以前の記事では、リアディレイラーが長期間の使用によって正常に動作できなくなった、いわば「寿命」と考えられる故障例をご紹介しました。
続いて今回ご紹介する12速Di2、RD-R9250の不具合はというと、前回と同じように単純に「寿命」と言えるのかというと、一概にそうとも言い切れない症状です。
では、12速Di2のリアディレイラーが故障すると、実際にはどのような症状が出るのか。そして、どのような壊れ方をすることがあるのか。
今回は実際に発生したRD-R9250の不具合を例に、症状から確認作業、最終的にリアディレイラー本体の不具合と判断するまでの流れをご紹介してみようと思います。
ただし今回のケースは、症状や最終的な結論だけを切り取ってしまうと、少し誤解を招く可能性があります。
ですので「こういう症状が出たらリアディレイラーが壊れている」と単純に判断できるものではありません。
変速不良にはさまざまな原因があり、それらを一つずつ切り分けたうえで、最終的にリアディレイラー本体の不具合と判断しています。
そのため、今回の記事については、ぜひ確認の過程も含めて最後まで読んでいただければと思います。

▶不具合の発生と症状
今回不具合が発生したのは、SHIMANOの12速Di2リアディレイラー、RD-R9250です。使用期間はおよそ3年。競技志向のライダーが使用していた車体ということもあり、決して穏やかな使われ方だけではなかったと思います。
ただし、使用期間や使い方そのものが今回の不具合の原因だったのかと言われると、必ずしもそうとは限りません。また、今回のような不具合は、何か明確なきっかけがあって発生する場合もあれば、徐々に症状が進んでいく場合もあります。今回の個体については、いつ、どのように不具合が発生したのか詳細は不明なため、その原因やタイミングについては明言できません。
今回のようなDi2のリアディレイラー本体の不具合は、決して多く見られるものではありません。
では今回確認された主な症状はというと、「変速不良」です。
ただし、単純な変速不良といっても、常にまったく変速できないわけではありません。動くときは動く。しかし、正常な変速できない時はできない。症状の出方にもばらつきがあり、原因の切り分けがしづらい状態でした。当然、通常の調整を繰り返し行っても改善しません。
このような症状の場合、最初からリアディレイラー本体の故障を強く疑うというよりも、まずはその他の部分の影響による変速不良を疑います。
というのも、これまで多くのSHIMANO Di2を扱ってきた経験上、リアディレイラー本体そのものは堅牢性、耐久性ともに高く、本体内部の不具合によるトラブルは決して多くないからです。
一方で、変速不良の原因がリアディレイラー本体以外の部分にあるケースは、決して珍しいものではありません。
一方で、変速不良の原因がリアディレイラー本体以外の部分にあるケースは、決して珍しいものではありません。
そのため、Di2で変速不良が起きた場合でも、最初からリアディレイラー本体の故障と決めつけず、まずは周辺部分を含めて確認していく、というのがこれまでの経験からの判断です。
また、DURA-ACEのリアディレイラーは決して安価な部品ではありません。その価格を考えても、交換という判断をするのであれば、できる限り他の可能性を確認し、本当にリアディレイラー本体が原因なのかを慎重に見極める必要があります。
そこで今回も、まずはリアディレイラー以外に変速不良を起こしている原因がないか、一つずつ確認していくことになりました。
▶ リアディレイラー意外の変速不良の原因
前述の通り、リアの変速不良はリアディレイラー本体だけが原因で起こるものではありません。
実際に変速不良が発生した場合には、例えば、
・ディレイラーハンガーの曲がり、取り付け部分の状態
・チェーンやスプロケットの摩耗や状態
・リアディレイラーの各種調整
・ホイール、スプロケットの取り付け状態
・フリーボディのガタや緩みなどの状態・
・駆動系の汚れ等
・駆動系の汚れ等
・そのほか駆動系各部の状態
など、さまざまな部分を確認していく必要があります。
例えばディレイラーハンガーは、測定上大きな問題がないように見えても、フレームや変速系の組み合わせによってはわずかなズレが変速に影響することがあります。また、チェーンやスプロケットの摩耗の影響が強く出る場合もあります。
もちろんそれだけではなく、チェーンやスプロケットの状態、ホイールの取り付けなどによっても変速の状態は変わってきます。
もちろんそれだけではなく、チェーンやスプロケットの状態、ホイールの取り付けなどによっても変速の状態は変わってきます。
そのため、「調整しても直らない=リアディレイラーが故障している」とすぐに判断することはできないのです。
そして今回のようなケースで、実際に時間と手間がかかるのがこの切り分けです。
変速に関係する部分を順番に確認し、リアディレイラー以外に原因がないかを慎重に潰していきます。
今回もこうした確認を行いましたが、それでも変速不良は改善しませんでした。
そこで、周辺部分ではなくリアディレイラー本体側に問題がある可能性が高いと考え、次はリアディレイラーそのものが正しく動作しているのかを確認していくことになりました。
▶ リアディレイラー単体で動作を確認
