つい先日も、しっかりと体感してきました。

朝の気温は25℃、天気は曇り。サイクルコンピューターに記録されていた気温を見ても、強度を上げて走っていた時間帯で26℃ほどでした。

26℃といえば、真夏としてはそこまで暑いという印象はありません。というのも、2週間ほど前にはサイコンの表示で40℃近くまで上がるような暑さの中を走っていました。それと比べれば、今回はずいぶん涼しいはずです。


ところが、走りはじめてインターバル区間に到着する頃には全身汗でびしょびしょ。乾いているのはシューズの中ぐらいでした。そして、妙にキツいのです。


もちろんこの日は、UNDER-OVERなど強度の高いインターバルを行っていたので、楽な練習ではありません。それでも、普段以上のキツさを感じました。


感覚としては、真夏の暑い日に起こる「あれ」です。身体に熱がこもって、思うように踏めない。パワーが出づらくなるような感覚です。


しかし、天気は曇りで気温は26℃。では、なぜこれほどキツく感じたのでしょうか。


そこで今回の本題です。気温は高くないのになぜこんなにキツい? 夏のロードバイクは「湿度」にも注意。今回は、気温だけでは分からない「湿度と夏のライドのキツさ」について考えてみたいと思います。

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▶① 汗は「出ること」ではなく「蒸発すること」で身体を冷やす

まず大前提として、汗は出ただけでは十分に身体を冷やしてくれません。汗が皮膚から蒸発するときに身体の熱を奪うことで、はじめて大きな冷却効果が生まれます。


つまり大切なのは、どれだけ汗をかいたかではなく、どれだけ汗を蒸発させられたかということです。


湿度が低い日は汗が蒸発しやすく、その際に身体の熱も効率よく逃がすことができます。一方で湿度が高くなると、汗は蒸発しにくくなります。


その結果、汗はたくさん出ているのに蒸発しきれず、皮膚やウェアに残ったり、そのまま流れ落ちたりする汗が増えてきます。


ここで勘違いしやすいのが、「汗だく=よく身体を冷やせている」ではないということです。


ジャージがびしょびしょになるほど汗をかいていると、「これだけ汗をかいているなら、しっかり身体も冷えているだろう」と思ってしまいがちです。しかし、皮膚やウェアに残ったままの汗や、そのまま滴り落ちてしまった汗は、蒸発した汗ほど効率よく身体の熱を奪ってはくれません。


つまり、汗の量=冷却できた量ではありません。


高湿度の日は、たくさん汗をかいて体内の水分は失っているのに、その割には身体の熱をうまく逃がせていない、という効率の悪い状態になりやすくなります。


冒頭で書いた「気温は26℃ほどなのに、全身汗でびしょびしょ。それなのに妙に暑く、いつも以上にキツく感じた」というのも、こうした湿度の影響がひとつの原因だった可能性があります。


もちろん、ジャージが濡れているからといって、まったく放熱できていないという意味ではありません。発汗量や走行風、ウェアなどによっても状況は変わります。ただ、汗を大量にかいているから十分に冷却できている、とは限らないという点が重要なところです。



▶② 同じ250Wでも、身体にとっては同じ負荷ではない

まず、湿度が高くて放熱しにくくなると、身体は熱を逃がすために皮膚への血流を増やそうとします。しかし当然、ペダルを踏んでいる脚の筋肉にも血液を送り続けなければなりません。


つまり心臓は、運動している筋肉への血流と、身体を冷やすための皮膚への血流の両方を確保する必要があります。


さらに発汗が続けば体内の水分も失われていきます。こうした水分損失や体温上昇、皮膚への血流増加などが重なることで、一回の拍動で送り出せる血液量が低下し、同じ運動強度を維持するために心拍数が徐々に上がっていくことがあります。いわゆる心拍ドリフトです。


そのため、例えばパワーメーター上では同じ250Wでも、いつもより心拍が高い、呼吸が苦しい、RPEが高い(主観的にきつく感じる)、脚まで重く感じる、といったことが起こります。


