いわゆるVO₂max系の高強度インターバルトレーニングといえば、これまでは2分、3分、5分といった時間を、高い強度で踏み続けるインターバルトレーニングが定番でした。

例えば、悪名高くも有名な「The Gorby」。FTPの110%で5分 × 5セットという、非常にきついワークアウトです。私も以前は幾度となく挫折を……orz

しかし最近では、ショートインターバルもよく見かけるようになりました。

ショートインターバルとは、30秒ON/15秒OFFの「30/15」のように、高強度と低強度を細かく繰り返しながら行うインターバルのことです。

短いレストを挟むことで、連続では維持することが難しいような高いパワーを何度も繰り返すことができます。つまり、連続ではきつすぎるような強度でも、ショートインターバルなら比較的、高強度の滞在時間を長く取りやすくなります。

では、なぜショートインターバルがここまで注目されるようになったのでしょうか。

その理由の一つが、近年さまざまな研究で興味深い結果が出ていることです。
VO₂maxやパフォーマンスの改善について、従来の長いインターバルより良い結果が出た研究もあります。

例えばエリートサイクリストを対象に行ったある研究では、3セット × 13本 × 30秒/15秒のショートインターバルと、4本 × 5分のロングインターバルを比較しています。3週間のトレーニング後、一部のパフォーマンス指標ではショートインターバル群の方が大きな改善を示しました。

こうした研究を見ると、「もう昔ながらの長いインターバルは必要ないのでは?」と思ってしまうかもしれません。

では、本当にショートインターバルだけで十分なのでしょうか。
ショートインターバルでVO₂maxやパフォーマンスが向上することと、2分以上の連続したインターバルを完全に置き換えられることは、同じなのでしょうか。

ということで今回は、30/15のようなショートインターバルと、2分以上を途中で休まず踏み続けるインターバルについて考えてみたいと思います。





▶今回比較する「ショート」と「2分以上のインターバル」
最初に、今回の記事で比較するインターバルを整理しておきます。

今回の「ショートインターバル」は、前述のように30秒ON/30秒OFF、30秒ON/15秒OFFなど、短い高強度と短いレストを繰り返すものです。

一方で比較するのは、2分、3分、4分、5分など、高い強度を途中で細かく区切らずに、一定時間踏み続けるインターバルです。今回は便宜上、こちらを「2分以上の連続インターバル」とします。

TrainerRoadのRattlesnakeとZwiftのThe Gorbyで比べると、その違いはかなり分かりやすいです。
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ショートインターバルの例が「Rattlesnake」。短い高強度と短いOFFを細かく繰り返しているのが分かります。

一方、「The Gorby」はFTPの110%を5分間、そのまま維持して5本。こちらは途中で細かく強度を落とすことなく、一定時間しっかり踏み続けるタイプです。

画像で比べると、同じ高強度インターバルトレーニングでも、負荷のかけ方がかなり違うことが想像できると思います。

なお、「2分以上」という区切りは、2026年に発表されたHIITについての大規模レビューでも、30秒以下を短時間、30秒超〜2分未満を中時間、2分以上を長時間インターバルとして分類していますので、今回はショートインターバルとの比較で、2分以上のインターバルとしました。

今回の記事では、この「短い回復を何度も挟むショートインターバル」と、「2分以上を途中で切らずに踏み続けるインターバル」の違いを中心に考えていきます。

※ちなみに、30秒の高強度ワークアウトといえば、「The Wringer」というワークアウトがあります。Wringerは30秒間、かなり高い強度で踏んで数分休むようなスプリントインターバルトレーニングです。今回扱うショートインターバルとは別物となります。


▶ショートインターバルは、やはり優秀
まず私は、ショートインターバルはとても優秀なトレーニング方法だと思っています。

例えば2分間ずっと400Wで走るのは難しくても、30秒400W、15秒強度を落とす、再び30秒400Wという形であれば、400Wという高いパワーを何度も繰り返せる場合があります。

つまりショートインターバルでは、短いレストを入れることで、連続では維持することが難しいような高いパワーでも、合計すると長い時間使いやすくなるということです。

これがショートインターバルの大きな特徴です。

そしてもう一つ重要なのが、短いレストを入れたからといって、身体全体がすぐに休んだ状態へ戻るわけではないということです。

例えば30秒しっかり踏んだあとに15秒強度を落とすと、脚には少し余裕ができます。完全に回復するわけではありませんが、その短い休みがあることで、次の30秒でもう一度しっかり踏みやすくなります。

一方で、心拍数や呼吸、酸素摂取量は15秒程度では一気に大きく下がりません。

そのため、脚は少し休ませながら、心肺には高い負荷をある程度残したまま、再び次の高強度へ入ることができます。

これを繰り返すことで、高いパワーで走る時間を稼ぎながら、VO₂maxに近い強い心肺刺激も入れやすくなります。

実際、30/15のようなショートインターバルでは、VO₂max付近での滞在時間を長くできるとする研究結果もあり、これこそがショートインターバルが注目されてきた大きな理由の一つです。

