2021年末にR9200シリースが発売となってからはや6年が経とうとしております。
いよいよ、新型DURA-ACEが見えてきたような気配がしております。

先日、Xにて新型DURA-ACEと思われるコンポーネントを装着したバイクの画像が公開されました。

さらにCyclingnewsでも、ラ・ブエルタ・ア・エスパーニャにて新型DURA-ACEと思われるプロトタイプが目撃され、かなり鮮明な画像とともに紹介されています。

画像を見ると、コントロールレバー、リアディレイラー、クランク、パワーメーター、そして13枚に見えるスプロケットなど、現行R9200とは異なる部分がかなり確認できます。

ただし現時点ではSHIMANOから正式に発表された製品ではありません。ですので実際に市販されるDURA-ACEがこのままの仕様になる保証もなく、製品名がR9300になることを含め、まだ分からないことだらけです。

それでも公開された画像を見つつ、ロードバイクメカニックとして少しあれこれ想像してみたいと思います。

フルワイヤレスになるのか。13速化や10Tトップはどうなるのか。
リアディレイラーのマウント方式、クランクやパワーメーターはなぜこの形なのか。
そもそもDURA-ACEとは何のために作られているコンポーネントなのか。

こんなことを考えてみると、今回見えてきた新しいDURA-ACEらしき姿にも、それなりに理由が見えてくるような気がします。



▶ そもそもDURA-ACEとは、何のためのコンポーネントなのか
今回、新型DURA-ACEと思われるプロトタイプを巡って、さまざまな情報や予想が飛び交っています。ワイヤレスになるのか、13速になるのか、クランクはどうなるのか。もちろんそのあたりも非常に気になるところですが、今回は少し違った視点から考えてみたいと思います。

まず大前提として、SHIMANOが作るDURA-ACEとは何なのか。私は、「レースで勝つためのコンポーネント」だと考えています。それこそがSHIMANOのDURA-ACEたる所以です。

他社は「フルワイヤレス」「カーボンクランク」とそんな流れがあったとしても、単純にトレンドを追ったり、周囲へ合わせるようなコンポーネントではないと思っています。プロ選手が使い、コンマ1秒を争う世界で勝つために必要な技術を詰め込む。それこそがDURA-ACEです。

例えば登りでアタックを仕掛けた瞬間。あるいは70km/hを超えるようなゴールスプリント。ペダルへ大きな力が掛かっている状態でも、確実に、そして可能な限り速く変速する。仮にライバルメーカーよりも変速完了までがほんの一瞬速ければ、その分だけ早く次の一踏みへ移ることができます。それがコンマ数秒にも満たない差だったとしても、レースではその差が勝敗につながる可能性があります。DURA-ACEに求められるのは、そういう性能だと考えております。

もちろん整備性やユーザビリティも重要です。ただしDURA-ACEという製品の優先順位を考えれば、まず最初に来るのは「勝つための性能」であり、整備性等はその次だと思っています。少なくともプロレースの世界では、メカニックが整備を行います。多少作業が複雑であったとしても、それによってレース中の性能や信頼性が高まるのであれば、DURA-ACEとしては十分に成立する。勝つため、勝利をつかむためのコンポーネント。 私はそこを基準に、新型DURA-ACEを考えてみたいと思います。


▶R9200でレバーがワイヤレス化された本当のメリット
現行DURA-ACE R9200では、12速化と同時にコントロールレバーとリアディレイラー間が無線化されました。この変更については、「配線がなくなって組み付けが楽になった」という話もよく聞きます。もちろん、それもメリットの一つです。

ただ、メカニックとして見ると、私はそこが最大のメリットだったとは思っていません。組み付けは基本的にメカニックが行う仕事だからです。それよりも重要だったのは、トラブルにつながる要素そのものを減らせたことではないかと思っています。

例えば落車によってレバーの取り付け位置が動いた際に、エレクトリックケーブルへ無理な力が掛かる。ヘッド周りの調整や作業の際に、細いエレクトリックケーブルを挟み込んでしまう。コネクター部分へ負荷が掛かり、破損してしまう。あるいは単純に、ケーブルが完全に奥まで差し込まれていなかった。有線である以上、こうしたトラブルの可能性を完全にゼロにはできません。レバーをワイヤレス化することで、こうした物理的な接続箇所そのものをなくせた。これは競技用機材として非常に大きなメリットだったと思っています。

では一方で、フロントディレイラーやリアディレイラー周辺に残っているE-TUBEケーブルはどうでしょうか。実際にメカニックとして触っている感覚では、この部分に起因するトラブルはそこまで多くありません。少なくとも私は、レバー周りの配線トラブルと比べればかなり少ないと感じています。

そう考えると、レバー周辺を無線化したメリットは非常に大きかった一方で、ドライブトレイン側まですべて無線化するメリットは、それほど大きくないのではないかと思います。特にフロントダブルの場合です。