ここで大切なのは、同じパワー=身体への負荷も同じ、ではないということです。


人が感じる「キツさ」は、筋肉への負荷だけで決まるわけではありません。体温、心拍、呼吸、発汗、脱水、皮膚の熱さなど、さまざまな情報を身体はまとめて判断しています。

だからこそ、夏のキツさは気温だけでは判断できません。気温がそれほど高くない高湿度の日でも、「脚そのものはそこまで使っていないはずなのに、妙にキツい」「今日はなぜかものすごく疲れた」ということが起こります。


そして、これはトレーニングだけの話ではありません。低強度のサイクリングであっても、湿度が高く身体の熱をうまく逃がせなければ、身体への熱ストレスは大きくなります。


そのため、気温がそれほど高くないからといって油断はできません。高湿度の日は熱中症のリスクにも注意が必要です。



▶③ 走行風があっても、湿度の影響は受ける
ロードバイクは走っている限り、身体にはかなり強い走行風が当たります。そのため、ロードバイクは走行風を得やすく、汗を蒸発させる条件としては比較的有利です。実際、風があることで汗の蒸発は促され、身体の熱も逃がしやすくなります。

ただし、走行風があるからといって高湿度の影響がなくなるわけではありません。湿度が高ければ汗は蒸発しにくくなり、せっかく汗をかいても、その冷却効果を十分に得られないことがあります。

つまり、走行風は汗の蒸発を助けてくれますが、湿度が高ければその効果にも限界があります。 とくに低速になるヒルクライムや信号の多い区間など、走行風が弱くなる場面では、さらに身体へ熱がこもりやすくなります。

そして、ここで注意したいのが真夏の早朝です。暑さを避けるために朝早く走る方も多いと思いますし、実際に日中より気温が低いことは大きなメリットです。ただし、早朝は相対湿度が高くなっていることも珍しくありません。

例えば、朝は27℃で高湿度、昼は32℃でも朝より湿度が低い、といった日があります。もちろん単純にどちらがキツいとは言えません。身体への熱ストレスは、気温だけでなく、湿度、日射、風、走行速度、運動強度など複数の条件によって変わるからです。

だからこそ、「朝だから涼しい」「30℃を超えていないから大丈夫」と、気温だけで判断するのは避けた方がよいと思います。

夏のライドでは、気温を見るだけではなく、湿度や風、その日の身体の感じ方まで含めて考えることが大切です。


▶まとめ|気温だけではなく、自分の身体がどう感じているかも大切
夏のライドでは、気温だけを見て「今日は大丈夫」と判断しないことが大切です。たとえ気温がそれほど高くなくても、湿度が高ければ身体の熱をうまく逃がせず、思っている以上に大きな負担がかかることがあります。

だからこそ、数値だけではなく、自分の身体がどう感じているかもしっかり確認してほしいと思います。いつもより心拍が高い、妙にキツい、身体に熱がこもる、思うように踏めない。そんな違和感があるのであれば、無理に予定していた強度を維持する必要はありません。

一回や二回、予定していた練習より強度が低くなったからといって、それだけで急に遅くなることはありません。しかし、無理をして体調を崩し、数日、場合によってはそれ以上まともに走れなくなってしまっては元も子もありません。

一回一回の練習やライドを大切にすることと、無茶をすることは別の話です。

昨今はパワーメーターをはじめ、心拍数、気温、トレーニング負荷など、さまざまなものを数値として確認できるようになりました。もちろん、それらはとても便利ですし、トレーニングを考えるうえで大きな助けになります。

ただ、どれだけ数値化が進んでも、最後にその環境の中で走っているのは自分自身です。数字を見ることと同じくらい、自分がそのとき何を感じているのか、身体から出ているサインを無視しないことも大切です。

そしてこれは、トレーニングだけの話ではありません。グループライドでも、のんびりとしたサイクリングでも同じです。

「今日は気温が低いから熱中症の心配は少ないだろう」と油断するのではなく、湿度や日差し、風、そして自分自身の体調まで含めて判断する必要があります。

夏のキツさは、気温だけでは決まりません。

気温がそれほど高くない日でも、妙にキツいと感じたら無理をしない。その違和感には、きちんと理由があるのかもしれません。

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