各部を確認しても変速不良の改善が見られなかったため、次にリアディレイラーを車体から取り外し、単体での動作を確認しました。つまり、リアディレイラー単体では正常に動いているのかどうかを確認します。車体から取り外すことで、チェーンやスプロケット、ディレイラーハンガーなど、変速に影響するほかの要因を切り離すことができます。
リアディレイラーを単体で1段ずつ動かして、正常に動作しているかを確認します。これは変速そのものを見るというよりも、「リアディレイラーが指令された位置へ正しく移動できているのか」という点を確認する作業です。
実際に動かしてみると、リアディレイラー自体は11段階、動作しています。しかし、特にロー側へ移動させた際に、正常なDi2のリアディレイラーとは明らかに異なる動きと作動音が確認できました。また動くことは動くのですが、トップ側の動き方も作動音も正常な状態とはごくわずかに差があり、所定の位置まで正しく移動できていないと考えられる状態でした。
この動作不良が見られたことで、リアディレイラー本体内部に何らかの不具合が発生している可能性がかなり濃厚になりました。しかし、内部を分解して確認したわけではないため、具体的な故障箇所を確定させることはできません。
モーターそのものなのか、モーターからリンクを動かす内部の減速・駆動機構なのか、位置を検出する部分なのか、あるいは電子的な制御なのか。それでも、リアディレイラー内部の電動駆動、あるいは位置制御に関わる部分に何らかの不具合が発生し、正常な位置まで移動できなくなっていると考えるのが適切だと思います。
なお、このような不具合の判断では、単純に「動くか、動かないか」だけを見ているわけではありません。正常なリアディレイラーがどのように動き、どのように停止し、どのような作動音を出すのか。そうした正常時の動きを把握したうえで、今回の個体には明らかに異なる挙動があると判断しています。
▶ RD交換後、変速は正常に復帰
最終的には、問題のあったリアディレーラーを交換する前に、別の正常な12速Di2リアディレーラーを取り付けて動作を確認しました。その結果、変速は正常に戻りました。
さらに問題のあったリアディレーラーを交換した後も正常な変速が確認できたことから、今回の変速不良の主原因がリアディレーラー本体側にあったことは、ほぼ確定できたと考えています。
ここは今回の診断において非常に重要な部分です。単体で異常な動作が確認できただけでなく、正常なリアディレーラーへ交換することで症状が解消したため、診断結果が実際の動作によって裏付けられたことになります。
というのも、リアディレイラー単体で異常な動作が確認できた段階では、「RD本体に不具合がある可能性が高い」という判断でした。
しかし、実際に別の正常なリアディレイラーへ交換して変速が正常に戻ったことで、その判断が結果として裏付けられたことになります。
内部のどの部品に不具合が発生していたのかまでは分かりませんが、少なくとも、今回の変速不良が単なる調整不足や周辺部品の問題ではなく、RD-R9250本体内部の不具合によるものだったことは、一連の確認結果から判断できます。
▶ まとめ Di2特有の故障でも、稀なケース
今回のような不具合は、モーターによってリアディレイラーを動かし、その位置を電気的に制御しているDi2だからこそ起こり得る故障です。
機械式のリアディレイラーには、モーター駆動や電気的な位置制御そのものがありません。そのため、今回のような電動駆動や位置制御に関わる壊れ方は、Di2特有の故障といえます。
Di2はリアディレイラーをモーターで駆動させるという構造上、こうした不具合が起こる可能性を完全にゼロにすることはできません。
ただし、だからといって「これだからDi2は……」という話ではありません。
こういった不具合が頻発するのかといえば、決してそのようなことはなく、むしろかなり珍しいケースです。
私自身これまで多くのDi2を扱ってきましたが、今回のようにリアディレイラー本体の電動駆動や位置制御に関わる不具合によって、まともに変速できなくなるケースを見ることはほとんどなく、今回の症状はかなり珍しいものです。
リアディレイラー内部には、モーターや減速機構、位置制御に関わる部品などが小さなユニットの中に収められています。それらが変速するたびに何度も動作し、それを何年にもわたって繰り返していることを考えると、それでも今回のような不具合にほとんど遭遇しないというのは、SHIMANO製品の完成度や信頼性の高さを感じる部分でもあります。
今回の症例は、Di2だからこそ起こり得る故障の一例ではありますが、「起こり得る」ということと「起こりやすい」ということはまったく別です。
そして今回もう一つ重要だったのが、単純に「動く・動かない」だけでは、リアディレイラー本体の不具合を判断できなかったということです。
正常なリアディレイラーがどのように動き、どの位置で止まり、どのような作動音を出すのか。正常な状態を知っているからこそ、今回のわずかな違いを異常として判断することができます。
変速不良の原因を一つずつ切り分け、最後にリアディレイラー単体の動作まで確認する。今回のような珍しい不具合では、こうした確認の積み重ねが特に重要になると改めて感じました。
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