もちろんフロントシングルであれば話は少し変わります。例えばGRXのようにリアディレイラーへバッテリーを搭載する構造も、十分に合理的だと思います。しかし、それをそのままDURA-ACEへ持ち込むかというと、私は少し疑問があります。バッテリーを内蔵したリアディレイラーは、どうしてもサイズも重量も大きくなります。
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現在のDURA-ACE RD-R9250は非常にコンパクトですし、今回撮影されている新型と思われるリアディレイラーもフロントディレイラーもそうですが、他社のバッテリー内蔵型と比較するとかなりシャープに見えます。これは完全に個人的な好みも入りますが、DURA-ACEらしい非常に格好の良い形だと思います。


▶新型も「セミワイヤレス」を継続する可能性
今回のプロトタイプについて、海外では「見えているE-TUBEケーブルはダミーなのではないか」という説も出ているようです。ただ、私はその可能性は低いのではないかと考えています。

理由の一つがフロントディレイラーです。現在確認できているフロントディレイラーのサイズを見る限り、内部へ独立したバッテリーを搭載できるほどのスペースがあるようには見えません。リアディレイラーも同様です。もしリアディレイラーへバッテリーを内蔵するのであれば、もう少し大きな筐体になる可能性が高いはずです。ところが今回確認されているリアディレイラーは、むしろ非常にコンパクトでシャープです。そして実際にエレクトリックケーブルらしきものも確認できます。

もしかするとバッテリーをフレーム内に配置し、フロント・リアディレイラーへ有線で接続することで、ディレイラー本体を小型かつシャープに作ることこそ、現在のSHIMANOが考える最適解なのかもしれません。

これは見た目だけの話ではありません。ディレイラーを小型化できれば、空力面でも不利になる理由は少ないでしょうし、特にリアディレイラーでは外側への張り出しを抑えることで、落車や接触時に何かへぶつかるリスクを少しでも減らせる可能性があります。

つまりフルワイヤレス化すること自体が目的なのではなく、レース機材として必要な性能、重量、サイズ、信頼性を考えた結果として、現在のセミワイヤレス構成が合理的であるということなのかもしれません。

現在確認できている構造から考えると、新型DURA-ACEでも、レバーは無線、フロントディレイラーとリアディレイラーはフレーム内のバッテリーへ有線接続する、現在のセミワイヤレス構成を継続する可能性がかなり高いのではないか。これが、現時点での私の見方です。


▶リアディレイラーはダイレクトマウントが主流に
続いて気になるのが、リアディレイラーの取り付け方法です。

個人的には、今後リアディレイラーはUDHであるかどうかにかかわらず、ダイレクトマウント方式が主流になっていくのではないかと考えています。

従来のリアディレイラーは、フレーム側のディレイラーハンガーからさらにリンクを一つ介してリアディレイラー本体を取り付ける構造です。しかしダイレクトマウントであれば、このリンクを一つ減らすことができます。わざわざ可動部や接続部を一つ増やすメリットは、少なくとも変速性能を最優先する競技用コンポーネントでは、それほど大きくないように思います。

リンクを減らせば構造をシンプルにでき、リアディレイラーの位置もより直接的に決めることができます。剛性や位置精度という点でもメリットを作りやすく、変速性能を突き詰めていくのであれば、ダイレクトマウントへ向かうのは自然な流れではないでしょうか。

ただし問題はフレーム側です。ダイレクトマウントを前提とした専用フレームへ一気に切り替えることはできません。現在使われている膨大な数の従来型フレームがありますし、新しい規格が市場へ浸透するにも時間が必要です。

そのため、当面は従来型の取り付け方法も残しながら、UDH、あるいはそれに近いSHIMANO独自の新しいマウント規格を併用していく可能性もあるのではないかと考えています。実際、今回のプロトタイプについてもUDHに近い新しいマウント構造ではないかという情報が出ていますが、詳細についてはまだ分かっていません。

いずれにしても、私は今後ダイレクトマウント化の流れは加速していくと考えています。DURA-ACEが「勝つためのコンポーネント」であるならば、余計なリンクを減らし、より高い位置精度と剛性を狙うという方向性は非常にDURA-ACEらしい進化にも見えます。


▶新型クランクはパワーメーターのための形状変更か
そしてもう一つ、大きく形状が変わっているように見えるのがクランクです。

まずチェーンリングについてですが、私は今回写真に写っているものが、そのまま市販品になる可能性はそれほど高くないと思っています。現時点ではかなりプロトタイプ色の強い仕様に見えます。

R9200が登場する前にも、プロレースでは製品版とは異なるチェーンリングを装着したプロトタイプが走っていました。今回確認されているものについても、Cyclingnewsでは通常のDURA-ACE用とは異なるチェーンリングが使用されていると報じられています。

個人的には、製品版ではこれまでのDURA-ACEらしいHOLLOWGLIDE、中空構造のチェーンリングとして仕上がってくることを期待しています。

一方、クランクアームの形状変更については、パワーメーターとの関係がかなり大きいのではないかと考えています。

SHIMANO製クランク型パワーメーターでは以前から、右側のパワー計測精度についてさまざまな指摘がありました。左クランクは比較的単純な形状ですが、右側はクランクアームからスパイダー、チェーンリングへと力が伝わるため、荷重の入り方が複雑になります。