では、それならわざわざ苦しい2分、3分、5分といった連続インターバルを行う必要はないのでしょうか。

ここからが今回の本題です。


▶「ショート」と「2分以上のインターバル」をくらべると

これは実際に両方やったことがある人なら、かなり分かりやすいと思います。

私自身、最近よくやる2分走を例に挙げます。

最初の30秒でも、決して余裕があるわけではありません。「このままあと90秒なんて持たないんじゃないか」と不安になります。1分を過ぎると「あと半分」、しかし同時に「まだ半分もある」という相反する思考が浮かび、パンクでもしないかなとか雑念がよぎります。1分30秒を過ぎたあたりからは、自分との戦いです。そして残り10秒になればようやく勝利を確信します。

つまり最後までパワーを落とさずに踏み続ける。この「苦しくなっても落とせず落とさず、しがみつく感覚」が2分走にはあります。

一方30/15では、30秒頑張れば15秒のOFFがやってきます。もちろん30/15も十分にきつく、最後の方になれば30秒がものすごく長く感じます。

それでも「もう少し頑張れば一度休める」という、悪く言えば逃げ場のような部分があります。個人的にはどちらもきついトレーニングですが、気持ち的にはショートインターバルの方が楽に感じます。

そして、この違いは単なる気分の問題だけではありません。

30/15では15秒のOFFに入ることで、短い時間ながら脚や呼吸にも少し余裕ができます。もちろん完全に回復するわけではありませんが、そのわずかな回復があるからこそ、次の30秒でもう一度高いパワーを出しやすくなります。

これこそがショートインターバルの大きなメリットです。短い回復を何度も挟むことで、連続では維持できないような高いパワーでも、合計すると長い時間使うことができます。

ただし逆に考えると、その「短い回復」がある以上、30/15と2分以上を休まず踏み続けるインターバルでは、身体への負荷も同じではないように感じています。

2分走では、1分を過ぎ、1分30秒を過ぎて苦しくなっても、そこで強度を落とすことはできません。そのまま高い負荷を受けながら最後まで踏み切る必要があります。

実際のレースでも、アタックが20~30秒で終わるとは限りません。すでに苦しくなっているところから、さらに踏まなければならない場面もあります。当然、「30秒頑張ったので15秒休ませてください」とはいきません。

では、こうした「途中で回復を挟まず、高い負荷を受けながら踏み続ける刺激」まで、ショートインターバルでも同じように得られるのかというと、正直少し疑問が残ります。


▶「効果があった」と「これだけで十分」は同じではない
トレーニング研究を見るときに、少し注意した方がよいことがあります。

例えばショートインターバルを数週間行った結果、VO₂maxが上がった、5分パワーが上がった、タイムトライアルが速くなった、といった結果が報告されたとします。

もちろん、これはショートインターバルにしっかりと効果があったということです。

ただし、ここで大切なのは、「5分パワーが伸びること」と「2分以上のインターバルで得られる刺激」は同じではないということです。

5分パワーは、VO₂maxや無酸素能力、筋持久力など、いくつもの能力が合わさった結果として表れる一つの指標です。
例えばショートインターバルによってVO₂maxが大きく向上すれば、それだけでも結果として5分パワーが伸びる可能性があります。

では、5分パワーが伸びたのだから、2分以上のインターバルはもう必要ないのかというと、その限りではないと考えています。

2分以上のインターバルでは、単に「その時間に出せるパワーを伸ばす」だけではなく、高い強度を途中で休まずに踏み続けるという刺激が入ります。

1分、2分と時間が経ち、脚も呼吸も苦しくなってきても、そのまま3分、4分、5分と高いパワーを維持しなければなりません。

一方ショートインターバルでは、30秒ごとに短い回復が入ります。

つまり、最終的にどちらのトレーニングでも5分パワーが伸びたとしても、身体に入っている刺激までまったく同じとは限りません。

「ショートインターバルで5分パワーが伸びた」ことと、「ショートインターバルで5分インターバルを完全に代用できる」ことは別の話です。

ショートインターバルに効果があることは間違いありません。
しかし、その効果が確認されたからといって、2分以上を途中で切らずに踏み続けるインターバルまで不要になった、とは言えないと考えております。


▶なぜ2分以上のインターバルにも意味があるのか?
① 心肺機能への持続的な高い負荷
5分間連続でVO₂max領域の強度を維持し、ショートインターバルのように短いOFFを挟まず、高い心肺負荷を途切れさせずに数分間続けることで、心拍数や酸素摂取量が高い状態を保ったまま運動を続けることになります。

つまり、心肺を高い負荷のまま維持し続けるための刺激を入れられるということです。

また、高い強度を数分間続けると、「VO₂スローコンポーネント」と呼ばれる現象が現れます。

筋疲労が進むにつれて運動効率が低下し、同じパワーを出していても必要な酸素量が少しずつ増えていきます。そのため、一定のパワーで踏み続けていても酸素摂取量は徐々に上昇し、高い強度ではVO₂max付近まで押し上げられることがあります。

