まとめ|アマチュアライダーにとってのエアロの価値

ここ数年で、ロードバイクにおける空力への考え方は大きく進んだように思います。

Swiss Sideをはじめとする空力開発や、各メーカーの風洞実験、実走計測などによって、ロードバイクのエアロ効果は以前よりもずっと分かりやすく、身近なものになってきました。

もはやロードバイクのエアロ効果は、プロ選手やレース志向のサイクリストだけのものではありません。

たとえコンマ1秒を削る必要がなくても、レースで勝つための機材選びでなかったとしても、空気抵抗を減らすことにはアマチュアライダーにとっても価値があります。

同じ速度を少し楽に維持できること、同じ力で少し前に進めること、向かい風や長距離のライドで少しでも余裕を残せること。これらも、立派なエアロ効果の恩恵だと思います。

ただし、アマチュアライダーが目指すべきエアロは、無理に上体を低くしたり、危険な姿勢を取ったりすることではありません。

大前提として、自分自身はもちろん、周囲の安全まで含めて、安全に走れることが最優先です。そのうえで、少し空気抵抗を減らすことができれば、同じ力で少し楽に進めるようになります。

速く走るためだけではなく、楽に走るためのエアロ。安全に、快適に、無理なく走るためのエアロ。

これこそが、アマチュアライダーにとって本当に価値のあるエアロ効果なのではないかと考えています。

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