そのため今回、右側もできるだけストレートに力を受けるような構造へ変更し、パワー計測精度を改善しようとしている可能性は十分に考えられます。

実際、今回のプロトタイプについても新しいDURA-ACEパワーメーターがテストされていると報じられており、現行R9200-Pから何らかの大きな変更が入る可能性は高そうです。
写真を見る限りでは、クランクアーム、パワーメーター部分、チェーンリング周辺の構造も現行とは違って見えます。

仮にパワーメーターそのものがクランク側へ組み込まれているのであれば、スパイダーとチェーンリングを完全に別体式にすることが本当に有利なのかという疑問もあります。部品点数や接合部分が増えれば、それだけ寸法誤差やガタ、トラブルにつながる要素も増えます。

DURA-ACEが絶対的な変速性能と信頼性を優先するのであれば、チェーンリングとスパイダーを一体化し、クランクアームとの接続まで含めて高い剛性と位置精度を確保するような構造になる可能性も考えられます。

このあたりは現在の写真だけでは判断できません。むしろ製品版でどうまとめてくるのか、非常に楽しみな部分です。

そして最後に、かなり個人的な話ですが、新しいパワーメーターらしき部分に見えるあの充電ポート。
もしまた専用ケーブルだったら、充電ケーブルが一本増えることになります。
性能とはまったく関係ありませんが、これは正直ちょっと面倒です(笑)。


▶13速化と10Tトップ、フリーボディはどうなる
そして13速化についてです。このあたりは先日フリーボディについての記事を書いたばかりなので、今回はあまり深掘りしません。

重要なのは、仮に13速化と同時にトップ10Tを採用するのであれば、現在ロードで使われているフリーボディの構造では10Tを収めることが難しいということです。つまり10Tを使うのであれば、何らかの新しいフリーボディ、あるいはそれに近い仕組みが必要になる可能性があります。

では、そこでSHIMANOはどうするのか。ここからは完全に推測です。

まず一つ考えられるのは、DURA-ACEは10Tトップ、ULTEGRAは11Tトップという棲み分けです。

DURA-ACEはあくまで勝つための最上位コンポーネント。「10Tまで使って究極の性能を求めるのであれば、フリーボディも新しいものへ交換してください」という考え方です。一方でULTEGRAは従来のホイールとの互換性も重視し、11Tトップとすることで現在のフリーボディをそのまま使えるようにする。そんな展開も考えられます。
12速でもフロントの歯数をULTEGRA52Tまでとしたラインナップです。

もう一つ考えられるのが、DURA-ACEの中でも10T仕様と11T仕様を用意する方法です。従来のフリーボディを使いたい場合は11Tトップ、新しいフリーボディへ交換すれば10Tトップも選択できる。これなら既存ホイールとの互換性をある程度残しながら、DURA-ACEでは最高性能も追求できます。

個人的には、このあたりが現実的なのではないかと思っています。

逆に、DURA-ACEだけでなくULTEGRAまで含めて「新型は10Tトップのみ、新しいフリーボディでなければ使えません」となると、既存ホイールとの互換性はかなり厳しくなります。

DURA-ACEについては「最高性能のためなら新規格へ」という考え方も理解できます。しかしULTEGRAまで一気にそこへ切り替えるのかというと、少し疑問があります。

ただ、既存ユーザーやホイールとの互換性まで考えると、10Tを使うための新規格と、従来フリーボディを生かす11T仕様を何らかの形で共存させてくるのではないか。私はそんな予想をしています。
というか、そうであってほしいです。


▶まとめ
今回確認されている新型DURA-ACEと思われるプロトタイプには、コントロールレバーの物理ボタン追加や形状変更など、細かな変更点もいくつか見られます。

ただ、個人的にはこのあたりは正直そこまで大きな問題ではないと思っています。ボタン配置やレバー形状は、ある程度は慣れの問題だからです。

現行12速の油圧ディスク用レバーが登場したときも、「大きい」「形が変わった」といった声は少なくありませんでした。しかし実際に使い続けてみると、非常に握りやすく、操作性も高い。最初は違和感があっても、使っていくうちにその良さが分かることは珍しくありません。

ロードバイク業界は新しい規格や形状が出てくるたびに、意外と保守的な反応が多い世界でもあります。しかしDURA-ACEが本当に優先しているのは、見慣れた形を守ることでも、誰にとっても扱いやすいことでもなく、レースで勝つための性能なのではないでしょうか。

今回考えてきたセミワイヤレス、ダイレクトマウント、新しいクランクやパワーメーター、13速化、そして10Tトップの可能性。どれも現時点では正式発表されたものではなく、写真やこれまでのSHIMANOの設計から考えた予想にすぎません。

実際の製品がどうなるのかは、まだ分かりません。

ただ、正式発表されるまでの間に、「なぜこの形なのか」「SHIMANOなら何を優先するのか」「DURA-ACEならどう作るのか」と想像してみるのも、新製品を待つ楽しみの一つだと思います。

果たして次のDURA-ACEは、どんな形で「勝つためのコンポーネント」を更新してくるのか。

正式発表を楽しみに待ちたいと思います。
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