実際の走行でも、苦しくなってくると同じパワーを維持することが徐々に大変になっていく感覚がありますが、こうした疲労に伴う運動コストの増加も関係しています。

② 筋肉が苦しい状態でも、そのまま踏み続ける
ショートインターバルでは、15秒などの短いレストによって一部が回復し、筋疲労や酸性化をある程度抑えることができます。
一方、5分インターバルでは途中にレストがないため、筋肉が苦しくなってもそのまま高い出力を維持しなければなりません。

こうしたトレーニングによって、筋肉の酸性化に対する緩衝能力や、高い疲労状態で出力を維持する能力の向上が期待できます。

③ 実戦で求められる「連続した高強度」に近い
ヒルクライムでのロングスパート、登りでのペースアップ、逃げ切り、タイムトライアルなどでは、途中にON/OFFのレストが存在しないまま、高いパワーを出し続ける場面があります。

2分、3分、5分と途中で切らずに踏むインターバルは、こうした実戦で求められる連続した高強度に近いトレーニングになります。

④ 疲労した状態でのペーシング能力を鍛えられる
ショートインターバルでは一回のONが短いのに対し、5分インターバルでは序盤に飛ばしすぎると、後半に出力を維持できなくなります。

そのため、最初から最後まで高いパワーを維持するためには、自分の能力に合わせて出力をコントロールするペーシング能力も重要になります。

ショートインターバルは、VO₂max付近での滞在時間を確保しながら高いパワーを繰り返す、とても有効なトレーニングです。
一方、2分以上のインターバルには、高い心肺負荷を切らずに受け続けること、筋肉が苦しくなってからも出力を維持すること、実戦に近い連続した高強度を経験すること、そしてペーシング能力を磨くという特徴があります。
そのため、ショートインターバルが優秀だからといって、2分以上のインターバルが不要になるわけではありません。目的に応じて使い分けることが大切です。


▶ショートインターバルのメリットとは
では、2分以上のインターバルでもVO₂maxに十分な刺激を入れられるのであれば、ショートインターバルにはどんなメリットがあるのでしょうか。

私自身でも体験し、一番大きいと思っているのは、取り組みやすさと完遂しやすさです。

例えば5分インターバルを5本行おうとしても、あまりにもきつくて途中で断念してしまう。あるいは「今日はあれをやるのか……」と考えただけで、そもそもトレーニングをやる気がなくなってしまうこともあります。

私自身もThe Gorbyでは挫折を経験していますし、そもそも無理だとやる前から諦めてしまうこともありました。

一方、30/15のようなショートインターバルでは、30秒頑張れば15秒のOFFが入ります。もちろん十分にきついのですが、「あと少しで一度休める」という区切りがあるだけでも、精神的にはかなり取り組みやすくなりますし、実際にやってみると完遂もしやすいように感じます。

つまり、2分以上のインターバルでは完遂できない人でも、ショートインターバルならVO₂maxを狙った高強度トレーニングを成立させやすいということです。
これはショートインターバルの非常に大きなメリットです。

2分以上ではきつすぎて続かない、完遂できない。そんな場合でも、高強度トレーニングを成立させやすいこと、これこそがショートインターバルの大きな価値であると考えています。


 ▶まとめ:ショートは「上位互換」ではない
30/15のようなショートインターバルによっても、VO₂maxが向上したり、5分パワーなどのパフォーマンスが改善したという研究結果はあります。

ショートインターバルに効果があること自体は、疑う必要はありません。

ただし今回見てきたように、「5分パワーが伸びること」と、「2分以上の連続インターバルで得られる刺激まで同じように得られること」は別の話です。

2分以上を途中で切らずに踏むインターバルには、心肺に高い負荷をかけた状態を持続させること、筋肉が苦しくなってからも出力を維持すること、実戦に近い連続した高強度を経験すること、そして疲労した状態で出力をコントロールすること、といった特徴があります。

一方で、ショートインターバルにも大きなメリットがあります。

2分、3分、5分のインターバルがあまりにもきつく、「今日はやりたくない」「結局やらなかった」「そもそも完遂できない」となってしまうのであれば、30/15のような取り組みやすいショートインターバルを行った方がよいでしょう。

トレーニングは、実際にやって初めて効果が出ます。

2分以上のインターバルがきつすぎるのであれば、まずショートから始める。そして慣れてきたら、2分以上を切らずに踏むインターバルにも挑戦してみる。そんな使い方でもよいと思います。

大切なのは、一つの研究で良い結果が出たトレーニング方法が、それまで行われてきた方法の完全な上位互換になるとは限らないということです。

ショートインターバルと、クラシカルな2分以上のインターバル。
どちらか一方が優れている、どちらか一方だけで良い、というより、
「自分は何を強くしたくて、このインターバルを行うのか」
そこを考えながら使い分けることが大切だと思います。

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